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何それ最高かよ

 

  俺はふと、昔のことを思い出していた。


  あれはそう志保と美代からいじめられていて……そして別の中学へ逃げた時の話だ。


  初めは美代と志保に殺されるのではないかと怯える日々を送っていたが命だけはなんとか繋いだ。


 まぁこれぞまさに首の皮一枚繋がったってやつだろう。


  そんな苦渋の生活を送ってすぐの頃だった、俺が新しい友達を作ろうと一から努力していたときこんな事があった。


  「よろしくな高橋!お前、小学校の時はなんの遊びしていたんだ?」


 肩をポンポンと叩いてくる。これが男子のノリというやつなんだろうか。


  「ん?俺か?俺はよく、おままごととかやってたな〜それも超本格的に」


  「え?」


  周りの人が一瞬固まったことに違和感を感じてはいたが俺は話を続けた。


 親以外に自分の話をするのは初めてだったかもしれない。


 その反動のせいか感情がこもってしまう。


  「その女友達がさ、私の料理が食べられないって言うの!?とか言うんだよ、はははっ!しかもその辺の土に水つけて固めた泥団子だぜ?酷い話だよな!……どうしたのみんな?」


  俺は明らかに周りの反応がおかしい事に気がついた。


  「いや、普通はゲームとかじゃねえの?モウハンとかドラクアとかぺけもんとか外で遊ぶとしてもおままごとなんてやらないだろ」


  「え?そうなの?」


  周りのやつらも頷いていた。


  「そういえば高橋って女子に話しかけられるとビクってするよな、会話してる時もなんか上ずってるし」


  「そ、そうかな?」


  周りの人たちは一斉に頷くとガヤガヤと話し始めた。


  「そういや〜高橋ってさ〜」


 その時の雰囲気で嫌でも気がついてしまった。


  もしかして俺って異常なの?


  その後国語のテストで一夫多妻が問題に出た時は誰も間違えなかったらしい。

  

 何故って思うかもしれないけど俺にも分からん。


  こんな悲しい過去を背負っている人間がいるだろうか?結局美代と志保からは色々言われたし。


  そういや、もしかしてこの時のあだ名はそいつが?


  後で詳しく調べておくとしよう。


  しかし今はそれどころではないのだ。


  ふと我に帰るとそこでは午後の授業がすでに始まっていた。


  「それでは遠足の班決めをしたいと思いま〜す、喜べ男子諸君!女子と交流できるぞ!」


  クラスの男子ほとんどが「うぉー」と声を上げていた。


  「はぁ〜」


  なんとなく今ならガウタマの気持ちが分かる気がする。


  ガウタマ・シッダールタとはお釈迦様、つまりは仏教を作った人の事だ。


  次々と待ち受ける現実、今までの世界は理想でありいくつもの扉を開けるごとに得ていく真実はとても辛いものだったのだろう。


  死と言う事実を受け止めたくないあまりに断食とか色々やって動けなくなったお釈迦様は村娘の女の子に食べ物を恵んでもらったとかどうとか。


  やっぱ与えられた時間でどれだけ幸せになったり、相手を幸せに出来るかで世界の見え方は変わるんだろうなぁ……。


 この間社会で知った浅い知識をまんま披露してるだけだけど。


  俺は大きくため息をはくと、シャーペンの芯をカチカチっと少しだけ出した。


 そして意味もなくそれを戻し頬杖をつく。


  窓の外には一面青色の世界が広がっていた。


  この快晴もなぜか俺には真冬の大雪にしか見えない。


  しかしこの広い青空を見ているとある事が脳裏をよぎった。


 「先生も昔好きな人と同じ班とか席になりたくて神様にお願いしてたっけ……」


 何やら昔語りをしているが。


  ……あれ?この様子なら各自自由に決めて良い流れなのか?自由に班を決めても良いのか?


  俺は先生の事をジッと見つめるとそれに答えるかのようにキラキラした目でゆっくりと口を開けた。


  「運命とは自分で切り開くもの……それではくじ引きをやります!」


  ちくしょう!俺の希望返せ!


  俺は手に持っていたボールペンを下に強く打ち付けた。(心の中で)


 フラグを立てた俺が悪いのか……。


  ひたいから流れる汗は、止むことを知らずにどんどん流れ落ちていった。


  お腹痛い……。


 いや、プラスに考えようランダムならあいつらと同じ班になる事はないはず……。


 むしろ決めろと言われる方があいつらに誘われて断れない状態まで持って行かれていた。


 そう考えればこれはあいつらと同じ班にならずに済むチャンスなんだ。


 よし……あいつらが何もしないことを願う。


 箱の裏に別の紙挟んでるとかないだろうな。


  次々にくじが引かれていった、そしてついに俺の番が来た。


  順番に回って来た箱から一枚くじを引いて恐る恐る俺は四角に折られた小さな紙をゆっくりと開いた。


  【3班】


  3班か……志保と美代は?


  「ゆ、雪くんは何班だったの?い、一応同じ班だったか確かめておきたかっただけだからね!勘違いしないでよね!」


  かなり興奮した声で志保は話しかけてきた。


  なにそれツンデレ?


 「え〜っと」


 俺は自分の紙を一瞥し志保に目線を戻す。


 恍惚な表情で俺の方を見ている。


 俺がゆっくりと足を後退させるとそれに倣うように志保が距離を詰めてくる。


  「3班でしょ?雪くん?」


 突然後ろから声がした。


 「え?」


 「当たりでしょ?美代には分かるよ」


 全てを見通しているかのような事を美代は言った。


  「そう、3班だった……え?」


  なんで美代は俺が3班だったのが分かったんだ?


  俺は自分のくじが3班である事をもう一度確認すると美代の顔を見た。


  とても笑顔だったがそこにはドヤ顔も混じっていた。


  美代の笑顔を見るに俺はなんとなく察した。


  こいつ何かしたのか?


 ……正直言って美代なら何をしても怪しくない。


 金に脅しに暴力に集団拉致監禁なんでもありだ。


 俺はこれ以上考えない事にした。


  「へ、へ〜3班だったの?偶然ね、私も3班だったわ……やった……」


  俺らとは対に廊下側を向くと志保は小さく渾身のガッツポーズを取った。


  その姿は子供のように見えとても可愛らしかった。


  志保の場合は普通に引き当てたらしくめちゃくちゃ喜んでいる。


  その後3班の名前を黒板に書いたところ俺たち以外はなぜか誰もいなかった。


  思えば俺が窓際一番後ろなのにくじが余ってたな〜予備で何枚か余らせておいたのかな?それとも美代が何かしら裏で手を回していたのか?……てか志保は何してるの?なんでさっき引いたくじを大事にしてるの?なんでスマホで写真撮ってるの?


  すると先生が手を叩き一度静寂を作った。


  「えっと〜3班の人たちは人数的に足りないので隣のクラスと合同になります、他のクラスとも交流があって良かったですね〜これで新たな仲間ができるぞ!」


  三班……つまり俺たちか。


  とは、言うもの一班4人だから、あと1人なわけか、この機会に男友達を是非とも作りたい!帰りにコンビニやマッスによってハンバーガー食べたりゲームしたり。


  なにそれ最高かよ!


 いかにも普通の男子高校って感じだ!


  すると教室のドアが開いた。


  俺はちらっと映った影を見ると、それはどこかで見たことのあった面影。


  確かに懐かしい匂いがしたがそう離れた記憶でもない。


  「失礼します、遠足の3班になったの者ですが……」


  「は〜い、確かあなたは……」


  俺は彼女を知っている。


  特徴的な金髪で仕草がとても上品で、何より


  「羽方 ユンと申します」


  さっき図書室であったからな。

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