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何か……何か武器はないのか!?

 

  俺と美代は図書委員の仕事を終えると教室へ戻った。


  始業のチャイムギリギリの廊下は人も見当たらずちらほらと駆け足で教室に向かうものが何人か見かけられるくらいだった。


  そんな中でも冷静を保って俺と美代は二人並んで自分たちの教室に颯爽と向かう。


  「ふふっ〜ん、ふ〜んふふ〜ん(鼻歌)」


  やたら美代のテンションが高いような?まぁいいか。


  美代を一瞥すると軽い足取りで今にもスキップしそうだった。


  次の授業はロングホームルームか……確か遠足の説明らしいが……。


  教室に入り自分の席に座ると隣で志保が鼻歌を歌っていた、志保もテンションが高いような?


  クラスはすでに遠足の話題で持ちきりだった。


  この学校では遠足と言う行事があり、班ごとにそれぞれ別れるとカレーを作るらしい、その後は水族館に行くらしいが多分この行事は友達との親睦を深めるために設けられたものと仮定している。


 遠足なんて高校生にもなってやるものなのか?


 もちろん行事自体に文句がある訳じゃないんだが今は余裕がない。


 何とかして鍵を手に入れなくては!


  さっきからやたらとこちらを見られてる気がするが気のせいだろう。


  ふっ……なんせ俺は友達が多良いからな、きっと取り合いになる事間違いなしだろう(棒)。


 ま、実際はこの二人を見ているんだろうけど。


  俺は志保と美代の様子を見ると志保は何やらノートに一生懸命、文字を書き続けていた。


  予習復習でもしているのかな?


  俺はチラッと横目でのぞくと……


  【遠足の班決めがくじ引きだった場合……雪くんと変わって貰う際に払う金額……上限10万円

  先生の気まぐれの場合……先生に支払う金額20万円、最悪の場合は……】


  「こんなものかしら?他には……」


  ペン先を触りながら志保は自分のノートをじっと見つめていた。


  なんか独り言をぶつぶつと言っていると思ったがこいつ……


  何をしているかと思えば……


  最悪の場合ってなに!?殴り書きされてて何も見えないし!目が怖い!怖いよ!


  よし!


  俺はそれ以上、見るのをやめた。


  前の席の美代を見ると、志保と同様に何かメモを書いていた。


  正直見たくないな〜だが気になる!だって死活問題なんだもん!


  いやいや、よく考えろ俺……妹とあんなに楽しそうにお出かけしたりした人が害をなすわけないだろ!


  別に見る必要はないのだが……見なきゃ後が怖いし何より見たい、つまりはそう言う事だ。


  俺は立ち上がり中腰の姿勢で顔を上から覗かせると


  【美代の雪くんと遠足で事後にしよう計画♡ まずは裸エプロンで雪くんを魅了、その後料理の味見をしてもらう際に、美代の指をペロッとしてもらう♡それから我慢出来なくなった雪くんは欲望のままに美代の事を獣のように


  「なかなか美味しいじゃないか美代、毎日こんな美味しいものを食べたいな」

  「そんな……ちゃんと美代だけじゃなくて料理も食べて♡でも……雪くんになら良いよ、ウフフ」そして2人は結ばれる】


  「ウフフ、美代はもしかしたら天才かも〜」


  両手を頬に当てると嬉しそうにしていた。


  え〜!?このメモ帳の何処に天才要素があったの!?天災の間違いでしょ!?


  俺は思わず叫んでしまいそうだったが、なんとか自我保ち椅子に座る。


 何でこの人達はこんな妄想力高いんだ?あと身体をくねくねするのやめてほしい。


  こいつはひどい……重症だ!早くなんとかしないと。


  とりあえず、早く病院へ連れて行こう、うん。


  俺は自分の口元に手を当てるとこの深刻な状況の奪回策を必死で考えた。


  志保はお金で買収しようとしている……まだそこは百歩譲ったとして良いとする……


  いや、良いのか?どう考えても良くないのだがバレなきゃ犯罪じゃない、そう考えよう。


  しかし……


  最悪の場合ってなに!?そこだよね?そこが一番気になるところだよね!?


  そして美代!お前は、遠足で同じ班になるのは大前提になってるし!いろいろ話がぶっ飛びすぎてる!


  仮に同じ班になったとしても俺は美代の指を舐めたりはしないぞ!、したくないわけではないが……おっといかん本音が出てしまった。


  俺は色々想像していると脳とは無意識に体が動いていた。


  1人で席を立ったり座ったりしている姿は明らかに痛い人にしか見えないのだが周りの目線を気にしている場合ではない。


  はっ!今は何時だ!


  俺は急いで時計の方へ顔を向けると時刻は午後1時15分……授業開始は20分……。


  そうだ、先生に今からにお願いしよう、土下座でもなんでもするしかない!


  俺はそっと目を閉じると健やかに笑った。


  プライドなんて必要ない、このクラスに被害が出てしまうくらいなら、笑ってこの身を捧げようと思う。


  見てみろこの二人を!己の欲望の為ならなんだってするタイプだ。


 俺も見習わなくては……あと二人の目がいよいよやばい。


  俺が立ち上がると教室のドアが開いた。


  「やっほ〜みんな青春してる〜?少し早いけど教室来ちゃった〜」


  ちくしょう!なんてタイミングの悪い先生だ!後で教育委員会に訴えてやる!


  まったくもって先生は何も悪くないし早めに来るのはむしろ良い事だが俺は抑えきれずにはいられなかった。


  「どうかしたの雪くん?」


  しまった!ちょっとソワソワしすぎたか!?まぁこれだけ立って座って頭を抱えてれば嫌でも目立つか。


  「何かあったの?」


  何かあったと言われれば毎度お馴染みお前らのせいなんだが……。


  「と、トイレにでも行こうかな〜と思ったけどやっぱやめた」


  「そう?我慢は身体に毒というのだから行ってきた方がいいんじゃないかしら?でもまぁ……私もたまにギリギリまで我慢して快感を得る時もあるのだけれど……」


 そんなん知らんわ!聞きたくもない!……でもちょっと気になる。


  俺は一つため息をつくと席に着いた。


  遺言でも書こっかな〜最悪の事態に備えて……一体何枚目になるのやら。


  「なあなあ、隣のクラスの羽方って女の子知ってるか?めちゃくちゃ可愛いべ」


  俺は頭を抑えながらクラス内の会話が聞こえて来た。


  「最悪の事態が……」


  その時、図書室であった女の子の事を思い出した。


  ……羽方ってさっき図書室で会った子かな?


  隣のクラスとはAクラスのことである、この学校は全体的にも人が少ないからクラスも一学年2クラス程度だ。


  まぁ以下の要素として他クラスの人間を知っていてもなんら不思議ではないのだが……俺だけなんの情報も持ってない事実を認めたくない。


  「それじゃあみなさん、そろそろ席について下さ〜い」


  あぁ〜今すぐ逃げたい!


  何か……何か武器はないのか!?スプライトさ〜ん!


 いよいよ俺の頭もおかしくなって来たかも……いやいつも通りか。


  俺は身体中から流れる嫌な汗を感じさらに心拍数が上がった。


  俺……どうなっちゃうの?

 

  なんとか打開策を考えたが志保と美代の我田引水的な行動力は群を抜いているからな……。


  あぁ……あぁ!お終いダァ!


  俺は泣き崩れるように机にうつ伏せた。

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