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この素晴らしい世界に復讐を

 

  桜の木も満開に咲き誇りしばらく時が過ぎた頃、俺はヤンデレとメンヘラの彼女達を相手にしながら日々生活を送っていた。


 この間の一件、スターランドで知り合った謎の神様的な人は俺に衝撃の事実を伝え去っていった。


 どうやら俺は殺されるらしくそれを回避するには指示された人間を救わなくてはいけないらしい。


 そして救ったお礼に生き残るための鍵が貰えるらしくそれを使用して無事死を回避出来ると。


 一体なぜそんな事になった。


 話によればここにいれば会えるはずだけど。


  俺はこの静まった図書室の受付を任されている。


 羽形ユンと言う名前の人は図書委員には所属していなかった。


 つまりあの人の話的にそのうち会う機会があると。


 それがいつなのかは教えてもらってはいない。


 なんか会話した感じ適当そうな人だったし。


  「あの、この本を借りたいんだけど?」


  男子生徒がカウンターの上に本を置くと静かな声でそう言った。


  「はい、返却日は二週間後となっております」


  チラリ……


  時をかけるジョジョか……これ面白いんだよな〜主人公がタイムスリップしてスタンドバトルして。


  おっといけない、いけない。


  俺は図書委員の責務を果たしている最中だ、内容を語り始めれば止まらなくなってしまう。


 主な仕事はこうなっている。


  カウンター席に座りながら裏表紙から貸し借りカードを抜き出すと日付を書きそれを渡す。


 めっちゃ楽ちんだ。


  軽く会釈すると辺りを見渡す。


  俺はそれから再び読んでいた本を手にすると、挟んでおいた栞を外し本を開く。


  【この素晴らしい世界に復讐を!】


  俺が特に気に入っているのは、主人公の面白さと内容のほとんどが会話になっていて漫画のようにスラスラと読めるところ。


  俺も使いたいな〜スティール……じゃなくてエクスプロージョン。


  俺はニヤニヤしながら先を読んでいった。


  「雪くん、雪くん、何読んでるの?美代にも見せて」


  美代は俺の肩に寄りかかって顔を覗き込ませると本を見てきた。


 本当なら全力で逃げたいところだが……まぁ仕方ない。


  美代も俺と同じく図書委員のため責務を全うしている。


  まぁ、美代の場合は隣に座って俺に、話しかけまくるだけで特に仕事をしてくれるわけじゃない。


 まぁ一応声量を抑えて話しかけてくれているからそこは問題ないんだけど。


 俺はカウンター越しから周囲を見渡す。


  おかげで俺が、本を借りに来る男子に睨まれてるんだからね!「おい、隣の可愛い子が受付してくれるんじゃないのかよ」とか、あ!そこ!舌打ちするな!


  とまあ、それは置いといて……。


  「ん、これはラノベだぞ?」


  美代は基本、小難しい本しか読まないタイプだ。けどそれは家の問題もある。


 親の教育方針だとか、最近の英才教育は金持ちに限らず一般家庭でも行われてる事多いらしいからね。

  

 もちろん親も子供のためと思ってやってる訳だから一概にどうこう文句言えないし人様の家庭に首を突っ込む気もない。


 だからまぁ……俺は知らぬ存ぜぬで別にラノベを見せれば良いのだ。


  「ほれ」


  俺は栞を挟むと、美代に手渡した。


 美代は目を大きく見開いてパラパラっと速読をしていく。


  「ふ〜ん、美代も読んでみよっかな〜」


  俺としては、ありがたいことだが……いいのかな?家の人に怒られない?けど、面白いものは共有したくなるもんな〜。


  「一巻ならラノベコーナーの一番手前、左側にあるから」


  多分……俺も全ての場所を把握しているわけではない。


  「取って来るから、少しの間よろしくね〜」


  「はいよ」


  と言うかずっと俺1人で仕事してるわけであって、別に美代がいなくても変わらない気がするんだが……


  まぁそこは深く考えないでおこう。……うん、優しいな俺。


  再び俺は本を読み始めた。


  やっぱり面白いな〜それぞれキャラが生きてるよな〜。


  「あら?あなたの読んでいる本は……」


  ん?


  俺は本から目をそらし、声のする方へと移すと……


  そこには金髪で緑色の目をした金持ち特有のオーラを放つ美少女がこちらを見ていた。


  可憐で優雅な細かい動作にうっとりと目を奪われそうになってしまう。


  その子の周りだけは明らかに輝いていてどんなものでも活気づく言うなれば象徴そのものだった。


  クスッと笑いかけるその子の笑顔は自分の子が始めて笑顔を作ってくれた感動をも超え、無垢な少女が初めは素っ気ない態度だったが絆を深めあい始めて見せてくれた笑顔のような……そんな感動を感じさせた。


 ちょっと自分でも何言ってるか分からない。


  ギャルゲーとかで1人はいるよな金髪美少女キャラ。


  「えっと……本の返却か何かですか?」


  「いえ、実はあなたの読んでいるその本、私も読んだことがありまして……面白いですよね」


  そう言って彼女はクスッと笑った。


  なんて可愛いくて美しい人だ……一瞬だけ惚れちゃったよ。


  ……一瞬だけ。


 俺は他の人に恋してはいけないのだから。


 そこが本当に悔やまれる。


  「あぁ、これですか、漫画のようにスラスラと読めて面白いですよね」


  やべ、なんか緊張する……。これはもしかして陰キャ特有のコミュ症って奴じゃ……。


  「そうなんですよね、特に主人公の意外すぎる行動や言動がまた面白みを引き出していて他の作品にはない……あ、申し遅れました、私は羽方 ユンと申します」


  制服のスカートを軽く持ち上げると彼女は軽く一礼してきた。


 ……あ!


 こ、この子が!今回の鍵か!


  綺麗に一礼する羽方からは、やはりお金持ち特有のオーラがあった。


  やっぱり気品だよな……あれ?どっかの誰かもお金持ちだったような?それに仕事サボってラノベ取りに行ったような?


 いや!そんな事考えてる場合じゃない!それよりどうする?何か困ってませんかって聞くべきか?でもそんな事初対面の相手に言われたら頭おかしいと思われる。


  この機会を逃せば俺は死のフラグを折れず美代に無理心中される。


 聞け!聞くんだ!俺!


 何してんだよ!早く!


  キーンコーンカーンコン


  すると予鈴が鳴り始めた。


  「それでは、失礼します。……よかったらまた今度お話ししましょう」


 小さく手を振りそのまま廊下の方へ向かっていった。


 「あ、はい……また」


 くそ!何で言えないんだ!


 大体女子とか志保と美代くらいしか話した事ないし普通の女子とは話したこともない。


 やっぱもう少し普通の女の子とも話せるようにするべきだよな。


 けどほとんどの人が俺と話してくれないし。


 クラス内でもクラス外でもそうだが基本必要最低限しか会話しない志保と美代と仲良くしている謎の人物として認知されてるのが俺でそれを面白く思わない人が多い。


 あとは妹くらいだけど……妹もあまり練習相手にはならない。


  綺麗な金髪を靡かせながら去る姿は本当に優雅で気品に溢れていた。


  またお話ししましょうか……。


  「普通に可愛いかったな」


  「誰が?」


  俺が呟くとすぐ後ろから美代の声が聞こえてきた。


  !?嘘です!ごめんなさい!許してください!なんでもしますから!


  ……美代の声につい、謝ってしまった。


  俺、どんだけ普段から怯えてるんだよ……。


  後ろを振り向くと大量の本を両手で抱えながら美代はそこにいた。


  「それ、全部借りるの?」


  「うん、美代は雪くんと一緒にいる時以外ずっと暇だし……メール返ってこないし」


  最後の一言だけやたら声が太かった。


 まさかもうここで殺されるのか!?


 ジリジリと距離を詰めてくる美代。


 俺は固唾を飲み思考を巡らせる。


 とりあえず志保は居ないんだし美代のご機嫌を取りまくるしかない。


  「そ、そっか、よかったら、俺が持つよ!女の子にその量は大変だろうし!」


  「え?いいの?ありがとう〜やっぱり美代の雪くんは優しいね〜」


 ポンポンとリズムよく俺の両手に本が積まれていく。


  ちょ!重い!本当にこれ全部借りるのかよ!あとあんま顔近づけると力抜けちゃうから!


  それと今度からメールの未読無視はやめておこう。


  「いやいや、やっぱり男は女性に優しくするものじゃん?女の子にこんないっぱいの本を持たせるわけには行かないよ(棒)」


  すると美代は怪訝そうな顔で俺をまじまじと見つめた。


  「あのさ?雪くんが普段より優しい時っていつも何かしら後ろめたい事がある時って相場が決まってるんだよね……何隠してるのかなぁ?♡さっき言ってた普通に可愛いってなに?」


  ニコッと笑顔を向けると首を傾げどんどん近づいてくる美代に俺は一歩ずつ交代した。


  もちろん図書室のカウンターでこんな一連をやってるため数歩後退しただけで逃げ道はない。


  俺は後がないのを確認すると距離が吐息の届くレベルまで達すると美代の奥底に見える虎のような瞳に目をそらした。


  目線の先には白いワイシャツの隙間から見える胸の谷間に引き寄せられた。


  こ、これは!何という背徳感!普段から大きいと思っていたが図書室で迫られながらこっそり胸の谷間を見る……まずい!色々とまずい!


  美代が俺にべったりとくっつくと俺は身動き一つ取れない状態になった。


  暖かい美代の体温が俺を覆い、その柔らかい指先が俺の頬に触れると思わず声を上げかけてしまった。


  「ひっ!……待って!ここ図書室だから!ここだと本当にまずいって!」


 まさか本当にもうお終いなのか!?


 さっき声をかけられなかったから鍵が手に入らず俺の死は既に確定している!?


  小声でそう言うと美代は嬉しそうに頬を赤らめ指先を下にずらし胸元をツンツンとつついた。


  「ここだとダメなの?美代は……雪くんの家で……この続きをしても良いんだよ?……したくないの?この続きを……」


  ひぃ〜!たすけてぇ!


  「あ、あの〜もう授業始まるので早く借りたいんですが……」


  俺と美代が声のする方に素早く動くとそこには顔を本で半分隠した眼鏡の女の子がモジモジしながら申し訳なさそうにしていた。


  「ッチ!……せっかく雪くんと良い雰囲気だったのに……空気の読めないメスが!……殺すぞ」


  美代の眼光に女の子はガクガクと震えていた。


  やばいよ……この人メスとか言ってますよ。


  俺の美代との距離を置きながら貸し出し期間を伝えると図書室を抜けた。


  いやぁ……あの子には申し訳ないけど助かった〜。


  図書室の少し大きめな扉を開ける鍵をかけた。


  「続き……しようね?」


  耳元でそう囁かれると美代は背後で腕組みしながら狡猾そうな笑みを浮かべた。


 早く鍵を手に入れないと!死ぬ!

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