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それでもあの二人には敵わないね。


 俺は約束通りクレープの買い出しに一人で向かった。


 日差しがプールの水に反射し眩しい。


 流れるプールでは人口密度が高すぎて水面が殆ど見えてない状態と化していた。


 相変わらずの人混みだけど喧嘩した後のお陰なのかあいつらが楽しそうに普通に!プールを楽しんでいる様子を見たらクレープなんて何個でも買ってやる気持ちになる。


 普通に!楽しんでるからね!


 なんだかんだで今日の嫌われ作戦は上手くいかなかったし。


 ……と言うかほとんどそれどころじゃなくなってたしなぁ。


 朝から電車で口論になるし。


 温泉前で殺されそうになるし電車の人達と再会しちゃうし。


 俺はそんな苦労を思い出して肩の力が抜ける。


 でもまぁ……少なくとも退屈はしてないな。


 それでも志保と美代から逃げたい気持ちは変わらないけど。


 行列の屋台に並び前のカップルのイチャイチャを見せつけられながら俺の番に回って来た。


 屋台というかオープンカー的なやつだけど。


 そこのカウンターからおじさんが顔を覗かせる。


 「らっしゃーい、何にします?」


 えっと……とりあえずあいつらの好きそうなやつは……っと。


 メニューの吊るされた看板の写真を見てなんとなく直感で選ぶ。


 「いちごクレープとミルククレープ、後このおかずクレープのツナで」


 「あいよ、ちょい待ってな」


 ふふっ、すまんな妹よやはりオチは妹で決めさせてもらう。


 確実に「はっ?」って顔されるの目に見えてるがボケたくなるんだ!俺は!


 ふふ、楽しみだ。


 生地が鉄板に薄く広がりジュワッと言う音が響く。


 後ろの子連れの家族も楽しそうに会話している。


 「お父さ〜ん、あれ食べた〜い!いちごの乗ってるやつ!」


 「前のお兄ちゃんが買ってるから順番待たないとだぞ、もうちょっとだからな」


 「は〜い」


 そんな微笑ましい会話を聞いて俺もいつかは親になるのかなと想像してしまう。


 まだ先の話にはなるだろうが。


 ウキウキで待ってると店主の様子がおかしい。


 カウンター越しから見える店主の表情は歪んでいて唸り声をあげていた。


 「なんかすげえの出来ちまったな……」


 すげえの?何それ?


 声をかけるか迷ったが俺の注文したクレープが凄いことになっているんだろうから気になって声をかけたくなる。


 「あの……?」


 俺が顔を覗かせるとこちらを一瞥し視線はまた戻る。


 「いやね?お兄さんの注文したクレープにチョコソースかけようと思ったらほら?なんか紋章見たいのができあがっちまってさ……こりゃきっと神の奇跡だな」


 俺はカウンターに身を乗りこなすとそこには何やら見覚えのあるグチャグチャした螺旋が出来上がっていた。


 口では説明出来ないが俺はこれを見たことがある。


 しかもかなり昔。


 どこでだったかな……妙に懐かしい気持ちになる。


 うっ!頭にノイズが!


 思い出したくもない記憶が蘇る。


 あれはそう!


 俺がまだ幼かった頃、砂場で見たあの時の光景!


 俺の視界は白一色に染められその眩しさに耐えられず目をつぶる。


 この感覚が初めてではない事はすぐに分かった。


 すっかり忘れてたけど俺は昔変な絵を描いて妙な体験をしたことがあった。


 その時起こった現象がこんな感じだったはず。


 なんで俺はこんな非日常体験をしたのに今まで忘れていたのか不思議なくらい。


 ゆっくりと目を開けるがまだキラキラしたものが見える。

  

 これ何で見えるんだろうね?


 そんな事より……ここ見覚えがあるぞ。


 地平線の彼方まで何もないただ白一色の世界。


 「久しぶりね……と言ってもこうして会うのは初めてだけど」


 あれ?頭の中に直接声が聞こえてくる。


 その不思議な声に戸惑ったがよく聞けば可愛らしい声をしている。


 恋愛サーキュレーションとか歌ってそう。


 かーみーさーまーありがとおー。


 「貴方凄い余裕なのね?普通驚いたりしない?」


 まぁそりゃ多少は驚いてるけど。


 「慣れてるので」


 散々怖い思いしてるし耐性とかついたのかも。


 あぁそうと期待外れと言わんばかりの声を出す。


 「まぁいいわ、まず初めに謝罪しておくわね……ごめんなさい」


 「そんなあっていきなり謝られても……まぁ確かにさっきのあれは怖かったですけど」


 いきなり耳鳴りとノイズが走って視界も真っ白になったし。


 それでもあの二人には敵わないね。


 「そうじゃないわ、このままだと貴方死ぬわよ」


 「はぁ……まぁ死んでも不思議ではないですね」


 いきなりこんな世界に連れてかれて死んだって言われても納得してしまう自分がいる。


 やっぱ遺書書いといて正解だったな。


 あれ?でも流石に冷静すぎるか?


 と言うかこれもしかしてあれか!?異世界転生ってやつなんじゃ!?


 理不尽な女性二人組に殺された可哀想な俺に神様がご褒美くれた的な?


 俺は期待に胸を膨らませる。


 「本当に苦労してるのね……うちのお姉ちゃんのせいで」


 お姉ちゃん?一体誰の事だ?


 「俺が貴方のお姉さんに何かされてるんですか?」


 「ええ、話すと長くなるけど10年以上前に貴方はうちのお姉ちゃんに出会っているわ、その時に一緒にいた女の子二人を見て酷く嫉妬したのよ、そしてお姉ちゃんは力を使いその二人に呪いをかけた」


 ……?


 ……うん。

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