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再会……そして別れ


 俺の名前は高橋 雪!


 今は全力疾走している最中です!


  はぁ……はぁ……。


  え?……何で全力疾走しているかって?


  そりゃ!……命かかってるからだよ!!!


  俺の後ろには獲物を狩るような目をした2人の女性が後をついてきていた。


  「待ちなさい!雪くん!逃げれば逃げるだけツケが回っていくのよ!この2キロほどある桜並木を抜ければさらに倍付で家まで帰ろうものなら五倍付よ!」


 地下チンチロじゃねぇか!


 俺は夢の中で全力疾走させられてるくらい動かない足を恐怖心と言う名の下に必死で動かしていた。


 ひぃ〜!まじで疲れたぁ!誰か助けてくれぇ!


 辺りは桜が舞い散り、近くにある川からも綺麗な水の滴る良い音が聞こえてくる。


 そんな青っぽい青春の背景に相応しくないものが明らかに紛れ込んでいた。


  「ねぇ!?雪くんどうして逃げるの!?美代のことが嫌いなの?……そんなはずはない、そんなはずはない、そんなはずない」


 横目で後ろの美代の様子を確認すると何やら俺に似た不気味な人形に顔を埋めてボソボソと呟いていた。


  多分あれは……俺に呪いをかけているに違いない。


  「はぁ……はぁ……な、なんで追いかけてくるだよ!まだクラスの殆どが残ってたのに俺だけ飛び出すように逃げちゃっただろうが!」


  てかあいつら無駄に運動神経よくて困る!


  必死に腕を振る俺は息つく暇もなく足を前に前に伸ばした。


 「安心なさい!それは貴方だけじゃなくて私も同じだから!私たち……産まれた時は違えど死ぬ時は一緒よ!そしてもし貴方が死ぬ事になるならせめて私が殺してあげるわ!」


 「すんませーん!ここに人殺しがいまーす!誰か!誰かぁ!助けてぇ!」


 俺の大声に反応を示してくれた近隣住民の皆さん。


 良かった!俺の必死さが伝わったみたいだ!


 「あれってこの先にある高校の一年生?元気があって良いわねぇ〜後ろの女の子たちもあんなに全力で走って陸上部かしら?」


 「いやいや、あれは後ろの女の子達が前の男の子を奪おうと競争してるのよきっと、私も若い頃は彼氏作るのに必死だったものいいわね青春してて」


 ニコニコとこっちを見ながら笑う30代後半近い女性二人組。


 確実に何か勘違いされてる。


 すみませんちょっとあなた達勘違いしてませんかね?


 一体これのどこが青春していると言うのだろうか。


 流石に全力疾走し過ぎたせいか足が重い。


 呼吸も荒くもう後ろを振り向く余裕もないが。


 背後から漂ってくる禍々しいオーラの圧に耐えかねる。


  はぁ……はぁ……っ!ちょい後ろ確認するか……はぁ。


  俺は後方を確認すると鋭い目つきで睨んでくる志保がもうあと一歩のところまで手を伸ばし近づいてきていた。


 「ぎゃぁぁ!!!!ちょっと!?こわいよ!俺死んじゃう!殺される!誰かぁ!?助けてぇ!?」


 まるでその姿は獲物を位置を確認し急降下してくる鷹のような鋭い爪に眼光。


 俺は必死にそれに抗うただのエサ。


 エサはただ捕食者に食われるのを待つだけ。


 そんなのだけは勘弁してくれ!


  目をつぶりながら顔を上にして必死に叫んだ。


  「志保はクールで大人しめな、かわいい女性だと思ってたのに!」


  俺はその場で本音を言ってやった。


  こうすればもしかしたら考えを改めてくれる……かも!と言う淡い期待を込めて絞りでた結果がこれだ。


 ど、どうだ?少しくらいはきいたか?


  「か、かわいい!?」


  すると志保は立ち止まりその場で頬を抑えていたので俺もなんとなく足踏みしながら待っていた。


  えっほ……えっほ……ってなんで俺は立ち止まっているんだろう?


 「そ、それで続きはないのかしら?」


 つ、続き?


 志保はよこしなさいと言わんばかりに首をクイクイと動かす。


 俺はそのまま足踏みしながら頭を捻らせる。


 「え、えっと〜なんて言うか昔の志保はもっと知的でこんな強引な手段を取らなかったはずなんだよ、これじゃとどのつまり乱暴……美しさのかけらもない。俺は昔の志保みたいにもっとクールで涼しげに誰もが憧れるような存在でいて欲しいんだよ」


 俺は身振り手振りを使い説明する。


 そんな様子を見ていた志保の顔はみるみる赤くなっていく。


  「ゆ、雪くんってば私をそんな風に見てたのね!この変態!……でも、ちょっと嬉しいかも……それで?続きは!?」


 まだ求めるのか、この欲しがりめ。


  ……そして何故変態なのかなんて余計な事は聞かない。


 そんな事をすればせっかく舞い降りてきたこの蜘蛛の糸を自らの手で切り離すようなものだから。


  「……って、ちょっ!?っと!?どわぁ〜!」


  一瞬何が起きたのか分からなかったがその場で硬直する。


 そうだ!蜘蛛は一匹じゃない……二匹存在している!


  「捕まえた〜よしよし〜もう一生離さないからね♡今から逃げた理由と今後の美代達の事について2時間ほどここで話してその後は美代の家で一生過ごす事になるけど良いよね?」


  俺は背後から美代にがっしりと掴まれるとその場で押し倒され馬乗りされた。


 なにこれ?さっきも同じような事あったよね?


 あとなんでこんなテイクダウンの取り方が上手いの?MMAか柔道でもやってるの?


  「ねぇ……美代のこと好きだよね?愛してるよね?そうじゃないなら……いっそ雪くんと一緒に死ぬ!死ぬ死ぬ死ぬ!ねえ?早く結婚しよ?」


  殺害と!自殺宣言と!プロポーズを!同時にしてきたよこの子!かなり危ないよ!デンジャラスだよ!


 みるみる美代の瞳の奥に宿ってるドス黒い何かが俺に向かって手を振っている気がする。


 あれが完全に俺と接触しようものならきっともうこの世に俺は存在しないだろう。


  と、とりあえず何か適当に言わなくては!


 女子はひたすら褒める!妹はそれでいけると言ってたし。


 何がいけるのかは分からないが、いける!じゃなくて生きれる!の間違いかもしれない。


 なにか!なにか言わなくては!


 女子が喜びそうなとっておきな一言。


 よくドラえ⚪︎んが秘密道具出す時焦って色々出すけど今ならあの時の気持ちがよく分かる。


 って!今はそんな事どうでもいい!


  必死に目をそらし手足でアスファルトをなぞる。


 アスファルトは一見すると平坦に見えるが触ったり凝視したりするとよく分かる。


 しっかりと凹凸が出来ていることに。


 凹凸……おうとつ……でこぼこ……山なり……。


 つまり答えはおっぱいだ!


  「み、美代も可愛くなってるよ!もちろん!胸だってでこぼ……じゃなかった!大きくなってるし……その茶髪もけっこう似合ってる!メッシュ入れてるのがポイント高いよね!」


  俺がそう言うと胸の前で両手を合わせて顔を近づいてきた。


  「え?嘘!?ほんとだよね?私可愛いよね?雪くんのお嫁さんだよね?毎日朝ごはんにお味噌汁と唾液入りのスクランブルエッグ作っていいんだよね?」


 最後何言ってんのかさっぱりだったがなにも言わずに笑顔だけ見せると2人ともフラフラしていたので隙を見つけてすぐさま逃げた。


 桜並木を抜け住宅街まで来たところでようやく一安心。


 安堵のため息が漏れた。


  た、助かったぁ!


 あとちょっとで首絞められて多分死んでた。


 俺の高校生活……どうなっちゃうの?

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