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持ってくれよ!俺の自我!

 

 家に着くといつも通り妹が出迎えてくれた。


 テンプレのような会話を済ませると部屋へと続く階段を登り自分の部屋に入ると床に落ちているサマーランドの雑誌を手に取る。


 ペラペラっとめくると大きい見出しに興味をそそられるようなワードと写真が盛りだくさん。


 イベント内容や営業時間の記載は小さい字で書かれている。


 朝10時から営業開始か〜電車使ってそのあとバスに乗って移動に30分から1時間くらいだとして……。


 色々思考を巡らせながら雑誌を見つめる。


 仮に志保と美代と俺、妹の四人で行くとしよう。


 まず志保と美代が喧嘩をする。はい終了。


 そう考えるとやはり無事サマーランドの施設までつく可能性は5%未満くらいだろう。


 まぁ最近のソシャゲのガチャくらいの確率だな。


 20連すればワンチャンありそうだけど、まぁこれはガチャじゃないんでね。ガチなんでね。


 俺は雑誌を閉じ机の上に置くとそのままリビングへと向かう。


 キッチンには妹がいてカチャカチャと食器の音が聞こえて来る。


 つけっぱなしのテレビからは女子高生の飛び降り自殺について報道されていた。


 こう言うニュースってたまに見るけどやっぱ他人事にしか思えないよなぁ。


 仮にうちの学校で起きたなら俺は自殺に見せかけた殺害だと予想するけどね。


 まぁ死人は俺なんですが。


 「お兄ちゃんボケっとしてないでお風呂さっさと入るかご飯作るの手伝ってよ」


 妹がキッチン越しから俺の事をジト目で見つめて来る。


 「はいよ、あんまお兄ちゃんをこき使わないでくれ疲れてるんだから」


 俺はテーブルの上にあるテレビのリモコンの電源ボタンを押すとキッチンへ向かう。


 「お兄ちゃんが疲れてる原因は夜激しい事を26時近くまでやってるからでしょ」


 「おい、お兄ちゃんを勝手に性欲モンスターにするな、あと26時なんて言うオシャレな言い方するな」


 曲の歌詞くらいでしか聞かないぞ。


 「あ、お兄ちゃんには分からないよね、26時ってのはAM4時の事だから」


 知っとるわ。


 心の中でツッコミを済ませるとワイシャツの袖をまくりシンクで手洗いを済ませる。


 「そういえば雑誌俺の部屋に置きっぱだったぞ」


 俺がそう言うと妹は鍋に入った味噌汁をお玉を使い小皿に入れ味見していた。


 「う〜ん、しょっぱいかな?え?なに?なんか言った?」


 「いや、だから雑誌」


 俺は呆れ顔でそう言う。


 「あ〜あれね〜サマーランドでしょ?お母さんの部屋にあったのをお兄ちゃんの部屋で読んでそのままにしてた」


 「戻しとけよ……母さん仕事忙しいのにアトラクション系の雑誌とか見るんだな〜そこは旅館とかじゃないんだな」


 「いや、サマーランドって言ってるけどあれメインは温泉らしいよ、それにお母さんはアクティブだから温泉でじっとしてるってよりはせっかくの休日をパ〜っと楽しもうって派でしょ?」


 確かに。


 よく喋るしよく動くし父さんには当たり強いし。


 俺は妹の方をツンツンと触るとこちらをじっと見てきてからお玉を振りかざす。危ないから!


 「お兄ちゃん……妹にならセクハラしていいと思ってるの?」


 「いや……なにしたらいいのかなって聞こうと思っただけだからな、それに結構筋肉ついてるな」


 さっき触った感触的に表面の肌は柔らかくあるがその奥にある筋肉はしっかりとしていてかなり質感があった。


 「……あのさお兄ちゃんが常識のないどうしようもない童貞野郎なのは知ってるけど女の子に筋肉あるなんて言うのやめた方がいいからね」


 「そうなの?筋肉ある方がいいだろ?そりゃデブとかチャーシューとか電柱って言えば怒るのは嫌ってほど知ってるけどさ」


 俺の経験談だと特にチャーシューと電柱は女子に絶対言ってはいけない言葉ランキング第一だからな。


 思い出すだけで体が震える。


 妹は冷蔵庫から豚肉の入ったパックを取り出すとそれを俺に押し付ける。


 「それ細切れにしといて」


 俺の話が突然切られた。まぁいいけど。


 もともと妹はかなり自由人な方だからな。


 興味のない事話すといきなり違う話題振られたり無視されることなんてよくある。


 俺はパックのラップを外しまな板に豚肉を乗せて包丁でそれらを一口サイズに切っていく。


 こうなると妹は会話に飽きたのか全く話を振ってこなくなる。


 何か話題を提供するまでガン無視だ。


 あ〜と言うか話したい事あったわ。


 「そういえばサマーランドの件なんだけど一緒に行くか?」


 妹の手が止まる。


 そんなに反応するところか?


 「ふ〜ん、へ〜……お兄ちゃんもサマーランド興味あるんだ〜」


 「まあな」


 「それで童貞でぼっちだから超可愛い妹を連れて行って周りの人達に劣らないようにしようって訳だねお兄ちゃん」


 「おい、童貞なのは認めるが俺は決してぼっちではない……あと自分で超可愛いとか言うな」


 超絶可愛いか世界一可愛いの間違いだろ。


 妹はそっぽを向き足をぶらぶらさせる。


 火元から目を逸らしちゃいけません。


 「ん〜まぁしょうがないから一緒に行ってあげるよ」


 おお!まじか。


 「オッケー今週の土曜日だから……ちなみに志保と美代も居るからな、お前ら会うの久しぶりだろ?あの二人めっちゃ可愛くなってるから驚くと思う」


 相変わらず得意のジト目で俺の事を見つめて来る。


 火元から目を逸らしちゃいけません(二度目)


 そのあと何故か妹は話を聞いてくれなかった。


 ーーーー


  「お兄ちゃん〜準備できた〜?」


 気がつけば約束の土曜日。


 俺は不安で夜何度も実はサマーランドに行くのは気のせいなんじゃないかと現実逃避していたが無慈悲にもその日はやってきてしまった。


 ただ志保と美代と妹の水着姿を観れると言う嬉しいイベントが待ってるのもまた事実な訳で。


 この期待と不安の入り混じった不思議な感覚に包まれていた。


 危険であれば危険であるほどゴールした時の喜びは計り知れない。


 だから今日一日命懸けで二人と過ごすことになる。


 「お兄ちゃんボケっとしてないで準備しなよ〜電車に遅れたらバスとかの予定も狂っちゃうんだし」


  勢いよく俺の部屋の扉を開けてきたのはいいが……。


  妹の姿はこれから出掛けられるような姿ではなかった。


  花柄のピンク色エプロン、髪の毛はいつも通りポニーテールにまとめられ、特徴である緩いタレ目が眠気を誘わせた。


  その姿……まぁ買い物に行くなら可能だとは思うが……。


  「おい……エプロン姿のままだぞ」


 俺はいつも向けられているジト目を真似して表情を見せつける。


  「え?嘘!?……着替えてくるね〜」


  自分の姿をまじまじと見るとそのまま部屋に戻っていった。


 朝ごはんでも作ってくれてたのだろうか?


 壁にかけられた時計を見上げる。


 まぁあと30分くらいまでには駅方面へ向かわないと間に合わないからそれくらいなら時間に余裕はあるな。


 俺は体を起こしのんびりと着替えた。


  俺はバックの中に必要なものを詰め込むと腕時計をして鏡の前に立った。


 我ながらまぁまぁいけてる方なんじゃないのかな?普段オシャレとかしないしそのギャップもあるんだろうけど。


  今回行く場所は温泉にプールまで付いているらしいので水着にタオルは多めそして遺言書……って最後のは万が一のためだ。


  さすがに女性3人と男子1人だからな……緊張するが自信を持て俺!昨日危険女子やり過ごす方法でネットで調べまくっただろ!


 まず相手の意見を否定しないでちゃんと聞いてあげる。


 ただ自分の意見も言わないと話をしっかり聞いてくれないと勘違いされるから否定せずに自分の実体験を混ぜたり聞いた情報などを話したりする事。


 よししっかり暗記してある。

 

  もう、これは誇っていいのではないか?この事は子々孫々に伝えるとしよう。


  再び俺は滅多に着ないオシャレな服装に腕時計をした自分の姿を見て我ながらなかなかいけてる方だと思った。


  「お兄ちゃん〜私の服装大丈夫かな〜やっぱこっちにしよっかなぁ……ねぇってば〜超可愛い妹のファッションショー見たいでしょ〜?仕方ないから見せてあげるからはよこっちきて〜」


  着る服なんて事前に決めておけばいいのに内心思いつつ妹の部屋へ向かう。


 ちなみに俺は今週の金曜日に決めていた。


  とは言ってもこの服装は実は妹の雑誌を借りて一緒に買いに行ったのだ。


 半開きにされた扉を一応ノックして入る。


 そこには白い花柄のワンピースを着た妹がいた。


 まるでファンタジーの世界から出て来てしまったんじゃないかと思わせるくらい可愛い。


 「どう?可愛いでしょ?」


 スカートを軽くつまみ上へとあげる。


 「まぁ……悪くないな」


 「うわぁ〜流石童貞……素直に褒めた方がいいよ」


 うるさい。


 何も言わず部屋を出ていく。


 「お兄ちゃん照れてる〜やっぱ可愛いと思ったんでしょ〜いつも冗談混じりに言ってくるくせに〜」


 閉じた扉越しに声が聞こえてくるが無視無視。


 一度自分の部屋に戻りもう一度だけカバンの中を確認する。


 一番奥にタオルで水着は中に着てあるから問題なし遺書も小さいポケットに入れてあるしあとはあいつらに嫌われさえすれば完璧だ。


 結局妹にはこの作戦の事は話さなかった。


 シンプルに説明出来る自信なかったし。


 何より恥ずかしい。どうせ頭の口調で何?頭でも打った?って言われるのがオチだ。


 それにこの作戦はあまりいきすぎると殺されかねない。


 相手に嫌だなって思わせるのがベストで怒りまで買ってしまったら確実に血の池が出来上がってしまうからな。


 そこだけは気をつけよう。


  俺は自分の部屋の隅にある掛け時計を見て荷物の入ったカバンを手に取る。


  そろそろ行く時間か〜よいしょっと……。


  俺はカバンのチャックを閉めそれを肩にかけてると妹の部屋に向かった。


  「お〜い、そろそろ行くぞ〜」


  あ……。


  「あ……」


  なんとなく予想していたがまぁ……あれですね。


  妹の下着姿を見てしまった。これは本来ラッキースケベというやつだろうか……ブラジャーもパンツも水玉模様のまだ幼くて可愛らしいものをはいていた。


 さっきのワンピース着て行くんじゃないのかよ。


  お互い頬を僅かに赤らめながらも、特に動揺していた様子も見せずに……


  「えっと……お兄ちゃんのへんた〜いえっち〜すけべ〜童貞とあと……短小?」


  火照った顔で棒読みでそう言ってくる妹に対して俺も適当に返事をしてやった。


  「はいはい、いいから早く着替えろよ」


  と言うか恥じらいがないな、俺もそこまで興奮しなかったし……まぁ、全然嬉しくないけど〜。


  目の保養にはなったかな、なんだか視力が1くらい上がった気分……うん、悪くないね。


 と言うかあれ下着じゃなくて水着じゃね?


 分かんないけど。


  リビングに降りてコップに水を注ぐと何やら水玉模様のアレを脳内にフラッシュバックさせてしまった。


  水着姿……志保と美代も水着だもんな。


 って違うだろ!今回は遊びに行くんじゃない!明確な目的があってそれを遂行させるために行くんだろ!


 けど二人の水着姿かぁ〜。


 もってくれよ!俺の自我!


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