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未来の通販 就活ロボット編

作者: 酔狂

男「さあ、本日も始まりました!ロボティック通販~!」


女「本日も皆様のお役に立てる、新しいロボット製品をご紹介します!最後までお見逃しなく!!」


男「ところで安藤さん。今は就活シーズン真っ只中ですね!」


女「そうですね!ここ最近は、気温が30度まで上がったり、湿度が高くてただでさえジメジメする中、就活生の皆様、お疲れ様です!」


男「私も昔、リクルートスーツを着て、何十社もの企業を巡り歩いたのを思い出します。あの時は、大変でした」


女「そうですよね~。私も、辛かった思い出があります」


男「何が大変って、まず最初に、服装です!さっき安藤さんがおっしゃったように、ただでさえ暑くてジメジメする中、あの重くて厚いリクルートスーツを着て、満員電車や炎天下の中を歩かなければいけない辛さ!」


女「そうそう。私は汗っかきなので、当時かなり汗をかいたのですが、ヘタに拭こうとするとメイクが崩れたり、折角着こなした服装が崩れてしまわないか心配で、困った記憶があります」


男「そもそも、場面場面で何を着たら良いのか困ることもありますよね。例えば、選考の無い会社説明会などの案内には『服装自由』と書いてありますが、いざ私服で行ってみると周りはスーツをかっちり着ていて、悪い意味で浮いてしまうなんてことも、毎年の風物詩になっています」


女「タチが悪いのが、企業側も、そうした所をしっかり見ているところですよね、『こいつは我が社の説明会に私服で着た』って。『服装自由』と言ったのは、企業の方なのですが・・・」


男「就活で大変なのは、服装だけではありません。それは、精神面です」


女「精神面?心理的な大変さ、ということでしょうか?」


男「そうです!まもなく就活を迎えるお子様のご両親の皆様、こんな経験はありませんでしたか?一生懸命、その会社の特徴を研究し、入社したい動機を考え、面接でのマナーを勉強した。その結果、二次や三次面接まではとんとん拍子で合格したのに、四次や最終選考であっさり落とされた、なんていう・・・」


女「あ~なるほど。確かに、あれはとても辛いですよね。『あんなに一生懸命研究したのに』と落ち込んだり、『私の何が悪かったのだろう?』と不安になったり。私も、経験があるのでよく分かります」


男「この場合の問題は、企業側からは、その就活生の何が悪かったのか、全く教えてくれないことです。ですので就活生側は、自分の態度や言ったことが決定的に悪かったのか、企業研究が足りなかったのか、それとも、単に企業の担当者との相性が悪かっただけなのかが分からず、いつまでも一人で悩み続ける、ということになりかねないのです」


女「なるほど~・・・確かに、単に相性の問題と分かればすっぱり諦めもついて、次に進もう!という気持ちになれますが、そうじゃないという可能性もあると、なかなか気持ちを切り替えるのは難しいですよね~・・・」


男「ボードをご覧ください。こちらは警視庁のまとめたデータなのですが、ここ数年、就活の際のストレスを原因に自殺をした、もしくは自殺を図ったというケースが、年々増えているのです」


女「なるほど・・・これは、深刻な問題ですよね。重いリクルートスーツを着て、汗だくになりながら何十社と回り、一生懸命考えた志望動機やこれまで頑張ったことを話す。それなのに、理由も分からずメール1本で落とされてしまう。これでは、自分の全てが否定されたように感じ、悲嘆にくれるのも無理はないです」


男「まさにその通りなのです。そこで、我がロボティック通販としましては、何とか、就活生達のストレスを解消し、悲劇が防ぐことが出来ないか考えました。その結果、画期的な結論に至ったのです」


女「画期的な結論?」


男「そうです。それは、『ロボットが本人に代わって就活をすればいいのではないか』というものです」


女「ロボットが?」


男「そうです!


 さあ、というわけでいよいよ、本日の商品をご紹介しましょう!本日の商品はこちら!」


 ★『就活代行ロボット オンシャ君』★


男「はい!というわけで本日の商品は、皆様の就活の最強の味方になってくれるロボット、名付けて『オンシャ君』です!!」


女「ちょ、ちょっと待ってください!」


男「ん?どうしましたか、安藤さん?」


女「いや、確かに、今やロボットは私たちの日常にすっかり溶け込んだものになりました。研究も進み、その動きはもはや人間と全く変わらない水準となりましたが、就活を代わりに行うロボットというのは、いったい・・・」


男「そうですよね!そこでここからは、この『オンシャ君』の特徴についてご説明させていただきます!


 まず表面に使われている素材ですが、今やどのロボットにも使われている、購入者本人の見た目を完璧に再現する特殊な素材を、このオンシャ君にもしっかりと使用しております。また、購入者の声をインプットすることで、その特徴を解析し、本人と寸分変わらない声音で話すことが出来ます」


女「これなら、企業側の担当者から見ても、相手が本人なのかロボットなのか、分かりませんね!」


男「ロボットが当たり前の時代になったとはいえ、本人ではなくロボットが来たと知られれば、担当者の心証も悪くなるでしょうからね。これならそんな心配はありません!安心して就活に送り出すことが出来ます」


 また、当然ながらロボットのオンシャ君は汗をかくことはありません。どんな炎天下でも、汗だくになったりはしませんし、汗を拭ったことで髪が乱れたりすることも、もちろんありません」


女「常にしっかりとスーツを着こして、企業側への印象もバッチリですね!」


男「次に精神面ですが、こちらも就活生へのストレスを解消するべく、様々な機能を搭載しております」


女「ほうほう」


男「まずオンシャ君に、就活生本人の性格や好み、趣味や将来の希望等をインプットしますと、オンシャ君は自動で解析を行い、本人にマッチすると思われる企業を提案してくれます。もちろん、気に入る企業がない場合はその旨をインプットすることで、さらなる分析をしてくれます」


女「なるほど。日本には大小合わせ、何万もの企業がありますからね。『大企業以外も見てみたいが、数が多すぎてカバーしきれない』という就活生には、心強い機能です」


男「志望する企業が決まりましたら、次は企業研究です。この企業研究も、オンシャ君に任せれば安心。ネット上に存在するデータベースを元に、その会社の歴史や業績、株価はもちろん、過去にどのような学生を多く採用してきたのかや、どのような質問をされるのか等、細かに分析してくれます」


女「これで、企業研究が足りずに落ちる、ということを防げますね!」


男「それだけではありません。オンシャ君を会社説明会に派遣すると、その企業の社員や人事担当者の様子や言動を、目や耳の部分に備えられた特殊なセンサーで分析します。これにより、例えば担当者の傾向が既存のデータと異なった場合は、自ら修正を行い、より最適な行動を導き出します」


女「担当者の突然の変更や、企業内の空気の微妙な変化に対しても、しっかり対応出来ますね。なるほどなるほど、これは素晴らしい!」


男「驚くのはまだ早いですよ。企業研究の後はいよいよ実際の選考に入るわけですが、ここでもオンシャ君は大きく就活生の皆様を助けてくれます」


女「ふむふむ」


男「まず、一次選考として多く用いられる履歴書の提出、いわゆる『エントリーシート』ですが、ここで苦労する就活生の方々も多いと思います」


女「そうですよね。特に何社も受けていると、『志望理由』欄といった箇所に書くネタが無くなってしまい、困ってしまうことがあります」


男「そんなことも、オンシャ君なら心配無用!企業研究で蓄積した膨大なデータと、本人の経歴や好み、趣味のデータを元に、企業ごとに最適な内容を代筆してくれます。しかも、本人の筆跡を学習し、その筆跡と寸分違わない文字を書いてくれるので、代筆がバレる心配もありません」


女「おお!これは嬉しい機能ですね!」


男「エントリーシートの後は筆記試験を設けるところも多いですが、ここもオンシャ君にお任せあれ!ロボットならではの正確な計算機能と分析力を元に、確実に合格に必要な点数を叩き出します。また、性格分析を行う企業も最近は多いですが、ここでも、その企業から採用されるのに最適な回答してくれます」


女「数学が大の苦手という文系のあなたも、筆記試験は怖いものなしです!」


男「筆記試験を突破すれば、いよいよ、人事担当者や役員との面接に入ります。今までなら、『準備した内容を上手く答えられるだろうか』ですとか、『良い印象を与えられるだろうか』などと、心配される方がほとんどだったでしょう。しかし、ここまでご覧になったあなたなら、もうおわかりの通り、そんな心配はオンシャ君に任せれば、もう必要ありません!これまでの分析や蓄積データを元に、相手が求める回答を、聞き心地のよいスピードと音量で話してくれます。相手に好印象を与えること、間違いなしです!」


女「なるほど・・・でも、ちょっと待ってください!」


男「どうしましたか、安藤さん?」


女「こういった面接の場合、面接をする側は必ず相手が答えにくいであろう質問を用意していると聞きます。例えば、『君のこの経歴なら別の仕事の方が向いているんじゃない?』とか、『ライバルのこの企業も同じような特徴を持っていると思うんだけど、なんで敢えて我が社を志望したのかな?』とか。そういった場合にも、あまりにスラスラと答えては、逆に怪しまれるのでは?」


男「ご安心ください。オンシャ君は、そんな相手からの変化球にも、しっかりと対応することが出来ます。質問をした相手の様子をセンサーで分析し、相手の質問の意図を確実に読み取ります。その結果、相手が意図的に意地悪な質問をしたと判断した場合には、いかにも悩んでいるかのような素振りをして見せた後に、しっかりと相手の望む回答をする、といったことも出来ます。もちろん、そういった行動は相手の好みに合わせて使い分けますので、あるときはハキハキと受け答えをしたり、あるときは温厚な好青年を演じたり、というようにパターンを変えることも出来ます」


女「なるほど。オンシャ君は、優秀な役者でもあるのですね!安心しました」


男「これらの完璧な対応により、就活生本人は、入社試験を受けた企業から、非常に高い確率で採用通知を受け取ることが出来ます。しかし、極めて低い確率ではありますが、何らかの理由で不採用となってしまう可能性もあります。そのような場合、オンシャ君は独自にその理由を分析し、人事担当者との相性なのか、自らの行動パターンに問題があったのか、等を判断します。そしてその結果に応じて、自らの思考回路を微修正したり、構わず他社の選考を進めたり、といったことを行うのです。これによって就活生本人は、意味もなく自己嫌悪に陥ることもなく、穏やかな心のままで、内定式、そして入社式を迎えることが出来るわけです」


女「素晴らしい、ほんとうに素晴らしいですね、オンシャ君は!私も出来るなら就活生に戻って、ぜひ使ってみたいです!!」


男「ありがとうございます。実は、私自身も就活生として使ってみたいくらい、素晴らしい商品だと思っております。就活生の皆様にはこれを使っていただいて、ぜひ、ご希望の企業から採用通知を受け取っていただきたいと思っております」


女「でも、これだけ素晴らしい商品ですと、気になるのは・・・」


男「お値段ですよね!ご安心ください!学生の方も多い就活生の皆様に気軽にお買い求めいただけるよう、ロボティック通販、勉強させていただきました!

 就活生の皆様の最強の味方、オンシャ君!お値段は、こちら!」


 ★49,800円!★


男「お値段なんと、49,800円で、ご提供させていただきます!」


女「すごい!これなら学生の皆様でも、アルバイト等で充分ご購入することが出来ますね!」


男「さらに!今回は特別にオンシャ君本体に加えまして、非常用のモバイルバッテリーもお付けします。もちろん、送料は無料です!」


女「うっかり充電を忘れてしまった場合も安心です!」


男「ぜひ!」


男&女「お電話を!」


ナレーション「就活生の最強の味方、『オンシャ君』。今回は特別に、オンシャ君専用のモバイルバッテリーをお付けし、お値段なんと49,800円!もちろん、送料、手数料、全ていただきません。お電話はお早めに!・・・


なお、ご入社前の思いや希望と、ご入社後の実態とのギャップにつきまして、弊社は一切責任を負いかねます。予めご了承ください。」

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