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VRMMOが日常となった世界で青春物語  作者: 金 銀太
第二章:天まで届く世界の樹
40/50

4話:魂の森

「お、早かったな俊 ヒーロー(笑)には時間が必要なんじゃなかったのか?」

「(笑)を付けるな、(笑)を!」


 走って合流したせいなのか息を切らせながら必死に否定する俊、ゲーム部の4人は一頻り笑った後、俊を先頭に草原を歩く。


 魂の森まではそれなりに距離があったが、その間雑談したり、無意味に【変身】する俊を皆でスルーしながら、楽しく歩いていると森が見えてきた。

 草原に突如として現れるうっそうとし、青々としたその森は何処か人為的な違和感を感じる物だったが、それが却ってそこを盟友団拠点”魂の森”だと印象づけた。


 森に近づくと俊がシュッ! とゲーム部の前に移動する。


「ようこそ我が盟友団拠点”魂の森”へ!」


 俊は誇らしげに言った。


「見た目はそんなに普通の森と変わらないね」


 楓がそう言うと俊はフッフッフ……!と笑う。


「井口さん! この森の凄いところはこれからお見せしますよ! さあ皆! どうぞ中へ」


 俊はゲーム部へ先を促すように手で道を指す。しかしそこには道らしき物は無くむき出しとなった土と雑多に生える草木でとても歩きにくそうな所だった。

 その様子に疑問を浮かべながらゲーム部は森の中に入っていく。すると突如、土の中から根っこが次々と顔をだし、木々が移動し出す。


「うおっ!」


 思わず声を上げる総司。移動した木々は総司達を迎え入れるように整列した。


「へ~凄いな!」


 感心する総司に俊は得意げに言った。


「まだまだこんなもんじゃ無いぜ!」


 俊がそう言うと土から隆起した根っこが重なり合い、ガシッと根っこ同士で組み合うと文字通り天然の木材を用いた道が出来上がった。

 ゲーム部それぞれが感嘆の声を上げながらその道を進み出すと優理香が呟いた。


「これが魔法の木で作られた盟友団の安全地帯”魂の森”なのね……」

「立花は知ってたか」


 俊が答えると優理香は頷く。


「ええ、森を囲む6本の魔法の木――六芒樹で囲まれた、変幻自在の天然の要塞……上位ギルドの中ではそれなりに有名だもの」

「ここ、そんなに凄いのか」


 話を横から聞いていた総司は整列していた木を撫でるように触る、すると突然頭に毬栗(いがぐり)のような物が落とされた。


「イテッ!」

「あ、総司。あんま色々触らない方が良いぞ。基本的にこの森は盟友団のギルド以外には厳しいからな」


 総司は頭を撫でながら「そういう事は早く言ってよ」とぼやいた。

 楓がそれを笑いながら見ると、周囲の木々を見回し俊に言う。


「素敵な所だね!」


 楓がそう言うと俊はニヤニヤしながら答えた。


「俺たちが植えた木で作った森だからね!」

「ここの木中田君達が植えたの?」


 絵里先輩がたずねると俊はそれに答える。


「そうっす! 元々は何も無い草原に1本1本ギルメンと一緒に魂込めて植えて作ったんです」

「だから”魂の森”なんだね!」

「はい!」


 誇るように言う俊を横目で見ながら総司は口元を上げる。個人的にこの場所は好きになれそうだった。


 根で出来た道を歩き続けると森を抜け、やや高台に位置した場所に着く。木々の間隔が広がり、自由になった視界の先には、見下ろす形で里が見えた。

 その里は中央に大きな巨木が立っておりそれを中心として半径約500mほどの範囲で木造で作られた家々が立ち並んでいた。


 さらに目を懲らすと多くの亜人型NPCが生活を営んでいる姿が見える。


 木の枝を持ちながら何かのごっこ遊びをしている、種々の動物をモチーフにした獣人の子供達に、井戸端会議に夢中なエルフの女性、何かの交渉をしているのか盛んに話し合っているドワーフ達となかなか活気に満ちあふれた集落だ。


 総司はその光景を見ながら(おお~)と感心していた。


 アレサのサーバーの設定について入学してから、色々調べて知ったことだが、この学校で設定されている領地戦設定に置いて、領地の発展具合というのはNPCの数や生活の活気によって大まかに計る事が出来る。

 というのも自身の領地を発展させる為に多くのゲーム内通貨Tr(テラ)を投資すればその分、安全地帯の設備の質に繋がりNPCの数が増え、NPC達による産業が活発になるためだ。


 発達した産業はプレイヤーが使うことの出来る施設の更なる強化や、新しいクエストの解放に影響しするのは勿論、税収という形でまた新しいTrを獲得する事も出来る。

 パッと見たところではあるが、この盟友団の拠点”魂の森”はその点において優れていると考える事が出来た。


「うちのギルマスが居るのはあのデカい木の根元だ」


 俊が里の中央の木を指さし、次の目的地を指し示すとゲーム部のメンバーはうなずき合い、俊に先導される形で根で出来た階段を降り、その里を進んでいく。


 途中いくつものNPCとすれ違うがそのどれもが活気と笑顔に満ちあふれ、見ているこっちが幸せな気分にさせられる程、良い雰囲気だった。

 いくつもの家屋を抜け、人でごった返す市場を抜けたら、その巨木の根元に着く。

 巨木の根元にはギルマス用の豪勢な館が建てられていると総司は思ったが、そういう訳では無く、大きな木の幹の中に館そのものが、埋め込まれているような形で存在した。

 その根元の家に向かっている最中、総司の裾が何かに引っ張られる。視線をそこに向けると絵里先輩がいた。


「緊張するね総司」


 顔を精一杯上げながら総司と視線を合わせる彼女に総司は尋ねる。


「……本当に絵里先輩が同盟の交渉するんですか?」

「当たり前だよ! 私が部長だもん!」

「……」


 自信満々に言う彼女に総司は何処か薄暗いモヤッとした気持ちが心に満ちる。交渉……あまり良い思い出が無い。


「……失敗しても泣かないでくださいよ?」


 思わずそんな言葉が出てしまう。もっと優しい言い方をすれば良かったと後悔している総司に、絵里先輩は胸を張り明るく答えた。


「大丈夫! 私はもう泣かないよ! 皆がいるから!」

「……そっすか」


 ぶっきらぼうに答えたが、モヤッとした心は晴れ、スッと気持ちが軽くなった気がした。余計な心配だったようだ。


 木で作られた階段を上り、幹の中にある盟友団のリーダーがいる屋敷の扉の前まで着く5人。

 俊は一歩前に出て扉を叩く。


「猛さ~ん、いますか~?」

「……」


 返事が無い。俊はもう一度強く、扉を叩いた。


「猛さ~ん?」


 すると屋敷の中で何かが動き、こちらに向かってくる気配を感じる。

 そして扉が開かれた。


「ふわぁ~どうしたんだよ俊?」


 可愛いライオンの刺繍がされた寝間着に身を包んだライオン頭の大柄な獣人が、お腹をかきながら出てくる。


 俊はそれを気にとめること無く言った。


「猛さん、ゲームしながら寝る癖、辞めた方が良いっすよ?」

「そうは言っても眠いんだよ~昨日、深夜までギルメンとクエストしてたからさ――!?」


 その獣人は俊の後ろにいるゲーム部に気づくと目を見開く。そして大慌てで俊を引っ張り扉を閉めた。


「……?」


 顔を見合わせるゲーム部4人。同時に扉の向こうから大声で話す声が轟く。


『客が居るなんて聞いてねーよ!?』

『そりゃ言ってませんし』

『おっま……! 何で現実(あっち)で言わねーんだよ!?」

『猛さんが交渉だとか大事なことは現実(リアル)じゃ無くて、ゲーム内で直接言えって言ったんじゃないっすか! そっちの方が泊が出るからって!』

『メールくらいはするべきだろ!』

『もうしてますよ! 寝てて気づかなかったんでしょ』

『ぐぬぬ……っ! あ~……分かった確かに俺が悪いな! 急いで準備するから、俊! その間、時間稼いでてくれ!』

『へいへい……』

『頼むぞ!』


 目の前の扉が開かれ俊がひょいっと飛び出てくる。俊はため息をつきそして言った。


「今ので大体分かっただろうけど、うちのギルマスあんなんだからちょっと待ってやってくれ」


 その言葉を聞くとゲーム部の4人は笑いながら頷いた。

 扉の奥で何かがドタバタ動く気配を感じながらその獣人が準備を終えるのを待っていると。誰かが階段を上ってくる気配を感じる。


「お、俊じゃん」

「あ、陽葵(ひまり)さん! チィーッス!」


 高めの声が聞こえると、俊が直ぐに振り返り頭を下げた。続いて総司も振り返る。


 陽葵と呼ばれたその声の持ち主は身長150cmを少し超えるくらいの小柄な女の子のアバターだった。髪色は茶色のセミロング、目はややつり目気味の勝ち気な見た目をしていおり、全身を軽装の緑色と茶色のまだら模様を持つ迷彩服で身を包み、頭にはこれまた迷彩柄の帽子をかぶり、そこにはちょこんと緑色の羽が付いている。

 総司は続けて視線をアバターの上部に移した。そこにはそのアバターの名前<ストライカー>とレベルの数字”84”が表示されていた。


 その女の子型アバター<ストライカー>は俊にひらひらと手を振り「うい」っと答えると、ゲーム部と俊の面々がいるのを全く気にせず、ズイッと5人組に割って入り、


「客?」


 と俊に尋ねた。


 俊は慌てて答える。


「そうっす! ゲーム部が盟友団と同盟が結びたいとのことで案内しました!」

「ゲーム部ってあのアミックス・テラ倒したって噂の?」

「うっす!」

「ふ~ん……やっぱりあの噂本当だったんだ……」


 <ストライカー>は順々にじっくりとゲーム部の部員の顔を見た後、ニヤリと笑った。


「そのレベルで<ウォーヘッド>倒したんだ……凄いじゃん!」


 そう言うとその女の子のアバターは屋敷の扉を遠慮無く開け、中に入っていく。中からさっきのライオン頭の獣人の悲鳴が聞こえたが、それは扉が閉じると直ぐ聞こえなくなった。


「……今の人って誰?」


 扉が閉じ、静かになった後に楓が俊に尋ねると俊は答えた。


「あの人は吉良(きら)陽葵(ひまり)さん、内のギルドのNO.2の人なんだ」

「偉い人?」


 絵里先輩が続けて尋ねると俊は首をかしげ答えた。


「基本的に自由な人っすからね~そういうタイプじゃないかもっす」

「そうなんだ~」


 総司は3人のやりとりを意識半分で聞いていると視界の端で優理香のアバター<ヴァルキュリア> の表情が少し硬くなったのが見えた。


「どうしたの優理香?」


 総司は優理香に視線を移し尋ねる。彼女はハッとし、それに答えた。


「いえ、あの子が例の”グリーン・フェザー”だって聞いてちょっと驚いただけよ」

「ぐりーんふぇざー?」


 気の抜けた声で言うと優理香は言葉を続けた。


「凄腕の狙撃手として校内では有名な子よ、緑色の羽がトレードマークだから”グリーン・フェザー”って呼ばれてるの」

「へぇ~そんな先輩居るんだな」


 総司は軽くそう返す。レベル84はなかなかの水準である、総司達の同世代は勿論、学年が上の生徒達でもそうは見ないレベルだったからだ。


 しかし総司の答えを聞いた優理香は表情を少し曇らせると口を開いた。


「あの子はまだ中学2年生よ……」

「あ、後輩なんだ~そりゃすごい――ってえぇ!?」


 総司は声を上げる。それに続いて絵里先輩も驚くように声を上げた。


「今の子って私よりも年下なの!?」

「はい」


 優理香が答えると楓も驚き目を開いた。


「凄いな~私の倍以上あるなんて、ちょっと自信なくしちゃうかも……」


 少し肩を落とす楓の<猫丸>に俊は言った。


「陽葵さんはああ見えて7歳の頃からやってるらしいから気にしない方がいいですよ井口さん! 所謂ガチ勢って奴です!」


 フォローするようなその言葉に楓は少し笑って返していた。

 総司は視線を<ストライカー>が入っていった扉に移す。


(それにしても中2でレベル84ね……)


 自分が中学2年生の頃は確かレベル100だった。自分の様な存在は例外だと思っていたが、こうも身近に似たような存在が居るのは少し面食らって気がした。



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