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VRMMOが日常となった世界で青春物語  作者: 金 銀太
VRMMOが日常となった世界で大切な仲間が出来るまで
26/50

25話:纏まるゲーム部

 

 それからの日々は驚くほど速く過ぎていった。


 部室で作戦会議をした日から、アミックス・テラにギルド戦を申し込んだ日――4月の末日までの1週間と少しという期間だったが、その間ゲーム部は毎日最終下校時間まで練習を続け。帰宅後もオンラインでミーティングを行い改善点を模索し、学校が無い土曜、日曜も部室に集まり、朝から晩まで練習し続けた。


 少しでも勝率を上げる為、少しでも強くなるため徹底的に取り組んだ。


 そして運命の日の前日。


 空は暗くなり、最終下校時間が近づいている部室で清宮総司は、パイプ椅子に腰かけテーブルに置かれたタブレットで1人アミックス・テラの動画を眺めていた。


「精が出るわね」


 後ろから声が聞こえ、振り返ると優理香が立っていた。彼女は総司の横に座る。


「少しでも勝てる確率を上げたいからね、そう言えば絵里先輩と楓さんは?」


 総司はソファの方に目をやる。


「あの2人なら最後にもう一度MAPを確認したいってまだリンク中よ」

「りょーかい」


 総司はそう言うと再び、画面に目を移す。アミックス・テラのアバターが暴れるその動画を、優理香も覗き込みながら不安気に言った。


「……勝てると思う?」

「100回やったら99回は負けるな」

「勝率は1%ね……」

「いや100%だよ」

「……? 変な事言うわね」

「最初の1回はこっちが必ず勝つ、だから100%」


 総司はニヤッと笑いながら隣に座る優理香を見る。彼女も呆れ交じりに笑う。


「戦うのは私たちなのよ?」

「俺は仲間を信じてるからな!」

「ちょっと前までは辞めようとしていた人が言うセリフじゃないわね」


「……そうだな」


 総司はタブレットに写る動画を止め、体を優理香の方に向ける。


「実は俺、あと1人でも部員が増えたらゲーム部辞めようと思ってたんだ」

「……そうなの?」


 優理香は、僅かに表情を曇らせた。


「ああ、だからもし合併が上手く行ったらその時点で辞めるつもりだった。……結果としては失敗したけどね」

「……部員が増えたら辞めるつもりなのは変わらないの?」

「いや……もうそのつもりは無いよ」

「……」


 優理香は真剣な眼差しで見つめてきた。総司はポツリポツリと呟きだす。


「……ゲーム部なんて俺の望んだ場所じゃない。ここに居たって、楽しい事なんて何もない、そう思ってた。毎日部室に集まって『今日は何があった?』って皆と話しをした後、変なクエストを一緒に愚痴をいいながらやって『明日は何しようか?』って話しながら帰る……。つまらない毎日だと思ってた……いや、思い込んでたんだ。だけどさ――」



「俺……ずっと一人だったからなのかなぁ……」



「ただ本当にそれだけの毎日だったのに凄く楽しかったんだ……。いつの間にか皆と一緒にやるゲーム部が楽しみになってたんだ。すげぇカッコ悪いよな、俺……」


 総司は少し顔を伏せ自嘲するかのように笑った。


 あれだけ意固地に自分は1人だと思っていた筈なのに……。今の自分の姿はあまりにもみっともない気がしてならなかった。


 優理香はそんな総司を笑う事は無く。その代わり優しく囁くように話し始めた。


「……実は私も最初はゲーム部に入る時はそんなに気乗りしなかったの」

「そうなのか?」


 顔を上げ優理香を見ると彼女は話を続けた。


「最初は楓が喜んでくれるならそれでいい……。それくらいの気持ちだったの。私自身にはそこまでモチベーションは無かった」


「……」


「でも、ここでずっと過ごしている内に変わっていったわ。失敗や成功に捉われない。立場の上下も無く、1つの目標を全員の力で達成しようとするこの場所は、私にとって今まで感じたことが無いくらい、暖かく居心地の良い場所だった……」


 優理香は総司に微笑みかける。


「だから私もいつの間にか夢中になってたの。私も貴方と同じよ、私もカッコ悪いわ」


「優理香……」


 彼女も同じだったのだ。自分と同じように、いつの間にかゲーム部が好きになっていた1人……。

 総司は安堵感が心を満たすと同時に、どこか気恥ずかしさも湧き上がり優理香から視線を逸らし、頭をわしわしとかき言う。


「あ~……勝ちてぇな……」

「ええそうね……本当に勝ちたい……」


 頷く優理香を目だけで見ていると視界の端でソファが動くのが見えた。どうやら絵里先輩と楓のリンクが終わったようだった。


「お待たせ~」


 楓が身を起こし、総司と優理香の元に走ってくる。総司と優理香が適当に言葉を2つ3つほど返すと、絵里先輩がまだ来ない事を疑問に思った総司は楓に問いかける。


「あれ? 絵里先輩は? まだリンク中?」


 総司は身を伸ばしソファを覗き込もうとする。


「……絵里先輩なら私と一緒に帰ってきた筈だからもう起きてると思うよ」

「……分かった、ありがとう」


 総司はパイプ椅子から立ち上がりソファに向かう。

 絵里先輩が横たわるソファまで着くと彼女は体を横にしたまま目を開けてボーっとしていた。


 彼女はここ1週間ずっとこんな感じだった。やる気がないとか嫌がってるとかそういう訳ではない。ちゃんと練習にも本気で取り組んでいるし、不満を言っているわけではない。


 ただ、元気がないのだ。どこか上の空になる事が多かった。


「絵里先輩大丈夫ですか?」


 総司はしゃがみ込み彼女と視線を合わせる。彼女は総司と目が合いそうになると瞳を伏しそれを避けた。


「大丈夫……」

「……何か悩み事でもあるんですか?」

「……」


 絵里先輩は暫く黙ると、瞳をあげ総司を見つめる。


「……総司は私達が勝ったらゲーム部に居てくれる?」

「……? そりゃあ居ますよ」

「そっか……」


 彼女は再び目を伏した。


「絵里先輩――」


「ごめんね、皆がんばっているのにずっとこんな感じで……。でも怖くて堪らないの……もし負けちゃったらどうしようって思うと怖くて堪らない……」


「……」


「ごめんね……こんなダメな先輩でごめんね……」


 彼女は顔をソファにうずめてただひたすら謝りだす。総司はそれを優しくそしてハッキリと否定した。


「ダメな先輩じゃないです」


 彼女は顔を上げた、僅かに瞳が赤くなっていた。


「絵里先輩はダメな先輩じゃないです! ――ほら!」


 総司は顔を上に向ける。絵里先輩もそれに釣られて視線を上に上げた。


「そうですよ絵里先輩はダメな先輩じゃないです!」

「ええ、私が今まで会った中で一番良い先輩です」


 楓と立花がソファの上から2人を覗き込んでいた。


「ここに絵里先輩がダメな先輩だって思ってる人なんて1人もいないですよ! だから絵里先輩元気出してください! 明日は必ず勝てますよ!」


 力強く総司がそう言うと彼女の瞳には見る見るうちに涙が溜まっていく。


「うぅ~あ”り”か”と”う”み”ん”な”~」


 そのまま彼女は起き上がり3人を抱きしめる。


「あ”し”た”は”か”ん”は”ろ”う”ね”ぇ”~!!!」


 そのままおいおいと泣き始める絵里先輩。3人はそれを笑いながらなだめた。運命の日の前日。確かにゲーム部の心が1つに纏まったのだった。


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