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VRMMOが日常となった世界で青春物語  作者: 金 銀太
VRMMOが日常となった世界で大切な仲間が出来るまで
15/50

14話:ワールドモード

 私チームプレイ久し振りだから緊張しちゃうな~総司君は?」


 楓は上機嫌な様子で総司に呟いた。


 立花と一波乱あった次の日の放課後。総司、楓、立花の3人はゲーム部の部室に向かうため連絡通路を歩いていた。


「俺もチームプレイ滅多にしないからちょっとしてるかも」

「良かった~。総司君落ち着いてるから私一人だけ緊張してるのかと思ったよ!」


 そう言うと彼女はニコリと笑った。総司も軽く笑顔を作りそれに応えた。


「そう言えば総司君普段は何処のサーバーにいるの?」


 アレサのサーバーは幾つか存在する。この新台学園の様に学校や組織単位でサーバーを設けていたり、区や都が公式から委託され運営しているサーバーさえ存在するのである。楓が聞いているのはそういうことだった。総司の答えは――


「世田谷区の公営サーバーにいるよ」


 嘘だった。本当は別のサーバーでプレイをしているが、これはこれ以上の追求を受けない為の方便(ほうべん)だ。幸いにも楓はそれにさして疑問を感じなかったようで会話を続ける。


「そうなんだ! じゃあきっと驚くよ~この学校のサーバー凄い発展してるから」      

「へ~楽しみだな」

「学校のワールドモードは始めて?」             

「前1回来たけどその時はあんまり見て回らなかったから実質初めてかも、設定も夜だったしね」

「じゃあ私達が色々教えてあげないとね! ユリカちゃん!」

「……ええ、そうね」

「……」 


 井口に応える立花をチラリと見る総司。昨日の一件以来今まで以上に彼女とは気まずい関係になってしまっている……。しかし場に楓がいる時は互いにそれを悟らせないように努力はしていた。


 水面下での緊張を孕みつつその後も他愛の無い会話を続けながら部室に向かう3人。

 部室の前に着き扉を開ける。


「や! 皆!」


 部室に入るなり気が付いた絵里先輩が軽く手をあげ、挨拶をしてくるとそれに同調し3人も挨拶を返した。


「今日はゲーム部初めてのチームプレイ! 皆頑張ろうね」


 鞄を置き、中からESGを取り出す絵里先輩と立花と楓。総司はポケットからESGを引っ張り出した。


「私楽しみ過ぎて昨日寝れなかったんだすよ」

「私も~」


 楓と絵里先輩が互いにESGを取り付けながらキャキャっとした仕草でソファに座る。それに続いて楓の隣には立花が座り、絵里先輩の隣には総司が座った。


「俺はちょっと設定(いじ)るんで3人は先行っててください」


 準備が終わったであろう絵里先輩と楓、立花に一声かけて総司はスマホを弄る。アバターを〈ベイオネット〉から〈ルーラー〉に変えるためだ。


「うん分かった! 待ってるね」

「……」


 楓は特に気にもせずリンクを始めると、彼女は眠るようにソファにもたれかかる。立花も一瞬総司を見て怪訝そうな顔を浮かべたがそれに続いた。


 総司は変わらずスマホを操作していると絵里先輩が距離を詰め耳に囁くように言う。


「ねえ? 総司はどっちのアバターでプレイするの」

「弱い方ですよ、レベルも合わないし、バレたら嫌ですしね」


 ワールドモードでレベル130のアバターがゲーム部のアバターと一緒にチームプレイなんて目立つでは済まないのだ。当然である。


「そっかーそうだよね……」


 絵里先輩はそう言うと総司のスマホを覗き込むように体を密着させる。ふわっと優しい香りがした。総司はほんの少しドキッとする。


 (この人距離感が近い……)


 平静を確保するため僅かに離れる総司。絵里先輩はそれにムッとした表情を浮かべる


「ひっどい! なんで逃げるの!」


 距離を再び詰められる。


「逃げてないですよ! 近いんです!」


 再び距離を離す。


「むむ……!」


 絵里先輩も負けじとさらに近づいてくる。


「なんで近づいてくるんですか!」


 ソファの端まで退避する。


「総司が逃げるからだよ!」


 さらにさらに距離を詰める絵里先輩。広めのソファな筈が2人はギュウギュウ詰めの満員電車の様に密着する。


「だから逃げてないですよ!」


 体を限界まで傾けソファから半分身を乗り出す形になる総司。絵里先輩はぐぬぬと顔を歪ませる。


「こうなったら意地でも近づいてやるんだから!」


 のしかかる様に彼女は総司に覆いかぶさる。


「や、やめてください!!! 本当!!! 色々当たってますから!!!」


 胸やら太ももやらが乗りかかり複雑に絡み合う2人……傍から見ると酷い光景だった。

 必死に絵里先輩を押しのけようとする総司だったが、彼女はそれにめげず総司のスマホのリンクスタートボタンを押しにかかる。


「ちょ、ちょっと!!!」

「ぐぬぬ……リンクスタートッ……!」


 絵里先輩は総司と自分のスタートボタンを同時に押した。

 そのままの体勢で2人の意識は遠のいていった。



 ※



 (は~……あの人と一緒にいるだけで疲れるな)

 リンクが終わりため息をつきながら目を開ける総司。視界の端には絵里先輩の〈マリボール〉が不敵な笑みを浮かべ立っていた。


「フフ……これでずっと一緒だね総司……」

「何言ってんすか」


 何故か病んでる人風に言う絵里先輩を軽く流し、周囲を見渡す。目の前には噴水を中心とした石畳の大きな広場があり、そこを囲むように中世風の街並みが広がり、町人を模したNPCがせわしなく行き来していた。


 今総司達がリンクしたのは、ワールドモードと呼ばれるPVE(プレイヤーVSエネミー)メインのモードだ。プレイヤーはまず”安全地帯(セーフゾーン)”と呼ばれる拠点でスポーン。そこで準備を整え”依頼所”と呼ばれる場所でクエストを受け、それを達成する事でレベルアップ用の経験値とゲーム内通貨であるTr(テラ)を獲得する事が出来る。


 獲得された経験値はレベルアップに用いる事が出来。Tr(テラ)は新しい装備の開発や修繕、各種アイテムの売買、施設の利用、拡張……等々に使えるオーソドックスなシステムだ。


 総司のアバター〈ルーラー〉と絵里先輩のアバター〈マリボール〉は噴水の中央に向かいながら先にログインしているであろう立花と楓のアバターを探す。


 (立花と楓さんはっと……いた)


 噴水の向こう側に〈ヴァルキュリア〉の槍が見えた。きっと楓のアバターもそこにいるだろう。

 絵里先輩に目配せすると彼女も頷いた。2人で立花と楓がいる場所に向かう。

 近づくにつれ立花のアバター〈ヴァルキュリア〉とその隣にたつ猫耳を持つ半獣人型のアバターが見えた。


「お待たせ」


 背を向け並び立つ2人のアバターに声を掛ける。


「あ! 総司君!」


 半獣人型のアバターがニコリと笑いながら振り返った。

 クリーム色の髪の毛に、宝石の様な輝きを持つ金色の瞳、ぴょこんと飛び出た猫耳が特徴の井口楓のアバター――〈猫丸〉だ。


 楓は総司のアバタ―〈ルーラー〉の隣にいる〈マリボール〉に視線を移す。


「絵里先輩も遅いからどうしたのかと思ってたんですよ」

「総司が逃げるから!」

「逃げてないですって……」


 呆れながら答える総司、目だけを動かし〈猫丸〉を見る。

 

 井口楓のアバター〈猫丸〉――レベルは38、自然系の半獣人型のアバターだ。

 自然系のアバターは動物系の特徴が強く出るアバターで、能力も参照にした動物の姿に応じる。

 例えば、虎なら鋭い爪が生えてくるし、鷲なら大きな翼で空を飛べるのである。総じて高い能力と個性を持ち多くの人間に人気の種族だった。


 目の前に立つ楓のアバター〈猫丸〉は名前の通り猫を参照にしたようでしなやかな体躯が全体的に見て取れた。しかし……総司にとってはそれよりも気になる事があった――


 (相変わらずエロイアバターだな……)


 それは〈猫丸〉の服装だった。肘まで覆う長手袋と皮のブーツ、ギリギリのミニスカートに胸元からお腹まで黄色い装飾が施されたレザーアーマー。これだけならただの軽装だが…〈猫丸〉はそれに留まらなかった。


 体側面に布が殆ど無いのである。紐のような物が数本あるだけでそれ以外はすべて肌色だ。お陰で脇から腰回り……お尻までのラインが丸見えだった。


  (なんて……やる気のない防具なんだ……全くけしからん!)


 1人脳内で批評界を繰り広げる総司。その顔はニヤついていた。


 そんな視線を向けられているとは露知らず〈猫丸〉は〈マリボール〉をジッと見つめる。


「絵里先輩のアバターと装備可愛いですね!」

「え! そ、そうかなぁ……えへへ」


 まさか褒められるとは思ってなかったのだろう、照れ笑いを浮かべ髪を触る〈マリボール〉。


「触ってもいいですか?」

「いいよ!」


 まるで散歩中の犬を触るかのようにあっさり言う楓に、褒められ気をよくした絵里先輩は快諾する。〈猫丸〉は表情を明るくして〈マリボール〉に手を伸ばした。


「では失礼して……」


 ズボ


「ひゃあああ!!!」


 (……!?)


 突如〈マリボール〉のローブの中に手を突っ込む〈猫丸〉。過程をすっとばし直に触られるとは思ってなかったであろう絵里先輩から驚きの悲鳴が上がる。


「布地はマジカルシルクとブルーシープのコットン……いいですね」

「ちょ、ちょっとかえでちゃんんん!?」


 ローブの中を〈猫丸〉の手が這う。


「服のサイズがちょっと合ってないですね」

「もしかしたらまだ大きくなるかもしれないからあぁぁぁ!」


 体を悶えさせながら〈猫丸〉の手から逃れようとする〈マリボール〉しかし彼女は逃がさない。


「リアル連動型のアバターですか? ダメですよ! ならしっかりサイズ合わせないと!」


 そう言うと〈猫丸〉はガシッと〈マリボール〉の体を抑える。


「んんん!?」

「今合わせちゃいますね!」

「……ま、待って!」

「安心してください! 私デザイナ―志望ですから!」


 謎な理屈を挙げながら激しく〈マリボール〉の体をまさぐりだす〈猫丸〉。


「いやあああ!!!」


 必死になって抵抗する〈マリボール〉だったが――


「動かないで!!!」

「はい……」


 〈猫丸〉の一喝で大人しくなる。片方の手でコンソールを弄りながらもう片方の手はいよいよ盛り上がった双丘に向かう。


「……ブラのサイズがちょっと大きいですね」

「は、張る時があるから」

「めんどくさいがっちゃダメです! これじゃあ動いてるとき先がこすれて集中できないですよ! どれどれ――」


 手袋を外し、ローブの下からメロンの様な物を持ち上げる。


「トップ98……アンダー66……」

「あ、ああ……」


 淡々と冷静に何かの数字を言う〈猫丸〉に反して〈マリボール〉はまるで一枚づつ服を脱がされるているかのように、顔をみるみるうちに真っ赤にし涙目になりながら硬直しだす。


 一方総司はというと――


 (……なんかよく分からないけど、凄いエロい会話してる気がする!!!)


 大興奮していた。


 チラチラチラ


 凡そ1秒に1回の割合で2人をチラ見する総司のアバター〈ルーラー〉。

 その不審な目線に気付いた〈ヴァルキュリア〉が〈猫丸〉に駆け寄る。


「ちょっと楓……」


 それは彼女の暴挙を静止するための言葉だったが――


「待っててねユリカちゃん直ぐユリカちゃんの分もやるから」


 何を勘違いしたのか〈猫丸〉は満面の笑みで〈ヴァルキュリア〉を見た。


「え!? いや私は……」

「よし! オッケー! いくよユリカちゃん!」

「ま、待って!」


 ズボ


「ひゃあああ!!!」

「最近ユリカちゃんも成長期だから! えーと……86……」

「や、やめて!!! ああああああ!!!」


 大声を上げ何かの数字をかき消す立花。


 (どうなってるんだこれ……!? 神イベントじゃねーか!!!)


 最早ガン見しだす総司。広場には立花の悲鳴が木霊し続けていた。



 ※



「ハァ……ハア……」

「ウフフ……」


 息を切らせ槍を杖にしてなんとか立つ〈ヴァルキュリア〉とすぐそばで目のハイライトを消し、へたり込む〈マリボール〉。〈猫丸〉は2人を見ながら満足そうに頷く。


「よしバッチリ! お待たせ総司君!」


 振り向く〈猫丸〉に〈ルーラー〉は首を全力で横に振る。


「全然ッ!!! 待たされてないよ!!!」


 むしろもっとやってくれ。

 

 棚から牡丹餅どころか金塊が出てきたようなイベントに総司のテンションはMAXだった。


「満足したならもう行きましょう……ッ!」


 そんな総司のテンションとは真逆に羞恥(しゅうち)で声を震わせる立花、楓は「は~い!」と一声挙げる。


「もう……お嫁に行けない……」


 〈ヴァルキュリア〉と〈猫丸〉に続くようにフラフラと立ち上がる〈マリボール〉。ダボダボだった神官服はピッタリと絵里先輩のサイズに合っていた。

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