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VRMMOが日常となった世界で青春物語  作者: 金 銀太
VRMMOが日常となった世界で大切な仲間が出来るまで
14/50

13話:隠したい事、知りたい事

 打ち上げが終わり学校を出る4人。すっかり夕日も落ち、空は薄暗くなり始めていた。


「明日はいよいよワールドモードでクエストだね 楓ちゃん! ユリカちゃん!」


 絵里先輩は楓と立花を見ながら言う。楓は笑顔で「はい!」と頷く、立花もそれに続くように頷いた。


「総司も勿論来てくれるよね!?」


 バッっと顔を覗き込まれる総司。もういよいよ夜だというのに満点笑顔な彼女に総司は押され、答える。


「まあ……行きますけど……」


 絵里先輩は満足したように頷いた。


「よし! じゃあ明日また放課後部室ね! 楓ちゃん行こうか!」

「はい絵里先輩! ユリカちゃん! また明日ね!」

「ええ。絵里先輩もお気をつけて」

「うん! ありがとう! じゃバイバイ~」


 楓と絵里先輩は手を振りながら去って行った。

 あの2人はバス通学らしく、帰り道は途中まで一緒だそうだ。

 2人の見送りが終わり帰路に付こうとする総司。ふと立花の方を見る。


 (そう言えば立花は何処帰りなんだ? 家近いらしいから徒歩なんだろうけど)


 総司の内心など勿論知らず。立花はいつもの仏頂面を浮かべ、無言で歩き出した。


 (まあ、どうでもいいか。俺も徒歩だけど、どうせ別方向だろうし)


 特に気にも留めず総司も歩き始める。

 そのまま自宅がある方向に向かうため前の十字路を右に舵を取る。


「「……」」


 突き当りを左に――


「「……」」


 そのまま道沿いに――


「「……」」


 坂を登って――


「「……」」


 何かおかしい……。


 総司の中の予定ではとっくの昔に立花と別れルンルン気分で帰宅している筈なのだ。だが、立花が分かれる気配が微塵もない――それどころかこの坂を登り切ったら後は長い1本道なのだ、それまでに分かれないと帰宅ルートのほぼ全てで立花と一緒になってしまう。総司は焦りだす。


 (おい、どうなってんだこれ……気まずいなんてレベルじゃねーぞ!)


 焦りから挙動不審になる総司。

 坂の頂点までもう少し……頼む! 横に行ってくれ! 神に願う総司。しかし立花は道を直進する。


 (あぁ……)


 これから自宅までの長い道のり間、延々と気まずい時間を過ごすのかと思うと総司のテンションゲージは下がっていく。

 だが、気まずさを感じているのは総司だけでは無かった。


「……なにか用?」


 前方を歩く立花が首を僅かに動かし探るように尋ねる。総司はボソッと呟く。


「別に……俺もこっちだし」


「「……」」


 2人の間に再び流れる沈黙。それはこのまま暫く続くと思われたが――


 カツカツ! 


 突然革靴が地面を叩く音が響く。立花の歩行速度がみるみるうちに上がっていく。


「お、おい……」


 総司も歩くスピードを上げて立花を追いかける。


「なんで追いかけてくるの……ッ!」

「いや、ほら……なんつーか……」


 総司も正直、自分自身理由はよく分からなかった。本音を言うなら自分だって早くこの気まずい空気から脱したかった……が、このままここで彼女を逃がしてしまったら対立が徹底的になるような気がして嫌だったのだ。


 立花は総司の事をどう思っているかは知らない(多分、嫌っているのだろうが)しかし、総司は別に立花の事を苦手には思っていても嫌いでは無かったのだから。


「何かお話しをしよう!」

「何を?」


 彼女はようやく足を止めこちらを振り返ってくれた。


「いやほら趣味とか好きな食べ物とかさ……」

「……」


 怪訝な表情になる立花。流石にこの内容は無い。


「あ~……」


 頭をかきむしる総司。顔を上げ立花を見る。


「悪かったよ! あの時は俺が悪かった! 気分が悪くなるのは分かる! だけどあれはたまたま上手くいったからちょっと調子に乗ちゃっただけなんだ、許してくれ」


 総司の精一杯の謝罪、立花は睨みつける様に総司を見る。


「そう……貴方は”たまたま”〈ヴァルキュリア〉に飛び乗れて”たまたま”旋回中に正確にスラスター部分を貫いて”たまたま”自分は無傷で脱出したのかしら?」

「……ビギナーズラックだ」


 立花の指摘に総司は視線を逸らし返す。立花はため息をつき頭を押さえる。


「……それと貴方は一つ勘違いしているわ」

「勘違い?」

「そう……私が貴方を邪険(じゃけん)に扱っているのはそれが原因ではないわ」

「じゃあ……何?」


 精一杯頭を回し、原因を探す総司。


「貴方が何を考えているか分からないから私は怒っているの!」

「今はどうやったら立花と仲良くなれるか考えてるぞ?」


 あっけらかんと答える総司に立花は一瞬脱力したような表情を浮かべ、言葉を続ける。


「そう言う事じゃないから! ……貴方クラス戦で自分が何言ったか覚えてる?」

「え? なんか変な事言ったけ?」

「”ギルド入ってないし入るつもりもない”貴方はそう言ったわ」

「あ~……」


 (それか)と今更ながら総司は察する。きっと彼女は今の自分を見て矛盾しているのが許せないのだろう。立花は察しがついたらしい総司をさらに追求する。


「ギルドとか部活とか興味なさそうなフリして次の日には部活勧誘! あまつさえその相手が私の友人よ! 貴方を警戒する理由にそれで充分じゃない?」


 彼女の指摘は最もだったが、総司もまさか自分の正体がバレてゲーム部に入部しました。なんて言うわけにもいかず視線を逸らしながら返答する。


「まあ~心境の変化っていうか、価値観の変化っていうか……ほら、”男子三日合わざれば刮目(かつもく)してみよ”っていうじゃん?」

「まだ1日しか経ってないわよ……ッ!」

「あ、いやそうだけどさ」


 軽い感じで答える総司に立花はフーと一息着く。


「……最初は数合わせか何かで協力してるのかと思ったわ。でも今日の貴方を見ると積極的に活動に参加はしているし、楓ともいつの間にか仲良くなってるし……正直悪い人には見えなかった。だからこそ気になるの! 貴方は一体何を企んでいるの!?」


真剣に問いかける立花に総司はやや視線を逸らし、答えた。


「企むなんて人聞きの悪い……俺はゲーム部に盛り上がって、人数が増えて欲しいだけさ」


 俺が辞めるためにね。


「……」


 総司の答えに立花は納得していないのか、怪訝な表情を崩さず黙って総司を見つめる。張り詰めた空気が2人の間に流れ、吹き抜ける風の音のみが聞こえた。


 暫くしてようやく立花は口を開いく。


「貴方は私と話すと言ったけど、貴方は本当の事を話すつもりはないようね。時間の無駄だわ。さよなら」


 そう言って彼女は(きびす)を返しカツカツと坂を下っていく。総司はその背を見ながらため息をついた。


 (失敗だったなこりゃ……)


 その場でしばらく立ち止まる総司。立花の姿が小さくなってから再び歩き出した。


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