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VRMMOが日常となった世界で青春物語  作者: 金 銀太
VRMMOが日常となった世界で大切な仲間が出来るまで
12/50

11話:集うゲーム部 

「俺の”楓”とのデートはどうだった?」


 席に着くなり背を向けたまま俊が呟く。どうやらほんの10数分の間でコイツの中では井口は自分の女になったらしい。


「何もねーから! ……それよりも聞いて驚くなよ? 立花が部に入ってくれる事になった」

「マジ!?」


 高速で振り返る俊、総司は「マジ、マジ」と頷くと俊は心底驚いた表情を浮かべる。


「ていうか立花ってギルド入ってなかったのかよ……何処でも入れるぞ」

「……なんか色々あったらしいぜ。井口がいてくれたから入ってくれたっぽい」

「あ~なるほどね、あの2人仲良いもんな」


 俊と総司はチラリと井口と立花の席に目を向ける。2人は楽しそうに談笑しながら机を合わせ食事をとっていた。視線を戻す。


「元々同じギルドにいたらしいよ」

「ふ~ん……てか立花が入部するとかお前への殺意がいよいよMAXなんだが……なんなの? ハーレムなの?」

「んな良いもんじゃねーよ。立花なんてクラス戦以来、俺の事滅茶苦茶嫌ってるっぽいしな。早く部員集めて辞めてぇ……」

「贅沢な奴だなお前! もう諦めて腰を据えろ! ……ていうか総司さんよ」

「うん?」

「昼は?」

「……忘れてたわ」


 急いで購買に向かったころには既に殆どの物が売り切れていた。 



 ※


 

 帰りのホームルームが終わり。各々が放課後の活動を始める。


「清宮君! 部活行こ!」


 いつの間にか総司の席まで来ていた井口に話しかけられる、彼女の長い前髪から見え隠れする目は部活への期待なのか光り輝いていた。


「うん、了解」


 必要な教科書をサッと鞄の中に詰め込み立ち上がる。前に居た俊はチラリと総司を見ると少し笑って「部活頑張れよ、総司」と言いささっと帰っていった。


 (あいつもゲーム部入ればいいのに……井口もいるし)


 一応総司は俊をゲーム部に誘っていた。しかし俊は『今のギルドに恩があるから』と断った後に厳しい表情で『そもそも抜けようとしてる奴の誘いになんか乗らない』ときっぱり言い、総司の誘いは一蹴(いっしゅう)されてしまっていた。


 まあ、あいつの言ってることは正しいと思いつつ井口の方を見る。いつの間にか傍に立花も立っていた。相変わらず総司に向けられる視線は冷たかった。


「……じゃあ行こうか、部室は別棟の4階だから」


 井口と立花と共に教室を出る。部室がある別棟に向かうため連絡通路を歩いていると、井口がしきりに鞄の中を漁っているのに総司が気づいた。


「どうかしたの?」


 つい気になり総司が質問すると井口はやや焦り気味の表情を浮かべる。


「教室に携帯忘れちゃったみたい……」

「じゃあ取りに戻りましょうか」

「大丈夫! 一人で取りに戻るから2人は先行ってて」


 立花の提案をやんわりと断り。井口は少し小走り気味に教室に戻っていった。

 取り残される形でその場に残る総司と立花。


 (クッソ気まずいんですけど……)


 総司は無言の立花をチラリと見る。金の髪色に青い瞳と整った目鼻立ち……まるで人形の様な顔つきの少女がこれでもかというくらい不機嫌な顔をしていた。


「取り合えず先に行こうか」


 これ以上空気を悪くしないよう出来る限り穏やかに促すように言う。立花は返事もせず黙って歩き出した。

 その様子に内心ムッとしたが、立花が直前になって入部を取りやめるなんて事を言い出さないように僅かでも冷戦状態を解除したい総司は会話の糸口を探す。


「立花さんが入部してくれるなんて意外だったな~」


「……」


「凄い強いし頼もしいよ本当」


「……」


「あのアバターってどうしてドリ――槍装備にしたの? ……あ! 俺のアバターはというとね、銃と剣でこう、組み合わせて戦うみたいな?」


「……」


「あ~……」



(マジで心折れそう)



 徹頭徹尾スルーされズタズタに切り裂かれる総司のメンタル。

 総司はガクリと肩を落とし、立花の後ろをトボトボ付いていく。

 不意に彼女の足が止まり、こちらを振り返る。積極的に話しかけてきた総司を憐れんだのか、その目は少しだけ、同情的だった。


「私に気を遣わなくてもいいから」


 そう一言呟いた後、彼女はまた歩き始めた。総司はしょぼくれた感じで「……はい」と呟き、黙ってその後ろを付いていった。


 結局そのまま会話は無く別棟に到着。4階までの階段を登ろうとしたところ後ろから誰かが走る音が聞こえ、振り返ると息を切らせた井口がいた。


「追いついた~」


 少し髪がみだれ、額にはほんのりと汗が浮かんでいた。


「そんなに、急がなくてもいいのに」


 鞄から綺麗な刺繍(ししゅう)の入ったハンカチを取り出し、井口に手渡す立花。それに井口は「ありがとう」とお礼を言い、軽く額を拭う。


「だって初めての部活動だから! 皆と一緒に行きたいなって……」


 早く部活を辞めたがっている総司の目に井口の健気さは眩しすぎて、バツが悪い気持ちになる。

 井口は立花にハンカチを返すとさっと総司の隣に移り、耳打ちする。


「ユリカちゃんと仲良くなった?」

「……もしかして携帯忘れたって言うの嘘?」


 井口の策士っぷりに驚く総司。彼女は不敵に笑う。


「フフ……内緒。で、どうだった?」

「沢山喋ったよ」

「良かった~」


 胸をなでおろす井口。


 (俺だけね)


 総司は視線を逸らした。


 階段を登っていく。4階につき部室のある廊下の奥の方を見ると、ちょうど絵里先輩が部室を開けようとしてるのが見えた。


「絵里先輩~!」


 井口が声を掛けると、絵里先輩はこちらに気づき、駆け寄って来た。


「楓ちゃん! 総司! 本当に来てくれたんだね!」


 絵里先輩は満面の笑みを浮かべ、井口と総司に話しかける。その後立花に気づいたようで声を震わせながら尋ねる。


「そ、そちらのお方は……?」

「私の友達のユリカちゃんです! ゲーム部に誘ったら入部してくれることになりました!」


 井口はチラリと立花の方を向くと、立花は一歩前に出る。


「楓と同じ1年5組の立花優理香です。よろしくお願いします恵美先輩」


 絵里先輩は茫然とした表情を浮かべ井口の方に向く。


「……楓ちゃん、ゲーム部に入ってくれるの?」

「はい!」

「立花さんも……?」

「ええ、そうです」

「……」


 彼女は暫くその場でフリーズすると後ろに倒れた。


「ちょ、ちょっと大丈夫ですか!」


 咄嗟に回り込み受け止める総司。絵里先輩は目を覚ます。


「ここは……? 異世界?」

「廊下です」


 硬直する彼女を立て直す。段々と現実を受け止めてきたのか、彼女の表情は色を帯びていく。


「ほ、本当に……!? 2人とも入ってくれるの?」

「「はい」」

「ほ、本当の本当に!?」

「「はい」」

「あ、あああ……! あ”り”か”と”う”ぅ”ぅ”ぅ”」


 体を震わし泣きながら2人に抱き着く絵里先輩。


「た”の”し”い”ふ”か”つ”に”し”よ”う”ね”ぇ”ぇ”ぇ”」


 井口は優しく微笑んでいたが立花は少し引いてた。



 ※



「落ち着きました?」


 ようやく井口と立花から離れた絵里先輩に問いかける総司。


「お”ち”つ”い”た”あ”ぁ”ぁ”ぁ”」


 (そうかなぁ?)


 涙でぐしゃぐしゃになった顔を拭いながら答える絵里先輩。立花を見つめる。


「ね”え”? た”ち”は”な”さ”ん”」

「は、はい?」


 たじろぎながら答える立花。


「ゆ”り”か”ち”ゃ”ん”っ”て”よ”ん”て”い”い”?」

「ど、どうぞ……」

「あ”り”か”と”う”!!!」


 気の強い立花ですら絵里先輩の勢いにはタジタジになってしまうようだった。


 未だ落ち着いてない彼女を3人でなだめつつ部室に向かい、扉の前に立つ。


「こ”こ”ふ”し”つ”!」


 絵里先輩は怒ってる様な声で部屋を開ける。……中は相変わらずぐちゃぐちゃだった。


「「……」」


 沈黙する井口と立花。総司は(まあそうだよな)と思いつつ絵里先輩を見る。彼女の顔はいつの間にか涙が引っ込み、その代わりにみるみる内に冷や汗が浮かび始め、そのまま扉を閉めた。


「どうかしたんすか?」


 総司が言うなり、絵里先輩は呆然とする井口と立花を余所(よそ)に、総司の腕を掴みその場を離れ、顔を近づける。


「総司……想定外の事態だよ、部室があんなに散らかってるなんて」


「いや! 想定外じゃないですよ! 想定内ですよ! 忘れてたんですか!」


「すっかり……」


「『すっかり……』じゃないですよ!」


 総司に突っ込まれた絵里先輩は途端にあわあわしだし、


「どうしよう総司?」


 上目遣いで尋ねる。総司は苦い顔をし頭をかいた。


 (なんで俺に聞くんだよ……ああ、もう!)


 頭を押さえ考える――場当たり的だが考えが纏まり、絵里先輩と顔を合わせる。


「取り合えず今日は部室の掃除っすね、活動出来る最低限の場所を確保してからじゃないと。あの2人には今日は帰ってもらって――」


「掃除! 良いアイディアだねそれ!」


 指を鳴らし口を挟む絵里先輩。総司はため息をつくように言う。


「良いも悪いも当然でしょう……」

「よ~し! ゲーム部の最初の活動はそれにしよう! 楓ちゃん! 立花さん~」


 彼女は総司の言葉を聞くと直ぐに井口と立花のもとに走り出した。


 (え!? ちょっと今日初めて来た人に部室の掃除やらせんの!?)


 静止する暇もなく、絵里先輩は井口と立花に説明しだし――説明を終える。


「というわけで今日は部室の掃除をしよう!」


 (……せっかく入部してくれたのに)


 初っ端から活動内容と異なる活動を宣言する絵里先輩を視界に入れながら、総司は申し訳ない気持ちを抱きつつ3人と合流する。だが、意外にも反応自体は悪くなかった。


「いいですね! それ!」

「私は楓がそれでいいのならいいですよ」


 井口は笑みを浮かべ、立花は頷く。それを見た絵里先輩は目を輝かせる。


「よ~し! 皆で頑張ろう! おー!」


 彼女が腕を上げると井口がそれに「おー!」と同調し、それに立花が続き、総司がその後に続いた。


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