おじさんパート2観察
これは私が今までに感じたことのない感情だった
家族や友人といったものは私にはいない。
いや、〝人として壊れている″私にはそもそも必要ですらない。
生きていけるのであれば最低限の関わりで何の問題もない。
この数十年ずっとそういう生活を送っていたというのに・・・
物事には理由がある。
一ヶ所に長く留まっていたから・・
一人でいる時間が長かったから・・
この少年がどことなく似ていたから・・
看病などと人のマネごとをしたから・・
・・・・
無駄な考えはやめよう。限がない。
確かに芽生えたこの感情。少し戸惑いはするが悪くはないと思えてしまう。
まさか、他者と関わる事で私の中に変化が起こるとは思いもしなかった。
良いにしろ悪いにしろ停滞していた何かが少しづつ動いていく。
私が招き入れた事でこうなる事が運命だったのかもしれない。
今となってはあの時の行動が必然に思えてしまう。
「神に感謝するべきは少年ではなく、私のほうなのかもしれない」
そうつぶやきながら頭をなでているとまるで魔法が解けたかのようにゆっくりと目をさました。
私から「おはよう」とごく自然にそう言葉がでていた。
まだ虚ろな目をして焦点があっていない
「今は何もせずゆっくりと休んでいなさい・・」
その言葉が聞こえているかどうかはわからなかった。しかし、少年は再び瞼を閉じ深い眠りへと落ちて行った。
これからどういう方向へ運命が進むかなんてものはわかりはしない。
しかし、確かに待っている『これから』をどう過ごすか・・・
さて、いろいろ物入りになるであろう準備をしておかねば。