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亡霊  作者: 冬影
5/6

5.白ワイン

あなたが初めてだったのよ

話を聞こうなんて言ってくれたのは

だからちょっとだけ期待していたの

もしかしたら、信じてくれたりするのかしらって

私らしく無かったわ


どうしてそんな目をするのかしら

私が嘘を吐いていると思っているの?

あなたの同情を引くために?

そうかもしれないわ、でもきっと、そうじゃないのよ

私は路地で生まれたの


外に行くなんてしなかったわ

子どもに石を投げられるもの

大人だったら、考えたくないわ

私にできることなんて何にもない

あそこで働く以外はね


あの人は私を見ていなかった

それは別に良かったの

でもあの男がやって来た

あの男はそうじゃなかった

あの男の好物は、私のような子どもだったもの


人から求められることが初めてだった

だから私は応えたの

何も知らない、分からないままに

それであの人は私を憎んだの

私の居場所は男の腕の中だけだった


あなたは知っているかしら?

子どももあそこで働いているのよ

私もそんな一人だったの

生きていくのに、それが一番楽だった

それにあそこは、暖かかったの


同じような子はたくさん居たわ

でもみんなどこかへいっちゃった

私はほら、ちょっとだけ可愛いから

そのおかげでチャンスがあったのよ

違うところに、行けるチャンスがね


運が良かったのよ

こうやってあなたとお話しできるくらいになるなんて

きっと神様が私のために取りなしてくれたのね

このまんまじゃ、あんまり可哀想だって

私、神様に感謝しているわ




……でもね、今でも時々思うのよ

あの時あそこにいた子どもたち、どこにいったのかしらって

あんなことをして、あんな目にあって

そのあと私みたいな幸運も無くて

それでも生きていくなんてできるのかしら

ねえ、あなたはどう思う?


やっぱりあなたは信じてくれないのね

別にいいわ、仕方が無いもの

そうね、あってはいけないことですものね

ごめんなさいね、これはただの作り話よ


ああどうしてこんなに美味しいのかしら

生きていて良かったと思えるわ

だからね、そう思えない人生なんて

知らなかったことにしてしまいたいの

今のあなたの顔みたいにね


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