VSベテラン 敗北
「はぁっ……はぁっ……はぁっ」
柊羽は息を荒くして開いたキャノピーの枠に手を掛けた。
「はぁっ……はぁ……」
隣にはF-2。編隊長だ。
作戦はよかった。
一機を追い詰めるのではなく、途中でそれぞれが入れ替わる。
だが。
視線を左奥に向ける。
そこには2機のイーグル。
高幡・金沢編隊には勝てなかった。
あの後、左に倒して、敵機の方向へ機首を振った。
ワンサークル・ファイト。
一度だけ、敵機の後ろに食いついた。
だが、それが最初で最後の優位だった。
思い出す。
巻き戻し。
柊羽は空へ。
思い出す。
再生。
そして、反芻。
目の前にはイーグルの並ぶノズル。
喰らい付いた!
エネルギィが足りない。アフター・バーナー・オン。
敵は双発だ。上方に離脱するはず──────……。
それが、間違いだった。
敵は、上方に離脱しなかった。
逆に、機体をひっくり返して大きくロールしながら降下した。
離す訳にはいかない勝機。
操縦桿を倒し、ラダーを蹴飛ばす。追随。
それは、罠だった。
罠に気づいていれば。
焦ってアフター・バーナーを焚かなければ。
アフター・バーナーの火焔が出ていないことに気づいていれば。
あとで考えれば解る。
その時にはわからなかった。
近付いた、その瞬間。
イーグルの上面、背中から。
パッと板状のスピード・ブレーキが立ち上がったかと思うと。
まるで拡大したようにイーグルの尾部が大きくなり、柊羽は追い越してしまった。
スパイラル・ダイブ。
典型的で、古典的で、崩しにくい罠。
臍を噛む。
隣の楓はステップを下りている。
デブリーフィングだ。
ワンサークル・ファイト……二機が一つの円を描くように回って戦う空中戦。巴戦とも
ノズル……ジェットエンジンの排気口。推力源。
双発……二機エンジンを搭載していること
ロール……横転
ラダー……機体の横滑り方向の操縦を担う舵。ペダルになっている
スピード・ブレーキ……エアブレーキとも。空気抵抗を発生させる。
スパイラル・ダイブ……旋回しながら降下する途中で一気に減速し、追尾してきた敵機をオーバー・シュートさせる技
デブリーフィング……飛行後打ち合わせ