image flight 1
プッシュ・オーバーでアンロード加速。ベクトルマーカーと機体軸を合わせる。
マイナスGを堪え、下へ。旋回した相手のHUDには何も見えていないはず。
レーダーはオフ。
テーブルの上の手を動かし、操縦をなぞる。
バーナー・オン。
一拍ついて、引き起こす。
機体が揺さぶられ、垂直に引き起こす。
相手のF-15のレンジはロックオンのために絞られているはず。
兵装をAIM-9Lに。
シーカーの音に耳を澄ます。
上の方を凝視。一瞬、ちらりと何か見えた。すぐにシーカーの音が鳴る。
IFFを確認して、コール、発射。少し前の一機が右にブレイク。
一機取り逃がした。隊長機に食らいつく。
背面(垂直上昇ではどちらが背面か分かったものではないが)にいれ、残った一機に逆落としに近づいていく。
サイドワインダーを発射。
やや遠かったため、外れた判定。相手は逆方向に逃げる。
無線だと聞こえるかもしれないので、主翼を振って合図。そのまま突っ切っていく。
隊長機がバレル・ロールに入る。
相手が切り返し、襲ってくる。相手はきっと、スーパーサーチ・モードなはず。
エア・ブレーキを展開。
後ろに相手が迫る。
適当にフェイント。
隊長機が撃墜。
目を開ける。これでいいはずだ。
この場合、兵装は何になるんだ?
AIM-9Lが二発、バルカン砲、AIM-7Mあたりだろうか。AIM-4やAIM-120などはそもそも内地の基地で訓練に使えるほど余裕がない。
そもそも、F-2で格闘戦をする、というのは余り褒められた行為ではない。
フェイズド・アレイレーダーで遠距離から脅威を排除するのが一番良い対処法で、格闘戦をするほど近づけば対地・対艦装備を放棄することになる。
F-15MJはやはり内地にはなかなか回ってこない。
そもそも、異機種編隊の組み合わせとしてF-15とF-2はミスマッチだ。あくまでF-2は要撃ができる攻撃機であって、純粋な戦闘機ではない。
どうするのがいいだろう………。
この小隊も、目的としているところはわかる。
小規模重要目標にF-15の護衛とF-2で侵入し、破壊。湾岸戦争ではF-117とF-15の組み合わせもあったらしいから、可能性は高い。夜間戦闘になるだろう。
夜間で低空戦闘なんて悪夢だ。しかも敵地。
もちろん、もし命令が下ればもっと別の隊に命令が下るだろう。
つまり、そうなったときにノウハウをフィードバックするのがこちらの仕事だろう。
それまでにお互いの特性を把握することが重要なのだ。
迎撃機は多分、Su-27かMig-29、あとそれぞれの発展型。海上を進むという手もあるが、イージスに追い回されることになる。
正直に言うと、その状況ではF-2では太刀打ちできない。
こちらは高度をあげられない。SAMに狙われるからだ。軍用機にとって一番脅威なのは敵戦闘機ではなくSAMだ。
F-2はミサイルを抱えているから殆ど戦闘機動は行えない。レーダーも改修されない限り使えない。
ラプターが使えればなあ………。
切実に思う。だがアメリカは機密の塊を売ってはくれないだろう。
米軍も進んで先制攻撃はしたくないだろう。トンキン湾の二の舞だ。
北が核を作り始めれば、こちらもそれに呼応せざるを得なくなる。広島も長崎も日本にあるのだ。
離陸すらも悟らせずに飛び立つ必要があるかもしれない。民間の空港か飛行場を封鎖して飛び立つのだ。
800mクラスの飛行場が割と一般的だから、その分燃料も積めずに余裕もなくなる。
こっちにフランカーがあればなどど考えるのはばかげているだろうか。フルバックがあればなおのこと良い。
プッシュ・オーバー……操縦桿を前に押し、-Gで降下すること。急激な機動でこれができる機体は意外と少ない。
アンロード加速……普通機体は機体の軸と運動ベクトルが一致しているときが一番抵抗が少ない。そのため、機首を下げ続け一致し続けるように降下すれば最も効率よく加速できる。これがそれ。
ベクトルマーカー……機体の運動軸を示すマーカー。これを地平線(水平線)に合わせれば機体は水平飛行(厳密にいえば降下だが、殆ど変わらない)し、機体軸マーカーに合わせればアンロード加速に入る。
マイナスG……内臓がフワッてする、あれ。高いところから飛び降りて感じるのは無重力で、-Gではない。
バーナー・オン……アフターバーナー・オン
シーカー……ミサイルの探知装置。サイドワインダーのはジージーという音らしい。
IFF……敵味方識別装置。
バレル・ロール……樽の内側をなぞるようにロール。水平飛行よりも距離が稼げる。
スーパーサーチ・モード……レーダーに入った敵機を片っ端からロックオンするモード。
AIM-7M……今現在、やや旧式のミサイル。命中させるためにはロックオンし続ける必要がある・
AIM-4……国産短距離ミサイル。高価。
AIM-120……アメリカ製中距離ミサイル。撃った後ロックオンし続ける必要がない。
F-15MJ……海外でのF-15J改修型の呼称。なんかかっこいいからこう読んでみた。
攻撃機……支援戦闘機ってのはつまり、攻撃機である。主翼は重量当たり最適な面積があって、それよりも大きいと継続格闘戦能力は失われていく。F-16は燃料他のため拡大されており、F-2ではもっと拡大されている。マルチロール機というのはこういうことである。
侵入……正式な手順を踏めば進入、非正規なら侵入である。
イージス……海上のMs.チート。潰すには多数の攻撃機で同時に総攻撃する必要がある。
SAM……地対空ミサイル。実はこれが一番怖い。
ラプター……空中のMs.チート。(レーダーで)見えない、(ドックファイトで)追えない、(強すぎて)落とせないという三重苦。落とすよりは地上にいるうちに叩きましょう。
トンキン湾……ベトナム戦争の発端
800mクラス……次に大きいのは1500mクラスがポピュラー。
フルバック……ソ連製複座長距離爆撃機。アヒルっぽい。