表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
4/6

第3話 悪夢

「なにやってんのよアンタ!」

「ご、ごめん。ボーッとしてた。大丈夫?怪我はない?」


 (多分)仲間の女に罵られながら、困った顔でこちらに手を伸ばししてきた男。その顔を見たとき、頭の奥がズキンと痛んだ。頭でも打ったのか?

 伸ばされた手には使い古されたグローブがはまっていた。不審に思って他の奴らを見ると、腰に斧をぶら下げていたり、ローブを着ていたり、女がズボンをはいていたりする。こいつら、冒険者ギルドの奴らか。多分チームを組んでいるのだろう。


 手を伸ばしてきた男は、紺色の髪で少し長め。茶色の目は柔和な印象を受ける。長身で手も大きい。それ外は何一つ特別なことはない、普通の人。だが、どこか引っかかる。何かが引っかかる。何かは分からないが、とにかく引っかかる。


 ズボンをはいた女は、髪が短く切られている。首の辺りまでしかない、桃色の髪はあちらこちらにはねている。鮮やかな朱色の目は大きく、強気な感じ。細身で手足が長く、スタイルがいい。一見男のようだが、手足が細く肩幅も狭いことから女と判断できる。


 ローブを着た女は、長くうねる亜麻色の髪に、切れ長の空色の目。とても高飛車なお嬢様の感じ。出てるとこ出てて引っ込んでるとこ引っ込んでる。決して自分のものと比べてはいない。私だって少しはあるのだから。たとえ、足元までますっぐに見えたとしても。


 斧を腰にぶら下げた男は、深緑の髪に黒の目。髪が短く、大柄で寡黙な印象がある。こんなにでかいヤツ見たことない。目が少々細く、こちらを見下しているようで、非常に不愉快だ。喧嘩売ってんのかこの野郎。


 男の手を借りて立ち上がり、軽くワンピースのスカートを叩く。


「大丈夫だ。これは私の不注意だった。すまない」

「いや、こちらがちゃんと周りを見なかったのが悪いのさ」

「それにこれも何かの縁ですわ。ケイン手伝いなさい」

「言われなくてもするよ」


 男はケインと言うらしい。ケインは紙袋からこぼれだした食材その他諸々を拾い始めた。ローブを着た女は見た目通りお嬢様口調だ。見た目を裏切らない言葉遣いでありがとう。


「あ、それは私がやるからいい」

「気にしなくていいんだよ。元々女の子にこれは重いのさ」


 ズボンをはいた女が止めた。それについては同感だ。だが、だからといって手伝ってもらう義理はない。こちらが謝って、それで立ち去ればいいだけの話だ。


「そうですのよ。ぶつかったのはワタクシたちの落ち度。気にしなくてもよろしいですわ」


 仲の良いチームのようだ。我々に任せろ的な空気が漂っている。ただ、これは流石に気が引ける。


「よいしょっと」


 ケインは私の落とした荷物を拾い集め、全て持ち上げた。これは慌てた。持ってくれるのは嬉しいが、全部持たせるのは私も人だ、良心が咎める。だが何だ、私が持つと顔が見えるか見えないかなのに、ケインが持つとかなり荷物が小さく見え、なお軽く見える。まあいいか、と思いはするが重い物は重い。見ず知らずの人にそんなものを持たせてたまるか。


「あ~、これは重いな」


 軽そうに言うな―――って違う。


「だから私が持つ。大丈夫だ、もう転ばない」

「でもねぇ、あんなにフラフラしてるの見た後で言われても説得力無いよ」

「う、まあ認めるが、全部もってもらう必要は無い」

「案外往生際が悪いねぇ。いーのよ、力仕事はケインに任せておけば」

「そういうこと。さ、案内して」

「……分かった」


 こいつらを案内することになったようだ。さあLet's Go!―――これも違う。

 敗北した。おかしい、いつもの私なら奪い返してでも自分で持つのに。多分、この頭痛のせいだ。ずきずきと痛みを訴えてくる頭は、だんだん強さを増している。

 それにしても、ケインとか言うヤツ、どこかで見たような気がする。

 だが、全く覚えていない。何処で見たのかとか、何も覚えていない。これでも記憶力はいい方だと思っていたので、少しショックだ。奴らを背に考える。暗殺者にとって背中を向けるのはなかなか勇気がいるが、奴らは冒険者だから関係ないだろう。

 私を殺そうとしないかぎり。


「ねぇねぇ、アンタなんて名前?」


 後ろからズボンをはいた女が言った。特に親しくも無い人に「アンタ」はちょっとどうかと思う。

 いつもだったら無視しているところだが、こちらは手伝ってもらっている身、蔑ろに扱うべきではない。私は前を向いたまま答えた。


「リタだ」

「ふーん、リタちゃんね。アタシはフィアーナって言うんだ。フィアって呼んで?」

「フィア?」

「そうそう」

「二人だけ楽しそうに……狡いですわ。わたくし、ルリアンナと申します。ルリアとお呼びになって」


 こいつ目がおかしいのだろうか。先ほどの会話の何処に楽しそうな部分があるんだ。私は6文字しか喋ってなかったぞ。私が少ししか喋らなかったのは、ただ単に頭が痛かったからである。よし、今日は店に戻ったら拠点に帰ろう。

 どっか引っかかる男が言う。


「俺はケイン」


 何故だろう。こいつの名前、違う気がする。確か、「ケイン」とは一字もあってない名前だったような気がする。

 よく分からないので要注意人物としておこう。


「んで、一言も喋ってないのがリットレーン」

「………………」


 何か喋れよ。紹介されたんだから。喋らなくても一礼くらいでもすればいいのに。


 この会話では一切目を合わせていないため、溜息をしても気付かれないと思い、息を吸い込んだ。その時、背筋に悪寒が走る。一瞬だけ、強い視線を感じた。まるで、体が射貫かれるような、それだけで人が殺せるような、強い視線。つい条件反射で後ろを振り向く。が、そこには冒険者たちしかいなかった。奴らは不思議そうに私を見る。


「どうしたの?」

「何でも無い」


 気のせい、なのか?私はためた息を思いっきり吐き出した。

 再び前を向いて歩き出したので気付かなかった。リットレーンとか言うヤツの細目が更に細められていたことに。


◇ ◇ ◇


「お帰り。あれ?買ってきたものは?」

「馬鹿野郎」

「ぎゃふん」


 笑顔で出迎えてくれやがったトルカがむかつくので、顔に一発拳をぶち込む。綺麗に決まった。あーすっきりした。頭痛も一緒に入れば良かったのに。残念だ。

 トルカは顔を押さえて蹲った。


「いたたた。もう、何するんだよ」

「注文が多すぎるんだよバーカ」

「おお、いつもより更にきついな」

「リタ、やれやれぇ!ナイフでぶすっと」

「黙れ貴様ら」

「「「「イエッサー」」」」


 少し睨んだだけで、ガタガタ震えてやがる同業者。大の大人が情けない。おまえら暗殺者のくせしてこの程度で震えるのか。


「あのー、これは何処に」

「向こうだ。おいトルカ、案内しろ」

「痛いって」


 ケインが困ったように訪ねてくるので、丁度蹲って蹴りやすかった店主トルカを蹴ってやった。一応店主だ。案内するのは当たり前だろう。私のだが周りが驚いたのはそのことではないらしい。


「「「「リタが男を連れてきた!?」」」」

「だ・ま・れ」


 お前らには見えないのか。ケインの後ろにいる女二人が。男も一人いるがな。


「なんだい、ここは。男ばっかでむさ苦しい」

「フィア、失礼ですわ。そんな正直に言っては」

「……ルリアもなかなか失礼だよ」


 その通り。ほら見ろ、酒を飲みまくっていた男らが一気に静まりかえった。フィアもルリアも美女だから、言われたことがショックだったのだろう。案外可愛いところがあるな。


「冒険者だ」

「てか、後ろの二人超美人!」

「うわすっげぇ!」

「おい!ねぇちゃんたち!」

「ちょっとこっち来てお酌を―――」

「……成敗」

「「「「アハ、ナニモキコエナイナ!」」」」


 私が馬鹿だった。何でこいつらを可愛いと思ってしまったのだろう、この昼間っから酒を飲みまくっているむさ苦しい男たちを。

 同情を返せ馬鹿。


「すまんな、こいつら馬鹿の集まりで……」

「おいおい、随分ないいようだな」

「俺たち大人をなめんじゃないぞ」

「お前ら……。この前、8+6を13って言ってたろ」

「「「「………………」」」」


 今度こそ静まりかえった馬鹿ども。ずっとそのままでいて欲しい。そのまま勘定をして帰って欲しい。


「いや~、ありがとね。リタがお世話になったようで」

「そんな事ありませんよ。女の子ですし、付き添いくらいつけてあげたらどうですか?」

「でもね、うちは万年人員不足で……」

「え、ここで働いている人はどのくらいいるんですか?」

「僕一人だよ。あと、たまにリタが手伝ってくれているだけかな」


 いつの間に仲良くなったんだ。その前にあの量をどうやってあの間に片付けたんだ。これがプロの実力か?でもトルカの本業は暗殺だ。どうなっているんだろう。


「たまに?リタはここの子じゃないんですか?」

「リタは小さい頃からの知り合いでね。たまに気遣って手伝ってくれるんだ」

「小さい頃から、ね……」


 本当のことは言えないため、あらかじめ決めてあった作り話を話す。これまで何度も見てきた光景だが、ケインは妙に含みのある言い方だ。なんだこいつ、気持ち悪い。


 そのとき、ふと目が合った。すっと細められたケインの柔らかい茶色の目が―――





 ……ウィー





 何かが聞こえた気がした。懐かしい、誰かの声。幼い、子供の、声が。

 一瞬、視界が白く染まった。そして見えたのは、笑顔で手を伸ばしてくる鳶色の髪の少年。


「ぐぅ……」


 いきなり頭痛が酷くなる。吐き気もめまいもし、頭を押さえて蹲った。

 うわ、凄い吐きそう。あれだ、頭に鉄の棒を刺されて、そのまま頭をぐちゃぐちゃにかき混ぜられるような。


「「リタちゃん!?」」

「おいリタ、どうした!」

「酔ったのか!?」

「馬鹿、リタは酒飲んでねえよ!」


 煩い。さっきまで静かにしていたのに、また騒がしくなった。

 ちらりとそちらのほうを見ると、むさ苦しい男どもがギャーギャー騒いでいる。むさ苦しいヤツは何をしてもむさ苦しい。


「大丈夫だ、安心しろ」

「絶対大丈夫じゃねぇだろ」

「顔色悪すぎだっての」

「家帰って寝てろ!」

「よし、リタ今日は帰っていいよ。今日はさっさと休んで」

「……ん」


 お言葉に甘えて帰ろう。元々帰るつもりだったし。

 冒険者がいるので地下通路は使えない。非常に面倒くさいが、外から帰らなければ。


 私は店の扉を開け、賑わい始めた道を進んだ。


◇ ◇ ◇


 拠点につくまでに、頭痛はかなり収まったようだ。だが、入れ替わるように眠気がやってきた。


 古くさい屋敷の扉を開ける。無駄に広い玄関ロビーには、5つの机とそれぞれ4つ椅子が置いてあり、

そこに二人座っていた。

 一人は目が随分と虚ろで、精神をやられているのがよく分かる。まだ若い女だった。女にはこういう傾向が出やすい。勇気がなく、人を殺すことも、死ぬことも出来ない。馬鹿な生き物だ。ふわふわとした栗色の髪と全く光を映さない黒い目が、何故かマッチして見えた。

 もう一人は机に頭を伏せ、寝ているようだった。一歩足を踏み入れると、ぱっと頭が上がり、爛々と妖しい光をともした黄色い目がこちらを向く。が、私だと分かると直ぐにその光は収まった。そして聞き慣れた声が響く。


「お帰り。どうした、随分早いじゃないか」

「スモークさん?何でいるんだ?昨日出たばかりだったはず」


 スモークさんだった。今回の仕事場はここから馬車で1,2日かかるはずだ。昨日の今日で帰れるはずがない。


「おお、実は行きがけに依頼主が粛清されたと噂を聞いてな。巻き込まれたくなくて、逃げてきた。まったく、俺が行くまで持っていて欲しいよ。成功報酬ゼロじゃないか」


 うんざりした顔でそう言い放つ姿は、ただの一般市民にしか見えない。

 そいつはいったい何をしていたのか。17年前にあった腐った貴族の大粛清の時に、粛清されなかっただけ実力はあったのだろうが、ばれては元も子もない。


「大丈夫か?顔色が悪いぞ」

「心配せずとも寝れば直る」

「そうか、気をつけろよ」

「分かってる」


 古く、上るたびにぎしぎしと鳴る階段を上がりきれば、そこそこしっかりした廊下になる。そこを右に曲がり、四番目の部屋が私の部屋になる。ちなみに隣はサトの部屋だ。教育係だからな、当たり前だろう。

 サトの部屋を通り過ぎたとき、扉が開いた。顔を出したのはもちろんサトで(中に女がいたら思いっきり殴ってやるのもいいだろう)、その手には腕輪型の魔具が握られていた。いつも通り、少し眠そうな半眼の瞼を少し上げた気がした。


「リタ、ちょっと」

「何だ」

「これの調子が悪いようでな。……直せるか?」


 サトの持つ魔具は、前に私が作り、試作品としてやったものだった。まだ使っていたのか。

 魔具を受け取り、それを眺める。まだ未熟な頃に作っただけあって、デザインもごついし、裏にある魔術式も雑で無駄が多い。今までこんなものを着けさせていたのか。少し恥ずかしい。

 魔術式を見ると、傷が付き掠れている。これでは調子が悪いのは当たり前だ。


「直せるが、新しいものに替えたほうがだろうな。これはもう古いから」

「げ……」


 「オーダーメイドは高いんだよなぁ」とか言ってるサト(←こいつ買う気か?)に、私は言った。


「私が作る。安心しろ、金はとらん」

「マジか、さすが“銀”。魔力を使うか」

「それ以外の方法があるか?」

「ないだろうな」


 納得したような顔をするサト。その顔に満足して私はサトに背を向けて足を進めた。


「今日は眠いからもう寝る。明日渡すから安心しろ」

「ん、よろしくな」


 扉を閉める音がする。部屋の中に入ったのだろう。私も、自分の部屋に入った。ガチャリと鍵を閉めれば、心だけの戸締りが完了する。暗殺者としてこれは複雑な心境である。


 ベットに入り込めば、自然と瞼が下りてくる。どんだけ眠かったんだ、私。てか、まだ昼前だぞ?昨日そんなに寝てなかったっけ?


 だが眠いものは仕方ない。よし、寝よう。


◇ ◇ ◇


「ウィー!こっちこっち!」


 またあの夢だ。仲のいい子供二人が遊んでいる。今日は深い森の中を進んでいく。私はその後を追った。


 いつも通りの夢だった。

 だが、何かがおかしい。今日はあの親がいないが、それよりも何かがおかしい。


 日の光が少ししか届かない、暗い森。何か、嫌な予感がする。


 二人で手をつなぎ、ギアと呼ばれる男の子が、ウィーと呼ばれる女の子の手を引っ張っている。


「ちょ、ギア!待ってよ―――キャン!」


 ウィーが転んだ。盛大に。さっきまで笑顔だった顔が一気に痛みで歪み、銀色の目から涙があふれ出した。同時に泣き声があたりに響き渡る。よく見ると真っ白な膝から血が滲み出ている。


「ウィ、ウィー!大丈夫!?えっと、えっと、どこか痛いの?」


 膝だって。みりゃ分かるだろ。


「ひざぁ……」

「よし、膝だね。俺がやる!」


 ギアが何かを呟いたと思ったら、膝にあった傷は消えていた。その年で魔法を使うか。やるな。


「ヒック、うっく」

「ごめんね、歩いていこ?ね?」

「……うん」


 結局万円嫉妬したほうがいい?


 ゆっくり歩きだした二人の先にある、暗い森。

 ふと周りを見渡すと、四方八方を光の差さない木々に囲まれていた。

 先ほどまで見ていた風景なのに、本能が危険信号を出している。

 急に、殺気にあてられたかのように体が全く動かなくなった。指先が震えて、まるで殺される前の貴族のようだ。


 そうこうしているうちに二人はどんどん奥へと行ってしまう。


「っ行くな!」


 ようやく絞り出せた声は細く、二人には届かない。


 そして森の闇が二人を取り込み始めた。

 体が、動いた。


 あの先に行かせてはだめだ。私はこの先で起こることを知っている。


 思った通り、木の陰から現れた人間たちに二人は捕まった。


 行かせては駄目だ。止めなくては。


 実験台にさせられる。

 魔力を使った実験をさせられる。


脳内でフラッシュバックされた光景は、夢ではなく現実だという確証が私にはあった。だって、これは私の記憶だから。


 泣き叫ぶ傷だらけのギア。

 それを見せまいと阻む数多の手。

 抵抗する細い小さい腕。


 奇妙な光を放つ数々の大きな器具。


 白く薄い上着のようなものを着た、不気味な笑みを浮かべる一人の男。

 気持ち悪いほどに興奮してこちらを見る数人の人間。


 崩れかけた暗い建物。

 粉塵に混じって聞こえる声。


「ウィリアナ!」


 あの声は、誰だったか。



 私は手を伸ばした。闇に飲み込まれそうな、小さい手に。

 ()()()()()()に。


 もう少しで手を掴める―――





「………っは」



 意識が現実に引き戻された。

 カーテンの閉めていない窓を見ると、外はもう暗くなっていて、空が曇り始めていた。


「何だったんだ……」


 心臓が煩いくらいに鳴り響き、体が震える。全身から嫌な汗が溢れていた。



 私は何を見ていたのだろう。


 今は何も思い出せなかった。


 分かるのは、思い出さなければならないということ。

 だが、何も思い出せない。


 早く思い出さなければ。


「おい、リタ、起きてるか?」


 扉からサトの声が入ってきた。少し焦っているように聞こえる。その考えを肯定するように、扉が何度もノックされる。


「ああ、起きてる。」

「良かった、開けてくれ」

「分かった。」


 扉まで行き、鍵を開ける。扉を開くと、そこには険しい顔のサトがいた。こんな顔、始めて見た。


「どうした。眉間にしわが寄ってるぞ」

「しっ、静かにしろ」

「……だからどうしたと聞いている」


 静かな声で聞いた。ふざけているわけではないと、本能で察する。サトの体からしみ出している雰囲気(加齢臭ではない)からただ事ではないと気付く。


「リタ、速く逃げるんだ」

「……は?」

「ここにいたら殺される。だから速く逃げるんだ」

「ちゃんと説明しろ」

「……冒険者だ」

「冒険者?」


 と言われると、今日来ていたあいつらを思い浮かべるが…。


「ここが暗殺者の拠点だって気付かれた。暗殺者殲滅の依頼を受けた冒険者が来たんだ!」



 暗殺者の…………殲滅?


 思わず聞き返そうとしたが、玄関の方から聞こえてきた声に言葉を飲み込んだ。


 ああもう。

 あいつ等なのか。

 あいつ等がそうだったのか。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ