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プロローグ

 以前投稿していたものを改稿したものです。

 私は今、とある家の二階にいる。ついでに言えば不法侵入だ。

 今回の標的はかなり恨まれているらしい。二階から見るに当たりよく見える。人がひしめき合っている商店街に、標的を中心にした半径一メートルの空間が出来ている。遠くから見れば賑わう商店街にぽっかり穴が開いているように見えるだろう。これほど狙いやすいと逆に同情してしまう。まあ、どちらにせよ、殺すことには変わりない。

 目を細めて標的を見定めると、手のひらにナイフを出現させる。空気抵抗を少なくするために平べったいデザインで、より攻撃力を高くするために重い材質で出来ている。狙いを定め、振り下ろすようにしてナイフを投げる。そして想像通り、まっすぐに標的の後頭部に刺さる。後頭部から血が勢いよく噴き出し、後ろを歩いていた女性に血がもろにかかる←ごめん。女性は悲鳴を上げ、まわりの人は悲鳴を聞きようやく何が起こったかを理解し、騒ぎの波が徐々に広まり、商店街はパニックになる。さっきまで狙っていた人だったモノは、頭と口から大量の血を吐き出しながら死んでいた。

 瞬殺。一発ケーオー。はいおしまい。今日の仕事終了。依頼完了。いつでも帰ってよし。


 帰ろうとすると後ろからいきなり人の気配がした。足音を立てず、静かにこちらに歩いてきている。

 この家の者ではないことは明らかだ。この部屋に入ってきたことすら分からなかった。相手はかなりのやり手だろう。私は勢いよく後ろを振り返っった。

 そしてその相手を見た瞬間ナイフを投げた私をどうか責めないでほしい。

 理由としては、警戒したのが知った顔で私が馬鹿だったと思ったことと、顔がにやにやしていたのが気に障ったこと。


「っぶねぇな」


 私が投げたナイフをすんでの所でかわしたこいつ。私の教育係、サト。人懐っこそうな顔をしていながら、こいつも私の同業者で教育係。そして不法侵入者。私が言える立場ではないがな。投げたナイフは壁に当たる前にもちろん消した。


「リ~タ~。危ねぇから飛ばすなって何度も言ったろ?」

「知らんな」

「言うねえ。反抗期娘」


 歳は世間的に思春期と呼ばれる歳だが。それとむかつくは違う。


「うるさい。投げるぞ」


 今度は片手3三本。両手あわせて6本のナイフを出す。殺気と合わせてどうぞ。


「お前がするとホントに殺されそう」


 サトが少しうんざりした顔で言う。少しむかつく←あれ、私反抗期?。


「で、終わったのか?」

「もちろん。お前の教育係だからな。失敗しちゃいられねえよ」

「そうか。では帰るぞ」


 今日は帰っても何もすることがないが、最近寝る時間が少ない。暗殺は主に夜の実行が多い=寝る時間が少ない。つまりのところ、寝るに限る。

 帰ったら寝よう。

 そう思って私は気配を消して二階から飛び降りた。決して自殺ではない。ちなみにナイフは消してある。



 私は暗殺者。今年で15になる。始めて人を殺したのは9,10くらいだから、もう5,6年人を殺し続けてきた。

 自殺したいと思ったこともいくつかあったような気がする。だがそれさえ許されないのが暗殺者。自分が殺されるまで死ぬことが許されない。人を何人も殺してきた。もう人を殺すのに何の抵抗も感じない。最初は泣いていた気がする。人を殺すのは嫌だと、言っていた気がする。

 サトにはあのような態度だが、これでも感謝している。あれもサトが避けられるくらいの速さで投げた。奴がいたからこそ私は生きている。そして、最強となった。暗殺者としての最強だからまったく嬉しくない。しかもなりたくてなったわけでもない。ただ淡々と仕事をしていた。それだけ。この世はどうかしてると思う。私はこの世界に期待しないことにした。期待したところで特に何も変わることはない。叶わぬ夢を見るよりは、現実で生きることを選ぶ。それに暗殺者には男女関係ない。捕まれば殺されるし、依頼を受ければ人を殺す。人を殺さなければ、殺される。夢なんて見てる余裕なんて無い。生きたいのだったら人を殺せ。殺せなかったら死ぬ。

 だけれども、自分自身を女と強調する群青色の長い髪。邪魔だと思いながら切る気にはなれない。昔そう言ったとき、誰かに止められたような気がする。誰だったかは覚えていない。私はいわゆる記憶喪失と呼ばれるものだ。7歳くらいまでの記憶が無い。記憶がなくなるくらいのショックをどこかで受けたのだろうか。もうそれさえも分からない。それに今更記憶が戻ったところで迷惑以外の何物でも無い。


 おもしろくない世界。期待したところで何も起きやしない世界。変わることのないつまらない日々を繰り返すこの世界。





 だが、


 だが、あの幸せな夢が現実だとしたら、期待しても良いだろう。


 あの幸せな日々が現実になるのであれば、この世界を見直すだろう。


 あの夢はただの妄想に過ぎないと分かっていながらも、願ってしまう。


 柄でもないことをつい、願ってしまう。



 普通で良い。平凡で良い。それで良いから笑っていたい。



 無表情の代名詞と歌われる私には絶対に出来ないことだろうけど。

 暗殺者になった時点で、もうすでに普通なんて無理だろうけど。

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