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黄昏のエッダ  作者: 羽月
終末
99/104

干渉

 神と呼ばれる種族を受け入れるには、地球は汚れ、傷み過ぎていた。

 ソウシは、ヒト族の排除と、環境の改善を同時に行う方法を思いついた。

 管理プログラム達のバックアップを初期化し、ヒト族をはじめとする生命の保護に関するデータを書き換え、ヒトを襲わせて自然を復活させるよう働かせればよい、と。

 それには、中枢プログラムにアクセスする必要があった。

 ソウシは、覇天を手に入れようと、清羅に接触し、刀を渡すように迫った。が、清羅は、自らに覇天の力を使い、神の申し出を拒否。

 ソウシは次に、清羅の守護する谷城の一族に入り込んだ。

 当主となった妻に、清羅を呼び出すように頼んだが、彼女は、余程困った時でなければ呼び出すのは申し訳ない、と言って聞き入れない。妻を説得するのは諦め、自らの血を継ぐ子孫に、確実に覇天が渡るようにするため、自らの血族以外の谷城の血を引く者たちを様々な方法で殺害していった。

 だが、ただ一人生まれた息子は、妻が存命中、まだ当主を引き受ける前に病死してしまった。裏で手を引き、ただ一人残された最後の血族である孫にあたる智昭を手に入れ、その母親、息子の嫁であった女性を追い出した。

 ソウシは妻から証を奪い、無理やり孫を当主に仕立てようとしたが、さらに清羅の怒りを買って拒否され、証を取り上げられた。

 その後、霜司の孫で、ロキの父親、智昭は野球で目覚ましい才能を見せ、活躍し始めた。


「余談だが、彼の一生をシュミレーションしたよ。

 彼はあのままであれば、世界的なベースボールプレイヤーになり、子供たちに希望を与える存在になっていたはずだった。

 それを、この者は苛立ち紛れに踏みにじった」


 智昭は、神に愛されるべき、美しい精神を持った青年に成長していた。

 妻を愛し、息子を愛し、やがて、野球を教え、大事に育てていくはずだった。

 しかし、智昭は、霜司に操られ、際限なくつまらぬことに金を使い、先祖代々守ってきた山を、土地を手放した。

 谷城の一族が管理し、守ってきた土地は、ヒトの居住区になった事で自然破壊が劇的に進んでしまい、結果、清羅は力を弱めた。それだけではない。操られた智昭がふと我に返ると、妻と息子に暴力を振るってしまった後。

 智昭は、自分がこの地にいては、全てを傷付けてしまう、と、何度も土地を離れようとしたが、ソウシに連れ戻されるという事を繰り返した。ソウシは、ただ、憂さ晴らしのために、ロキと母親を軟禁し、神の力を使って近隣の者の視界から隠した。


「本当は、禁止されている事だったのだが、私はどうしても見過ごす事ができず、君の担任だった青年を操り、谷城の一族から君を切り離して、その男が近づけないようにしたんだ」


 ロキは、流れる涙を手の甲でぐっと拭いて、


「そんな事だろうと思ったよ」


 と言った。


「君は、気付いていたみたいだったね」


「最初に、おかしいと思ったのは、レヴィが、俺しかヒトと会った事はない、って言った時だ。

 そんな風に言えば、大槻さんとかは、いい気はしない。

 レヴィだったら、わかっていてわざわざそんな事は言わないはず。

 はじめは、神の遺伝子の事かと思ったけれど、ジェーナホルダーとかっていうのとも、なんか違うっぽい。

 どういう意味か聞いても、ちゃんと答えない。レヴィが俺の質問をはぐらかす事なんて、それ以外ではなかった。

 答えないんじゃなくて、答えられないんだと思った。

 レヴィにとって、大槻さんたちと、俺と、何か、決定的に違う部分がある。

 それって、なんだろう、って」


「そう、それが、この男の、いくつかある誤算の一つだった」


 ソウシが、高城をぎろりと見る。


「この男は、EARTHをよくわかっていない。

 きちんと向き合おうとしてきた者だったら、普通に知っているはずの仕様でさえ」

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