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黄昏のエッダ  作者: 羽月
終末
97/104

遊戯

 プラネット――使用目的の限られた惑星を、ゲーム運営会社が借り受け、彼らとよく似た、ヒト型の種族を繁栄させ、指導し、文明を発展させ、街を、国を作らせる。

 基本的には、専用端末を通して啓示やアイテムを与え、発展していく様子や、人々の生活を覗き見て楽しみ、時折、観光を兼ねてこの地を訪れる。

 自らの細胞を元に分身を作り、仮想種族に紛れさせて生活させるもよし、神として種族にあがめられる生活を送るもよし、気に入ったヒトを応援し、加護を与えて能力を高め、英雄として育てていくもよし。

 元々、遺伝子情報は酷似させて作った種族、分身とヒトの間に、子供を創る事も可能。ヒトに眷属を与え、共に冒険し、運営の設定したイベントをクリアしていく。

 本物の惑星を丸ごと使った、リアルタイプのシュミレーションゲーム。


「ちょっと待ってください、それって」


「あなた方は、我々が、仮想世界のキャラクターとして繁栄させた、ヒト族の末裔です」


 薗田の言葉に、神が寂しげな目で淡々と答える。


「EARTHは、プラネットシリーズの中でも、特に人気を博しました。

 ブームの絶頂期には、惑星中に様々な運営会社が参入し、各地で特色ある文明を築いていきました」


「それじゃ、神話、とかは」


「各社が文明発展のための礎として作り上げたシナリオです。

 我々は、プラネットのプレイヤーとして、神話に登場する神を名乗り、ヒトと交流をしたり、手助けをしたりしてきました」


「そんな」


「あなた方にとっては、不快な話でしょう。

 けれど、わが種族は、あなた方、ヒトを羨ましく思い、守護し、愛してきた。

 我々は、老いる事も、死す事も、子孫を持つ事も放棄した種族です。

 私たちには、限りある命を懸命に生き、子供を産み、慈しみ、必死に守りながら育てる様は、眩しくも愛おしかった。

 本来、生きるという事は、こういう事なのだと。

 儚くも輝かしいものなのだと。

 お恥ずかしい話ですが、一度得た文明を手放す勇気も持てず、我々のほとんどは、そうして適度な距離を保ちつつ、あなた方の発展を見守ってきた」


「けど、結局、飽きて捨てたんだろう。儂は、それを拾ってやっただけだ」


 ソウシの投げやりな言葉に、高城が表情を厳しくして睨みつけ、微かにため息を吐き、大槻達に向き直る。


「ブームが絶頂期を迎え、多数の者がこの星に関心を持ち始めると、その中に一部、ひどい迷惑プレイヤーが現れ始めました」


 規制やルールを無視し、傍若無人に振る舞い、面白半分に疫病を蔓延させ、魔獣を放ち、悲惨な戦争を引き起こし、国土や文明を破壊する。

 運営の目を盗み、「神隠し」などといって人をさらったり、人類にいけにえと称して子供やうら若き娘を差し出させ、残虐な扱いをする。

 運営が罰則を与えても結局、イタチごっこ。当然、善良なプレイヤーの動揺と落胆は大きかった。大事に育ててきた国やヒトが、自らと同じ種族の者に踏みにじられ、破壊され、苦しんでいる。

 EARTHを思う気持ちが強いほど、それはひどいストレスになっていき、善良なプレイヤーは、次々とこの地を離れ始めた。

 それでも、弱きヒト族を圧倒的な力で弄び、蹂躙する者が後を絶たない。善良なプレイヤーは減少を続け、残ったのは、迷惑プレイヤーばかり。

 苦渋の選択として、運営会社は、全ての一般ユーザーのアクセス禁止を決定、撤退を余儀なくされた。


「最大手だったアトランティス社とムー社の撤退を機に、EARTHの一般ユーザーはこの惑星を去りました。

 が、ゲームの運営会社が撤退した後も、この星は、新規惑星開発管理部が管理と監視を続けて来ました。

 私は、その部署の職員を務めています。

 この星で起こる自然現象、風が吹く事も、海流のメカニズムも、マグマの活動も、通常、すべて人工知能を備えたプロクラムで管理しています。

 あなた方が現在、ヴォルケーノ、イフリートなどと呼ぶ種族の一部です。

 彼らは秩序とバランスを保ち、この星のすべての生命体を安全に維持するために存在しています。

 その一部に、エラーと、不正アクセスの痕跡が認められ、調査にあたっていました」


 そういって言葉を途切り、意味ありげに霜司をちらりと見ると、当の本人はその視線に気づき、おろおろと俯く。

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