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黄昏のエッダ  作者: 羽月
終末
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神星

 全員の視線が声の主に集まる。見た目は日本人で、少し勝ち気そうな、二十代半ばくらいの青年が、輝く雲に乗っている。


「え、え、ちょ、高城先生?」


 焦って思わず身を乗り出すロキの傍らで、エンとレヴィが居住まいを正し、恭しく頭を下げた。決して、強制され、捻じ伏せられるというのでもなく、尊敬と畏怖からの自然な仕草だった。彼ら以外の妖魔たちが、すう、と姿を消していく。


「本当のたかぎせんせいは別にいらっしゃるのだが、一時、この姿を借りていたから、ここでの仮の姿、ということで」


 雲に乗った青年は、ロキににこりと微笑みかけ、すぐに、キッと、霜司を睨みつけた。霜司は気まずそうにおろおろと視線を逸らす。

 徐々に霧が晴れるように、空間が元の裏山に戻っていく。


「ロキ!」


「大槻さん。薗田さん、も」


 木立の中、大槻と薗田が駆け寄ってくる。気付けば、眷属たちの姿は見えない。


「しばらく前に、世界各地に現れた妖魔たちがいきなり消えて。

 噴火も、突風が原因の停電もおさまったから、薗田君にもここに来てもらっていたんだ」


「無事だったんだね、よかった……!」


 大槻と薗田の言葉にロキはほっとして、空中に視線を移した。


「あの、あなたは? 高城先生じゃないんでしょ? あいつら、は?」


 雲に乗った青年は、不貞腐れたような霜司の腕をつかみ、彼らの元へ降りてきた。


「いってえな、何すんだよ。

 運営がユーザーにこんな事していいと思っているのか?」


 憮然とした様子の霜司は、勢いよく腕を振り払い、ぷい、とそっぽを向く。

 大槻が進み出て、


「あなたは、一体。説明してもらえますか?」


 と言うと、青年は小さく頷いた。


「私の本当の名は、ここではきちんと発音できません。

 失礼ですが、便宜上、高城と名乗らせていただきます。

 ロキ君の眷属たちは、少し違う空間で休んでもらっているだけだから、安心して欲しい。

 少し長くなりますが、最初から、全てお話します」


 高城と名乗った青年は、この星に住む人類が神と呼ぶ一族の者で、彼の語った真実は、大槻たちにとって驚愕の内容だった。


 こことは別な宇宙に、高度な文明を持った惑星がある。神と呼ばれる一族が生まれ、繁栄してきた星。

 彼らはその文明の高さゆえ、死すらも退ける事に成功した。

 やがて、彼らは繁殖する事も稀になった。が、死なぬ以上、人口は減らない。徐々に増え続ける。

 他の宇宙で、比較的安定した恒星を見繕い、星系を作り、自らの星と同じ条件の惑星を作って移住するようになった。この太陽系も、地球も、そうして彼らの手によって作られた。

 生命の元となる物質などを配置した後、基本的には自然に任せて繁殖させ、進化や自然環境を僅かずつ管理して見守るのだという。


「移住ができる惑星の環境条件は、とても厳しいものです。

 この惑星は、基準よりほんの少し平均気温が高く、酸素の濃度が高かった。

 移住不可の判定が下った惑星は、主に農場や、通信仲介基地、飛行移動時の連絡地などとして利用される事になります」


 この惑星の生産品は、平たく言うと、不味かった、らしい。

 恐竜と呼ばれる大型爬虫類も、シダ植物も、食品としては見た目も悪く、固く、大味で、彼らの口には合わなかった。

 そうなると、せっかく莫大なコストをかけて作った惑星も、使い道は限られる。さらにコストをかけて地盤を改良し、管理し、新たな生き物を繁殖させるか、観光地や遊興施設として発展させるか。


「その当時、我らの惑星では、プラネットというシュミレーションゲームが、一大ブームの兆しを見せていました」


「プラネット?」


 大槻の問いに、高城が頷く。

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