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黄昏のエッダ  作者: 羽月
イフリート
9/104

因子

ドアがノックされ、白衣姿の男が入ってきた。医務局の菅原。

書類をばさりと大槻の机に置き、ロキと名乗った少年の目の前に仁王立ちになる。


「最後に血液検査をしたのは、いつだ?」


「え? えっと。二年になった時、かな」


「いままで、何回血液検査をした? ここ三年くらいで」


菅原の勢いに気圧されたように目をおろおろと動かし、指を折る。


「施設で、二回くらい。それと、中学でも、年に一回か二回?

 全部で、十回まではしていないかもしれないけれど。

 他の人と同じくらいだと思う」


「その検査結果は、どうした?」


「どう、って。聞いてないよ。

 何にも言われてないから、健康だったんじゃないの?」


菅原がイライラと大きくため息を吐く横で、

大槻は新たに届けられた資料を捲り、目を見開く。


「そうじゃない。どこへやったんだ、と聞いている。

 一緒に受けたはずの他の奴は全員分の結果が残っているのに、

 お前の分だけないんだよ。一件もだ」


「はあ? ないってなんだよ。俺が知るわけないだろ。

 勝手に失くして、人のせいにすんな」


「なんだと!」


「待って、二人とも落ち着いて。菅原さん、この結果」


大槻の声に、二人同時に、ふん、とそっぽを向く。


「こいつは、ジェーナホルダーです。

 しかも、三親等以内で、全くの新種か、もしくは遡れば少なくとも二種以上の」


吐き捨てるような言い方に、少年は敵意を隠しもせずに睨み返す。

菅原は腕を組み、そんな彼にさらに詰め寄る。


「血液検査の結果は、政府の特殊機関で厳重に管理されている。

 どうやって抜き出して隠し通してきた?」


「知らねえって言ってるだろ!」


「菅原君」


割って入った大槻のきつい言葉に、無言でにらみ合ったまま、

菅原は一歩下がって距離をとる。


「彼が個人的にどうこう出来るはずがないのはわかるだろう。

 悪いが二人で話させてくれ」


訪問者は、バタン、と大きく音を立ててドアを閉めて出て行った。

廊下を遠ざかっていく菅原の足音が響いてくる。


「なんなんすか、あいつ。マジむかつく」


「谷城君」


トーンを落とした大槻の声に、気まずそうに黙り込んで表情を窺う。

一体、どこから話したらいいんだ。

再び菅原の持ってきた書類に視線を落とす。

保有率、17.338%。適合種、該当なし。

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