表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
黄昏のエッダ  作者: 羽月
風魔
70/104

天狗

 ロキがとある霊峰を訪れたいと言い出したのは、それからすぐの事だった。ロキの生まれ育った町に、近い。


「許可はするが、そこに何があるんだ?」


 話しを持ちかけられた吉井と大槻が問うと、情報が欲しい、という。


「そこさ、昔から天狗が住んでいるって言い伝えがあるんだよね。エンとレヴィに聞いたら、魔族が住んでいる気配がするって。行って、もし会えたら、話だけでも聞いてみたいと思っているんだ」


「天狗」


「うん。あいつらが言うのには、魔族ではあるけれど、どっちかっていうと、神格化していて、会うのは難しそうなんだけど、ダメで元々だし」


「わかった。充分気を付けて行って来てくれ」


「吉井さん、あざーっす」


 おどけた様に笑うロキに、大槻は一層不安が増すのを感じた。やはり、何か引っかかる。


「ロキ、最近、ちょっと無理していないか? 焦っているというか。何か思う所があるのなら、話してくれないか」


 声を掛けると、ロキの眼を、昏い何かが過る。一瞬言い淀んで、少し真剣な表情で話し始めた。


「あいつらさ、この前、ほら、じいちゃんが勝手に連絡して来た時、急に跪いて下向いていたでしょ。後で聞いたら、姿を見る許可も、声を聴く許可も貰っていないから駄目なんだって。許可なく、神の姿や声を聴いちゃいけないんだって。神の前で、立ち上がる事さえダメなんだっていうんだよ。じいちゃんの話しっぷりだとさ、俺ら、いつか神と戦わないといけなそうだろ? けどあいつらがそういう決まりみたいなのがあるんじゃ、最終的に頼れない。俺自身が強くならなきゃ。俺は、人も守るし、あいつらも守るよ」


 ロキの言葉に、背筋を冷たいものが走った。胸が締め付けられるような恐怖。吉井も同じ思いだったのかもしれない。緊張を含んだ声でロキに問う。


「それは、事実なのか? 彼らが、神には対峙できない、と」


「うん。スイッチが切り替わるみたいに、条件反射って言うのかな、勝手に動けなくなっちゃうんだって」


「谷城君、君はどう思う? やはり、神は我々を滅ぼそうとしていると思うか? 抗うためには、戦わねばならぬ、と」


「俺も、いろんなパターンを考えてはみた。神は直接、この世界に干渉できない、って事はないかな、とかさ。わざわざ魔族を使って襲わせているのって、何か理由があるかもしれないし。もしかして、強い魔族を作る事はできても、神自体はそんなに強くない、とか。

まあ、どっちにしても、人類の敵になる神がいるんだとしたら、いつか何らかの形で戦わないといけないんじゃないかと思う」


 そう言って肩をすくめたロキが、何か言いかけた吉井を不思議そうに見る。吉井もロキと、彼の視線に気付いた大槻に、言い辛そうに言葉を探してから「少し待っていてくれ」といい、席を立った。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ