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黄昏のエッダ  作者: 羽月
浄土
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紅闇

 静かで淡々とした日常が戻った。ロキは少しずつトレーニングを再開しはじめた。エンも確実に成長を続けている。日本も相変わらず妖魔の襲撃を受け、その被害により、日々の生活に不便さが影を落とすようになっていたが、なんとか落ち着いていると言えた。それに対し、諸外国の状況は、軒並み悲惨なものだった。資源が乏しく、食料その他を輸入に頼っているこの国も、妖魔の直接の襲撃を退ける事ができたとして、もはや、安穏としていられる状態ではない。地球は、いつまで人が暮らせる惑星であるのだろう。終末はひたひたと、確実に近付いて来ていた。


 空は晴れて、早朝の空気は清々しい。アキを伴って街路樹がさらさらと葉を揺らす道を早足で歩いていると、体が軽くなっていくのを感じる。


「今日は、ちょっと遠出してみよっか」


 眷属たちも、大槻も薗田も、心配性過ぎる。頑丈な体だけが自慢と言ってもいいくらいなのに。アキは、そんな主人の言葉に嬉しそうに振り返って尻尾を振る。小走りにかけだそうとした時、


「ヤシロ、キサネ」


 と、機械音のような声が自分の名を告げるのを聞き、立ち止まって振り向いた。

 赤い?

 真っ赤な液体の中に静んだように、目に、フィルターが掛かったように、世界が赤い。そう思ったのも、一瞬。全ては無音の中に閉ざされた。


 朝のミーティングの席で、吉井からいくつか連絡事項が告げられた。時空の不安定な地区がいくつかある事、その地への巡回に、そろそろロキを出向かせられるか、という検討。大槻と、担当医の菅原が、無理をしないように充分釘を刺せば、との前提で承認し、本人が望めば、このミーティングにも、明日からでも参加させよう、と結論付けた。


「外出、か?」


 大槻は小さく首をかしげた。ミーティングの内容を告げようと、ロキの部屋を訪れノックしたが、珍しく反応がない。ロキが不在でも、だいたい、エンかレヴィが家事をしていたりするものなのだが、トレーニングにでも付き合っているのだろう。昼食後にでも、また来てみるか。そう考えた時、警報が鳴った。

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