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黄昏のエッダ  作者: 羽月
強襲
24/104

応戦

モニターの向こうで、

一際大きな羅刹が、まるで細いバットのように街灯を振り下ろす。

と、滑って転んだようにふわりとその巨体が浮いて背中から地面に落ちた。

間髪入れずにさあっとシャワーのように水が降り掛かり、

濃い銀色の小さな犬のような生き物が画面をよぎり、パチっと閃光が走る。

羅刹は仰向けに倒れたまま痙攣している。

画像がすっと引くと、騒ぎの輪の少し外側辺りに、大槻、薗田と、もう一人、

会議室で見た、二十代前半くらいの青年が立っている。

確か、高岡と名乗っていた。

夜空を背景に、大槻の風イタチの白い体躯が流星のように翻る。

速度を上げ、別の羅刹の足元を通り過ぎると、

先程の者と同じように仰向けにひっくり返らせる。

すっと近づく鈍い光は、薗田のオンディーヌに違いない。

小さな範囲に雨を降らせ、小型犬のような生き物が駆け寄り、

バチン、という音と共に光が羅刹の体を貫く。


「雷獣だな」


エンの声に、ちらっと振り向き、再びモニターに視線を戻す。

逃げ惑う人々の姿は、さすがにほとんどなくなっている。

大槻達は、人々を追って拡散しようとしていた羅刹を、同じ手順で次々と倒していく。

四匹、五匹。

六匹目に取り掛かろうとしたその時、

雷獣が、キャン、と声をあげて宙に弾き飛ばされた。

最初に倒した羅刹が、まだ多少ふらつく足で立ち、折れ曲がった街灯を振り上げる。

雷獣へ振り下ろされようとしていた、その動きが止まる。

羅刹の頭部を、フルフェイスのヘルメットのように水が包んでいた。

知能はそう高くないのだろう、苦しさからか、闇雲に街灯を振り回し始めた。

もう一匹の、最後に残っていた羅刹を見ると、手を振りまわしながら、

視界をシュンシュンと駆け回る風イタチを追い払おうとしている。

苛立った表情を浮かべた羅刹の頭部を、仲間の羅刹の振り回した街灯が直撃する。

水に頭部を覆われた羅刹の手から、凶器が地面に落ち、

やがて、自らの胸を掻き毟るような動きを見せて、どう、と倒れ伏した。


周囲はサイレンや、ヘリコプターのプロペラが回る、バラバラという音が響き、

煙が立ち込めている。

雷獣使いの青年が広場に膝をつき、使い魔の体をそっと抱き上げた。


「吉井だ。ご苦労だった。後の事は任せて撤収してくれ」


モニターの向こうで大槻が左耳に手を置き、顔をあげて頷く。

ロキはいまだ喧噪の残るその場に、ただ立ち尽くしていた。

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