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黄昏のエッダ  作者: 羽月
イフリート
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従魔(1)

大槻と薗田が季実のもとを訪れると、

不機嫌そうにパックジュースのストローをかじっていた。


「あのさあ、どんだけ血、抜けば気が済むの?

 俺、ミイラになっちゃいそうなんだけど」


「悪かったね。これから、次の説明をする」


目の前に立つ二人に警戒したような視線を交互に送り、肩をすくめた。


「昨日も話したが、ジェーナホルダー、神の遺伝子を継ぐといわれる者は、

 妖魔を従える事ができる」


大槻はそう言って、左腕を、すっと床に平行にあげると、ひゅ、と、小さな風が起きて、

彼の左腕の上には、鋭い目の、イタチのような生き物が乗っていた。

雪原を思わせる銀色を帯びた白い被毛、漆黒の瞳、

体長は、長い尻尾を含めて五十cmほど。


「え、これ、なんすか?」


「私の妖魔だよ。風をおこす事ができる。風イタチと呼んでいる」


「じゃあ、大槻さんも?」


「ジェーナホルダーだ」


にこりと頷き、薗田に視線を移す。

彼女も頷き返して微笑み、両掌を胸の前で何かを支えるように手を上向きに構えると、

その真ん中あたりにクルクルと水の渦が発生し、やがて生き物の形をとった。

透き通る水銀のようなそれは、上半身は女性の姿、

下半身は、裾の広がったドレス、もしくは魚の大きな尾びれを連想させた。


「オンディーヌと呼んでいるの。水を操る精霊よ」


「これは、君の卵だ」


「卵? 俺の?」


大槻は、密封された手のひらに収まるくらいの大きさのビーカーのようなものを、

机の上に置いた。

中には薄紫色の、直径二cmほどの球体が入っている。


「ここにジェーナホルダーの血液を注ぐと、妖魔が孵化する。

 孵化した妖魔は、創造主の忠実な僕となる」


「え、もしかして、俺もやっていいんすか?」


「ただし、いくつか条件がある」


厳しさを増した表情も声も、伸ばしかけた季実の指の動きを止めるのには十分だった。


「この卵は、世界中の遺跡などから発掘された、特別で貴重な物だ。

 昨日も話したが、世界中を襲う魔獣に対抗する術は、

 我々、ジェーナホルダーの操る妖魔のみといってもいい。

 君の戦力には大きな期待がかかっている。

 卵を孵すのであれば、相応の覚悟を持ってもらわねばならない。

 我々の仲間となって人類のために共に戦ってくれると誓ってくれるか?」


季実はむっとした表情を浮かべて手をひっこめ、背もたれに寄りかかる。


「なんかさ、重いよね、そういうの。

 急に神の遺伝子がどうとか、魔獣がどうとか言われてもさ。

 でも、あれなんでしょ、やらなかったら人類が絶滅とかしちゃうんでしょ?

 そういうの、寝覚め悪いよね」


そう言いながら表情を窺うように大槻と薗田の顔をちらりと見比べ、

大きくため息を吐いて肩を落とした。


「わかったよ、やるよ。やればいいんでしょ」


手を伸ばすと、大槻が、さっとビーカーを取り上げる。

季実は明らかに不機嫌そうに睨みつけた。


「なんなの?」


「そんな答え方では困る。

 日本国内だけの話ではない。外交問題もある。

 人が従えている妖魔は兵器にもなり得るんだ。

 諸外国との協定を守り、少しでも怪しまれるような行動は慎んでもらう。

 命を賭してでも使命を全うする、と誓ってくれ」


「あんたらは? そんな誓い、たてたわけ?」


「少なくとも私は、人類を一人でも救うために全力を尽くすつもりよ」


薗田の毅然とした声に、上体を起こして強い視線を送る。


「俺の事は、助けてくれなかったよね?」


見据えられて、薗田の表情がさっと変わる。


「アイツに追われて逃げてるの見ていて、知っていて、

 動こうとしなかったよね。

 元は俺が悪いんだよ。避難指示を無視して勝手な事やっていたんだからさ。

 それで、助けて欲しかったとまで言うつもりはないよ。

 けど、そうやって都合が悪い時は見て見ぬふりしておいて、

 人類を一人でも救うために全力を尽くすなんて言葉、

 信じられると思うの?」


季実の、射抜くような、全てを透かすような眼に言葉を失くす。


「怪しまれるような行動をしたら、命の保証はしない、

 っていいたいんでしょ?

 俺みたいなやつに、そんな危険な物、あっさり持たせる気になるなんて、

 そこまで強気になれるって事はさ、もうすでに、いつでも俺の命とか、

 どうにでもできる準備はできている、って事だよね」

エン(以下 エ):俺様の出番がクルーーー! ヒャッハーーー!!!


レヴィ(以下 レ):まだ来てないだろう。


エ:思っていたより長かったね。待ちくたびれるよねー。

  全国のイフリートファンの皆様、お待たせして申し訳ないっ!


レ:だから、まだ出て来てもいないのにファンもないだろう。


エ:さっきからなんだよ。ちょっとくらい早く出番が来たからって。

  お前だってまだ大した活躍、してねえじゃねえか。


レ:嫉妬はみっともないぞ?


エ:はあ? 俺がいつ嫉妬したよ?


レ:で、今日はなんだ?


エ:え、ああ、特にないけど、待ちきれなくて。

  今回は大槻ちゃんと薗田ちゃんがジェーナホルダーだって明らかになったな。


レ:そうだな。


エ:あと、本部にはもう一人、高岡ちゃんを合わせて、

  三人のジェーナホルダーが在籍している、と。

  ジェーナホルダーの扱いは、各国によって違うんだけれど、

  日本の場合は特殊技能を持った公務員、って扱いなんだな。

  で、各地数カ所に、それぞれ三から五人程度ずつ常駐している、と。


レ:他国では、どんな?


エ:軍人としている国が多いな。

  営利団体として独立して、依頼を受けて妖魔と戦っているってところもあるし、

  個人で賞金稼ぎとしてやってる奴もいるらしい。

  ちょっと珍しいところだと、聖職者とか。


レ:神の遺伝子を継ぐ、つまり、神の子だから、聖職者ってわけか。

  どちらにしても、ジェエーナホルダーはその能力などを、

  国に登録しておく必要があるんだな。


エ:そうそう。

  居場所もはっきりさせていないといけないし、国を出る時はいろいろ手続きがいる。

  渡航先の受け入れ許可、とかさ。


レ:ヒトは何かと面倒だな。


エ:ま、俺たち魔族は気楽なもんだ。

  で、いよいよ次回! 俺の……あれ?


レ:次回、ではないな。プ。


エ:何、笑ってんだよ。焼くよ?


レ:まあ、エンの出番は、「近いうち」だな。


エ:くっそーーーー、早く活躍してええええ!!


レ:では、また、次回。海龍レヴィアタンと


エ:イフリートのエンでしたっ!

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