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リクエストSS2〈バッドエンド⑤決意〉

天井様よりリクエストいただきました鬱逆ハーのSS集です。

全5話。R15

各回でヒーローが違います。

※ 倉庫入りで最終話だけ少し変えました。

※バッドエンドは変わらず救いはないです。


完全にゲームのバッドエンドを意識して描きました。

設定はゲーム的には、


・共通ルートで、そこそこみんなと仲がいい状態。

・紅原ルートに入ったものの、全てグッドエンドへの選択肢を外しまくる。


といったところ。

ほら、もう、嫌な予感しかしない(・言・)


キーワードも拉致、監禁、別離、陵辱(に近い)、死にネタ、残酷表現ありです。

嫌ならスルーかバックか記憶から消す方向で。


・何度も言いますが100%、良いエンディングにはなりません。後味も最悪でしょう。

・まあ、それでもマルチエンドのゲームの場合では、こういったバッドも味わいですが。

・ハッピーエンド史上主義は見ないほうが懸命です。


※全てif話。物語の進行上にはまったく関係ございません。

※書きたかったからかいた、それだけです。苦情は受け付けません。


・キャラ崩壊しているかも?気をつけてご生還ください。

・本編のネタバレ要素は多少有り。本編読後推奨

------------------------


以上です。

OKなら、以下。

 冬は日がおちるのがやはり早い。

 もうすぐ冬至なのだから当然か。

 それでも最後の日の残滓がそこここを赤く染め上げる中、あたしは寮に通じる山道を歩いていた。

 明かりの少ない道で、急いでいたら、突然背後から声をかけられる。

 覚えのない声に不思議に思いつつ、振り返った瞬間、顔に何か液体がかかる感触を感じた。

 なんだろうと思う間もなく、あたしの意識は急速に落ちていった。



 ………。



 一瞬意識が飛んでいた。

 意識は取り戻したものの、どうにも状況は最悪な様子だ。

 呼吸が苦しい。体中は痛く、どのみち助からないだろうことは分かった。

 その状況にあたしは死亡フラグに負けたのだと悟る。

 だが不思議と悔しさはない。


 ゆらりゆらりと堕ちていくように命が潰えようとするのが自分でもわかるが、どうしようもなかった。

 ……否、どうする必要もない。助かることなど望んでいない、どうでも良かった。


 必死で周囲に心配かけまいとしたが、だめだった。

 あの日以来、あたしの心を常に虚無が蝕んでいた。

 身代わりを申し出られたこともあった。だが誰も彼の代わりはできない。

 泣けと言われて、泣いた。しかし、それで、救われることはない。望んでもいない。

 時が解決するとも言われたが、果たしてそれになんの意味があるというのか。

 許される必要などない。むしろ忘れたくない、許されたくない。

 この痛みだけが、今あるあの人との絆だから。


 ただ、そんな思いも痛みもどうやら終わりのようだ。

 体に感じる痛みがいつの間にかなくなっていた。

 同時に手足の感覚もなくなって、おそらくあたしは終わる。


 ああ、本当にどこでどう間違えたのやら。


 ゆっくりと視界が暗くなっていくのを感じる。

 視界を彩るのは夕日か自らが流した血か。

 徐々に曖昧になる世界に不意に黒い人影が差す。


 その姿は赤い、紅い……影?

 ほとんどぼやけた視界に映る人影は紅い髪をしているように見えて、あたしはひゅっと息を飲んだ。

 まさか、まさか。まさか。


 それは幻夢のような、あるいは、在りし日の記憶の虚像か自らの願望か。

 ああ、もう一度取り戻せるのだろうか?

 今度こそ、届くのだろうか。

 あたしはもがくように、あの日以来ずっと追い求めていた影に手を伸ばした。



 ◆ ◆ ◆



 見下ろす地に倒れ伏した女の姿を翔瑠は、感情のない瞳で見つめる。

 女はすでに人の姿をしておらず、全身血まみれで、おそらく決して助からないだろうということはわかっていた。


 見える姿は裏戸学園の制服を着ている。

 その存在の前の呼び名を翔瑠は知っていた。


 多岐環。


 一学年上の女子生徒だった。

 かつての彼女は双子で見分けるものの少なかった翔瑠と兄の統瑠を初対面で見分けたりと、不思議な存在だった。

 ずっと翔瑠は彼女に正体の分からない感情を抱き続けていた。

 だが、その感情は名前は永遠にわからなくなりそうだ。

 彼女の死によって。


 環を見つけたのは、偶然だった。

 学園からの帰り道に道端でうずくまる環を見かけた。

 具合でも悪いのかと思って声をかけた途端、彼女が襲いかかってきたのだ。


 その瞳には精気はなく、肌は土気色に近い。

 そんな症状に翔瑠は覚えがあった。


 吸血鬼化。


 吸血鬼の血を人間が浴びると、その毒性により理性を失い、血を求める化け物と化す。

 過去に戒めとして見せられたその症状に、環の様子は酷使していた。

 そして、こうなった場合の対処方法も翔瑠は教わっていた。


 だが、知った顔だけにためらいが生まれる。

 その隙に環が翔瑠に飛びかかってきた。


 普段の彼女の動きからは想像もつかない素早さで、押し倒された。

 尻もちをつくと同時に、上から乗り上げられ、思わず腕を突き出せば、その腕に噛み付かれた。


「っ!」


 人ではありえない、異様に発達した牙に皮膚が食い破られ、血が吹き出す。

 食いつくことはあっても、逆はなく痛みに顔をしかめた。

 しかし、それでも環が止まることはない。

 むしろむしゃぶりつくように腕に食らいついてくる。


 その様子はすでに理性のある人間ではない。

 最早、知人の少女の姿をした獣でしかない。

 なのに、どうしても翔瑠はためらいを捨てられなかった。


 どうしたらいいのか焦るばかりの中、不意に環の体がびくんとはねたかと思えば動きが止まる。

 同時に生暖かい液体が上から降ってきて、頭を汚す。

 それが環の血だとわかった瞬間、彼女の体が横に傾いでいく。


 ドサリと倒れた先に見えた光景にただただ翔瑠は凍りつく。


「……僕の弟に何してんの?」


 冷ややかな視線を宿した兄の姿に呆然とする。

 その手が赤く染まっているのが見えた。

 それから横に倒れている環の背に大量の血の染みが広がっているのを見て何が起こったのか理解する。


「翔瑠、大丈夫?」


 絶対零度の先ほどの声と違い、心配する声音にようやく呪縛が溶けた。

 差し出された手に捕まって立ち上がる。


「何してんの、まったく!」

「ごめん……」


 血の滲む腕に顔を顰められれるが、とりあえず環の様子が気になって、振り返った。

 胸に穴を開け、血だまりにもがいているのが見えた。

 人型を保っている時点でまだ息があるのだろう。

 とはいえ、吸血鬼化した人間を元に戻すすべはないと教えられている。

 最早環が救われるのは死、しかない。


 翔瑠は環だったそれに近づいた。

 最早痛みもないのか、環はぼんやりと虚空を見つめていた。

 おそらく後、数分も持つまい。

 彼女のそばに立てば、何かに気づいたかのように目を見開いたかと思えば、もがくように手を伸ばしてきた。

 まさか、まだ動く力があったとは思わず驚くも、環の表情を見て更に驚いた。

 彼女は泣いていた。

 吸血鬼化は全ての理性や感情を奪い去る。

 そのため、感情が抜け落ちた人形のような表情しかな浮かべない、はずだった。

 しかし、肌の色こそ悪いままだが、環の表情ははっきりと感情を宿した瞳で、涙を流しこちらに手を伸ばしている。


 その光景に呆然としつつも、環の手が自分に向かって伸ばされているのを感じ、無意識にその手を取ろうと動く。

 ぽたりと髪から先ほどかぶった血が滴り落ちるが、そんなことも気にならない。

 しかし、触れるか触れないかのところで、彼女の指先が崩れた。

 ボロボロと崩れ、灰と化す体を呆然と見つめる。


 その変化も翔瑠は知っている。吸血鬼化した人間の末路だ。

 灰になり、跡形も残らない。

 そして最後には洋服だけ残して、環だったものは風に溶けて消えてしまった。

 その光景に翔瑠は動けない。

 ただ、環の服だけが残された地面を見つめていたら、背後からためらいがちの声が聞こえた。


「……ねえ、それってもしかして環ちゃんだったの?」


 統瑠の声だ。

 どうやら今になって彼女が誰なのか、わかったらしい。

 声をだすこともできず、肯定に首を振れば、一瞬クラリと思考が揺れた。


「っ!?翔瑠?」


 慌てた兄の声が聞こえたかと思えば尻の下に硬い地面を感じる。

 どうやら倒れたらしいと分かったが、最早考えがまとまらない。

 ただ、急激な闇が押し寄せ、翔瑠は堕ちるように意識を飛ばした。



◆ ◆ ◆



 学園の片隅にある薔薇園の奥。


 小さな朽ち果てかけた教会のそばにその墓地はあった。

 その片隅に設けられた、真新しい白い墓標の前に、翔瑠は足を勧める。

 この場は、吸血鬼に関わって命を落としたものの、公に葬り去ることができない人間の共同墓地だった。


 とは言え、複数ある墓の下に遺体のあるものはない。

 吸血鬼化した人間は遺体を残さないからだ。

 この一番新しい墓は環のものだった。


 墓前にここに来るまでに薔薇園で詰んだ白い花を供える。

 それから、死者の冥福を祈って膝を折る。


 一分ほど眼を閉じ、命を捧げた後、翔瑠はその場を立ち去る。

 学園の敷地の外れにあるこの場所に翔瑠は昼休みを利用して来ていた。

 あまり長居すると午後の授業に遅れてしまうのだ。


 校舎に向かって歩きながら、翔瑠はその後の事件の進展に思いをはせた。


 あの後、あの場で意識を失った翔瑠が眼を覚ませば全ての処理が終わっていた。

 統瑠の報告を受けた吸血鬼の上層部が出した結論は、環の死を隠ぺいすることだった。


 吸血鬼たちが尤も恐れているのが、吸血鬼という存在が公になることだ。

 人間に対して個々の能力は圧倒して入るが、決定的に数の違う人間に押されているのは事実なのでそれは翔瑠も理解している。

 果たしてそのために環の死はなかったことにされたのだ。


 遺体を残すこと無く消えた環を家出したとして、失踪者扱いとた。

 もともと、周囲に馴染めず、いじめを度々受けていたような彼女である。

 その理由は尤もらしく、周囲には思われているようだった。


 もちろん家族には彼女の死は伝えず、ただいなくなったとだけ伝えたのだという。

 彼女の母親は納得していないようだったが、おそらく金にものを言わせて黙らせるのだろう。

 それくらい一族はたやすい。


 だが、それで?

 彼女の身内を黙らせ、学園の人間を騙して何になる?

 環をあんな風にした犯人は野放し状態だ。


 もちろん上層部もそこは気にして調査をするとは言っていたが、どこまで本気かわからない。

 所詮環は人間であって、上層部にとってはどうでもいい存在だ。

 果たして調査を他人任せにしていて良いのだろうか。

 そんな考え事をしながら薔薇園を通り抜ければ、正面から近づく人影に気がつく。

 背の高い男子生徒だ。

 品の良い男子の多い裏戸学園に置いて珍しく、短髪に体格の良いスポーツマンタイプか。

 だが、その顔は憔悴しきっており、目の下に隈も見て取れた。

 ふらふらとした足取りは危なっかしく、どこか幽霊じみてると思ってしまう。

 学年章を見れば同学年だが、面識はなくそのまま通りすぎようとする。

 

「あの、ちょっと」

「……なに?」


 呼び止められ、振り返るが、やはり面識があるとは思えない相手だった。

 考え事を中断させられ、思わず愛想もなく応じる。


「何か用?僕忙しいんだけど」

「あ、すみません。ちょっと聞きたいことがあって……」


 別に同学年なのだから、かしこまらなくてもいいのだが。そうは思っても口にはしない。

 それより気になるのは、体の割に弱々しい声だ。少しだけ心配になる。


「なんかふらふらしてるけど、大丈夫? こんな人気のないとこいないで、部屋に戻ったら?」


 この場で万が一倒れられたら運ぶのは翔瑠だ。

 人ではない翔瑠にとっては、自分より体が大きい相手だろうが、運べないわけではないが、面倒だと思っての苦言だったが、相手はその真意など知るはずもない。


「あ、大丈夫です。ちょっと人を探していて……」

「人? その人探したら、寮に戻るの? だれ?」


 倒れられても面倒だと思って、探し人の名前を聞いて驚いた。


「多岐環、って女子生徒を見ませんでしたか?二年の生徒なんですけど」

「環ちゃん?」

「っ、知ってるのか!」


 途端ものすごい形相で掴みかかられた。

 思わず顔をしかめるも、鬼気迫る表情の男子生徒に唖然とする。


「教えてくれ! 環姉はもう一月以上、姿が見えないんだ!」


 環を姉と呼ぶこの少年の正体はわからなかったが、どうやらかなり親しい間柄であったことは推測できた。

 もしかしたら家族に親しい間柄だったのかもしれない。


「俺に、俺達に黙っていなくなるような人じゃないんだ。何かあったとしか……」


 翔瑠よりずっと大きいはずの体を縮こまらせ、嘆く相手に翔瑠は言葉を失う。

 環にそんな存在が学内に存在していたとは思わなかったが、翔瑠に言えることはただ、一つだった。


「すまないけど、俺も最後に会ったのは一ヶ月以上前だから」

「……そうか」


 翔瑠の言葉に肩を落とした男子生徒のその姿に、翔瑠は思わず相手の名前と連絡先を聞いてしまった。

 何かわかったことがあれば知らせる、という約束をすれば、あっさり相手は連絡先を告げる。


 藤崎竜輝という名前らしい、男子生徒は電話とメールの番号が書かれたメモを渡して、きた道を引き返していった。

 酷くやつれた様子に寮に戻るように促したが、聞き入れずもう少し探すとふらふらと姿を消した。


 受け取ったメモを掌で弄びながら、竜輝の去っていった方向を見やる。

 らしくない。こんな面倒な頼みを引き受けるなんて。


 そもそも翔瑠は環の消息をはっきりと知っているのだ。

 そしてその最悪の結果が、絶対に言えないことだということも理解していながら、どうして連絡の約束をしてしまったのか。


 そう、誰にも言えない。 

 環の死んだその場にいた自分と片割れと、あと一部の吸血鬼の上層部しか知らない。

 翔瑠と統瑠も口止めされており、例え、他の月下騎士にだって言えなかった。

 ここ一月以上、月下騎士会の執務室はまるでお通夜の会場のような有り様だった。

 いや、それより酷いかもしれない。


 なにせ、会計につづいて、月下騎士に関わる少女が失踪したのだ。

 特に二人と親しくしていた会長の憔悴は激しい。

 何かから逃れるように、仕事をする蒼矢とそれを諌める副会長の間で諍いが何度も起きた。

 前は逆だったのに。


 いっそ、会長にだけは話してしまっても良いと思ったのは何度としれない。

 しかし、下手な事をすると自分の身も危険と翔瑠の中の本能のような部分が警告する。


 果たして、なぜ上層部は自分たちに口止めをしたのだろう。

 しかも、環が関わった相手には絶対に伝えるな、と特に念入りに注意を受けたのはなぜだ。


(もしかして環ちゃんの吸血鬼化に、上層部は何らか関わってる?)


 そんな疑問を思い浮かべてしまうほど、現在の学園を取り巻く空気は不可解なものだった。

 翔瑠とて、環をあんなふうにした犯人は許せず、できればこの手で捕まえたいと思っていた。

 だが、もしその犯人が上層部と関わりがあるというのなら、下手な動きを上層部に見せるのはまずい。


 なにせ一族全体のためなら、個を殺すことを厭わない連中だ。

 ヘタを打てば、翔瑠自身が殺される可能性がある。

 環を殺した相手をこのまま野放しにするつもりはなく、真相の究明がなされない内に殺されるわけにはいかない。


 だって、最後に環は翔瑠に手を伸ばしたから。

 涙をながして、手をのばして。まるで懇願するように。


 翔瑠にはその行為が自分に訴えているように思えた。


 ----自分を殺した犯人を見つけて、と。


 その手をにぎる前に崩れた指先を思い出せば、ぞっとするような寒気と、狂気のような感情が湧き上がる。


 翔瑠はそっとポケットからあるものを取り出した。

 それは制服のリボンタイだった。

 環の着ていた制服はいつの間にか処分されてしまったのだが、統瑠がこれだけを確保してくれていたのだ。

 それを手にして誓う。


「眼には眼を。罪には罰を」


 必ず犯人を暴いて、償いをさせてやる。

 その決意を胸に、翔瑠はその場を後にした。

視点がころころ変わって申し訳ない。環→翔瑠です。

死にネタで締めとか(汗。

多少本編とのリンクはありますが、本編を読むときは綺麗さっぱりこちらのことはお忘れください。

辻褄が会わなくてもSSだからしかないのよ。とか言い訳って見る。

とりあえず、今言いたいことは一つ。

……環よ、一体紅原に何をしたんだ?

自分で書いておいて、前後関係がわからんという衝撃のSSでした。

読了、お疲れ様でした。


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