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リクエストSS2〈バッドエンド③罪涙〉

天井様よりリクエストいただきました鬱逆ハーのSS集です。

全5話。R15

各回でヒーローが違います。

※ 倉庫入りで最終話だけ少し変えました。

※バッドエンドは変わらず救いはないです。


完全にゲームのバッドエンドを意識して描きました。

設定はゲーム的には、


・共通ルートで、そこそこみんなと仲がいい状態。

・紅原ルートに入ったものの、全てグッドエンドへの選択肢を外しまくる。


といったところ。

ほら、もう、嫌な予感しかしない(・言・)


キーワードも拉致、監禁、別離、陵辱(に近い)、死にネタ、残酷表現ありです。

嫌ならスルーかバックか記憶から消す方向で。


・何度も言いますが100%、良いエンディングにはなりません。後味も最悪でしょう。

・まあ、それでもマルチエンドのゲームの場合では、こういったバッドも味わいですが。

・ハッピーエンド史上主義は見ないほうが懸命です。


※全てif話。物語の進行上にはまったく関係ございません。

※書きたかったからかいた、それだけです。苦情は受け付けません。


・キャラ崩壊しているかも?気をつけてご生還ください。

・本編のネタバレ要素は多少有り。本編読後推奨

------------------------


以上です。

OKなら、以下。

 後、数分で予鈴がなろうという昼休み。

大翔は教室への道を急いでいた。


 冬場ではあったがうららかな日差しの日だった。

思わず陽光に誘われて、食堂でパンと飲み物を仕入れて、外に出た。

だが、考えることはみんな同じなのか、校舎から近いベンチは多くの生徒で埋まっていた。


 仕方なく、座れるところを求めて歩いている内に、校舎から遠くはなれた場所に行ってしまった。


 そのため、食事を終える頃には午後の授業に間に合うギリギリになってしまった。

近道をしようと走れば、通りかかった体育館裏の壁で、うずくまる影を見かけた。

急いでいたが、そのままにできず、大翔は足を止めて声をかけた。


「……あの、大丈夫ですか?」


 大翔の声に影はぴくりと肩を震わせる。

そして振り返った顔が知人のもので大翔は驚いた。


「多岐さん!?」

「……霧島くん」


 それはクラスメイトの女子生徒で、大翔が密かに憧れている女子、環だった。

なぜこんな人気のない場所にいるのか。

疑問に思ったが、その酷い顔色のほうが気になって、大翔は環に手を伸ばした。


「大丈夫?」


 背中を擦るようにしてあげれば、触れる瞬間怯えるように体が震えるが、それでも気にしないで触れれば、体の力が抜けた。

それに安堵しつつ、撫でていれば環が顔をあげた。


「うん、大丈夫。……気にしないで」


 こちらの心配に首をゆるくふる環だが、その顔色はまったく大丈夫そうではない。


「きつそう、保健室行く?」


 そう聞くが、再びゆるゆると首をふられた。


「大丈夫、だから。霧島くんは行って」


 遅れるから、と言われて一瞬何を言われているかわからない。

だが遠く予鈴の音が聞こえて、ようやく環の言わんとしていることがわかった。


「そんな、多岐さん。こんな状態の君を置いていけるわけ無いでしょ?」


 眉を潜めるが、環はあくまでも頑なに「大丈夫」と繰り返す。

どこが大丈夫なのか。

それに、今の環の表情が大翔には気になった。

信用度ゼロの言葉を繰り返す環の顔に先程から既視感を感じていたのだ。

その出処に気づいた時、大翔は後で考えても大胆だったかな、と思う行動を起こしていた。


「ごめんね」

「っ!」


 大翔は上着を脱いだ。

冬の日に肌寒さを感じだが、我慢して環の頭にかぶせ、それごと環の頭を抱きしめた。

突然の大翔の行動に環も慌てたように暴れるが、力で押さえ込む。


「ちょ、霧島くん?」

「大丈夫だよ。辛いなら泣いてもいいんだよ」


 くぐもった声で戸惑いを表す環にそうささやけば、腕の中の体がびくっと跳ねた。


「……なんで、そんな」

「多岐さん、辛くて死にそうな顔してるから」


 今の環のような顔に覚えがあった。

それはかつての自分だ。

己の容姿のお陰で、事件に巻き込まれ、周囲がギクシャクする中、大翔は全てを自分のせいだと感じて、罪の意識に心を閉ざした。

それでも周りにこれ以上迷惑をかけられないと、必死で日常を取り繕った。

それは灰色の毎日だった。

人形のように日々を演じながら、心がひたすら冷たく凍りついていく。

世界が暗闇に覆われた気がして、毎日死にたい思いに囚われたものだ。

だが、幸い大翔がそれを実行に移す前に、ありのままの大翔を受け入れてくれる人たちに出会えた。

その人達は大翔に弱くても、取り繕う必要はないことを教えてくれた。

辛い時に泣くことをちゃんとおしえてくれた。


「ここには僕と君しかいないから。取り繕わなくていいから」


 大翔の言葉に、環は大翔の腕の中で動きを止めた。

しばらくの逡巡ののち、環の手がすがるように大翔の袖を掴むが、手の動きと裏腹に環は首を振った。


「ダメだよ」

「なんでダメなの?」

「ダメなの。あたしは加害者だから。泣く資格なんかない」


 必死に首を振り続ける環に大翔は思い出す。


 環は一月半ほどの間、学園に来ていなかった。

自分から失踪したとか誘拐されたとか、いじめに耐えられなくなって出て行ったとか。

とにかくいろいろな憶測が飛び交ったが定かではない。

ただ、環は返ってきた。

二年に入って何かと張り詰めた空気をまとっていたが、不思議とそれが緩和されているのがわかった。

静かな質は同じだが、穏やかに笑うようになった。

だが、それが大翔には痛みを隠している笑みに思えた。


 彼女の身に何があったのか知らない大翔には今、泣きそうな顔で必死に涙をこらえる彼女が何を言っているのは分からない。

だが言えることはあった。


「人が泣くのに資格なんかいらないんだよ?」

「え?」

「そんなこと言い出したら、僕なんてどうするの?」


 しょっちゅうないちゃうし、とおどけたように笑えば、環の顔がクシャリと歪む。

その様子に大翔は環が小さい女の子のように感じた。

居場所がどこにあるのかわからず、途方にくれる可哀想で悲しい女の子。

それは、大翔にも経験のある痛みだ。


「でも……」

「ねえ、多岐さん。自分を哀れで泣いたっていいんだよ」

「え?」


 大翔の言葉に、環が戸惑っている。

環は自分を律することができる娘だ。

決してわがままじゃないし、他人を慮って心配かけまいと振る舞う。

それは彼女の優しさであり美点だ。


 だが、それは逆をいえば誰をも拒絶しているということになる。

大翔は経験があるだけにそれを知っていた。

それでたくさん失敗してきたから。

大翔は自分の経験からぽつりぽつりと環を諭す。


「自分にちゃんと厳しくできるのは多岐さんのイイトコであるとは思うけど。最終的に自分を許してやれるのも自分しかない」


 誰しも自分が可愛い。


「泣いても、逃げてることにはならないよ。無責任なわけじゃない」


 泣くことで罪が軽くなるわけじゃないけれど、だからこそ泣くことは罪にはならない。


「……泣くぐらい自分に許してあげたら?」


 その一言が多分あとひと押しだった。


「うっ……」


 環が嗚咽が漏らしたと思えば、後は決壊したかのようだった。

声をあげて泣く環を大翔は周りの目から隠すように抱きしめた。

遠く聞こえるチャイムを彼女が気にしなように、目と耳を塞ぐ。

そうして時間とひと目を忘れて泣けばいい。


泣くことは悪じゃない。

それは大翔の叔父が教えてくれたことだ。

涙は心を軽くしてくれる。

心が軽くなれば次に動く活力になる。

むしろ涙を堪えることばかりに集中して、進めなくなる方が悪だと。


 だから泣くことを恥だと考えるな。

周囲は大翔が男であることを理由に涙を禁じる中で、叔父だけが許してくれた。

だからきっと自分は今生きているって大翔はちゃんとわかっていた。


 まして、環は女の子だ。

泣いたって避難されることはないのに、自分に鍵をかけて涙を閉じ込めた。

それは今腕の中にある意外なほど細い肩にどれだけの重圧だっただろう。


 ずっと憧れだった女の子。

弱い立場の中でも、折れること無く強くて、凛とした姿が見ていて眩しかった。

だが、腕の中の彼女にそんな部分は今は垣間見えない。

改めて、自分は彼女の強い部分しか見ていなかったことにいまさらの気付かされた気がした。


 声をあげて泣いていたのが、疲れたのかすすり泣きになっていた。

そんな彼女の背中を軽く叩きながら、「僕の知り合いが言ってたんだけどね?」と前フリした後、腕の中の環を安心させるように微笑む。


「女の涙は武器になる。使わないなんて損だって」

「……なにそれ」


 声は湿り気を帯びているが、環が笑う気配がした。

その声に、多分環は大丈夫だと思った。


 泣くことは立ち止まることじゃない。

進むための手段だ。


 だから、泣きたくなったらいつでも隠してあげる。

そういえば、環は少し考えた後、わずかに首を縦に振ってくれた。

それが嬉しくて、思わずぎゅっと抱きしめれば。

環も少し抱擁を返してくれた。

それに嬉しく思う反面、多分自分は環に異性として意識されていないのだろうと思うと寂しくなった。


 だが、それでも警戒されずに彼女のそばに要られる事を幸運だと思おう。

すでに始まっていた授業のことは最早忘れ去り、大翔は環と様々な話をした。

それはほとんどが昔の話であり、未来や最近の事にはふれなかった。

ただ、環が気兼ねなく聞ける話題だけを選んで、その日の午後の優しい時間は過ぎていった。

次、桃李。

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