第3話:怒濤の水族館【その1】
<金曜日>
「志音、明日ピクニック行かない?」
「ああ、いいけど」
「よかった。ミカはどう?」
「大丈夫よ。シオンはどう?」
「行ってやってもいい」
「よかった。じゃあ、四人で行きましょう!」
「え~! こいつも来るの?」
「こいつとは何だ、脳筋!」
志音は深く溜息をついた。
「……アミはともかく、何でみんな僕の部屋にいるんだ……」
「でも、お天気が心配ね。予報では雨らしいわよ」
ミカが言うと、腕を組んだシオンは唇の端を釣り上げた。
「心配ない。明日は快晴だ」
三人は一様に眉を顰めた。
「やけに自信満々ね」
ミカに言われて、シオンは、やれやれというように頭を振った。
「お前らは本編第17話を読んでないのか? 俺は、数百年分の未来の出来事を全て記憶している。明日は快晴だ。予報ではない。これは事実だ」
* * *
<土曜日>
翌日は朝から土砂降りだった。
「そんな馬鹿な?! 一体どういうことだ?!」
「……あんたがポンコツってことよ……」
窓の外の様子に愕然とするシオンに、腕を組んだアミカナは嘲笑を投げかけた。
「分かった! 歴史改変だ! メタクニームによって、歴史改変が行われたんだ!」
シオンはアミカナを見た。
「おい、脳筋。お前行って阻止して来い! お前、歴史改変阻止者だろ?」
アミカナは拳を握り締めた。右腕の周りに青白いスパークが走る。
「……殺すぞ……」
ミカは驚いて、シオンを庇うようにアミカナの前に立った。
「待って、アミカナ! お願いだから仲良くして!」
「ミカ! こんな男のどこがいいの?」
声を荒げるアミカナに、シオンは動じることなく尋ねた。
「逆に聞こう。脳筋は、こんな軟弱で頼りないヤツのどこがいいんだ?」
アミカナは思わず志音を振り返った。突然話題に引き込まれた志音は狼狽した。
「……志音は……」
そこで彼女は目を伏せた。過去を振り返る沈黙があった。
「……中途半端な存在である私のことを……肯定してくれたの……」
アミカナの言葉に、志音は頭を掻く。
ミカは微笑んだ。
「……私もよ。シオンは、私の存在を肯定してくれた。……シオンも志音君も、優しい心を持っている。根っこは一緒なのよ」
そう言われて、アミカナはミカの背後のシオンを見た。顔を顰める。
「……そうは思えないんだけど……」
志音に目をやったシオンは大きく頷いた。
「俺もそうは思えない」
アミカナは睨んだ。
「……お前が言うな……」
険悪な雰囲気を吹き飛ばそうと、志音は大きな声を上げた。
「とにかく! 雨なので、ピクニックはなしで! 代わりに水族館にでも行きましょうか?」
「「……水族館?……」」
アミカナとシオンは同時に眉を顰めた。
「どうした?」
志音がアミカナに尋ねる。アミカナは苦笑した。
「……いえ、大丈夫。ただちょっと……大量の水が怖いだけ……」
「……じゃあ、水族館はやめようか?」
「大丈夫よ! 魚が泳ぐ姿を見るのは好きだから」
ミカもシオンに聞いていた。
「シオンは? 魚が苦手とか?」
シオンは笑い飛ばした。
「馬鹿を言うな。俺に苦手なものなどない!」
「じゃあ、みんないいのね?」
ミカは、三人の顔を見回した。全員頷く。
「なら、俺が車を出してやる。後部座席は狭いがな。志音は後ろで脳筋とよろしくやっとけ」
「……いちいち品がないわね……」
アミカナが睨むと、シオンは肩をすくめた。
「お前にはあるような言い方だな」
怒ったアミカナをミカが宥めている間に、シオンは呟いた。
「……水族館……まさかな……」
「時間戦士は永遠の夢を見るのか・平行宇宙編」をお読み頂きましてありがとうございます。本編・番外編との温度差に賛否もあろうかとは思いますが、一応別物ということで、気楽にお楽しみ頂ければ幸いです。本編・番外編ではないからこそ、登場人物達に言わせたい言葉もありまして、暫く続ける予定です。と言いながら、ここまでの毎日更新により、文章のストックが尽きてしまいましたので、次からは不定期となります。少し気長にお待ち頂ければ幸いです。




