第8話
なんやかんやあり俺はこのゴブリンの村の長に就任することになった。というわけでまずはこの村のことを知るためにゴルドーに案内されている。ソリューやザーノは狩りに行ったが俺の隣には当然のようにエリーがいる。
「ここが村唯一の鍛冶職人ワムの作業場だ」
「へえ~。村に鍛冶ができる奴がいるのか」
いまも目の前で包丁なのかハンマーをトンカントンカン振り下ろしている。
【ノーマルスキル「鍛冶C(3)」を獲得いたしました】
当たり前のようにスキルを獲得した。便利だけどこういうことに関しては申し訳なく思ってしまう。
「俺はワムってんだ!よろしくな新たな長よ!」
「あ、ああ。よろしく」
握手を求められたので手を握り返す。種族はゴブリンのようで進化していなくともいろんなゴブリンがいるもんだな~と感じた。
「ユウジ様もその折れた剣を新しくいたしますか?」
そうエリーに俺がゴブリンに転生した時から所持していたボロボロの折れた剣を指さす。
「う~ん……いいや。折れてるからこそオーラでやりやすいとことかあるし」
折れた剣の先をオーラで伸ばしたオーラブレードなどを使用しているので意外とこっちのほうが使い勝手がよかったりする。
「あとは村の中で見せなきゃいけねえところはねえな」
「ここだけ?」
「小さな村ですから。あとは家ばかりですよ」
「まあ、そうか」
というわけで俺たちは村の外へと向かう。連れてこられたのは小麦もどきのような植物が広く生えているような場所。
「ここがムルギ草の群生地だ。これが俺たちの主食になる」
「ムルギ草は実から種を取り出して潰しながら水を加えることでパンができるんです」
「へえ~……パンが……」
前世と同じようにおいしいパンなのかは疑問だな。
そうして俺は果物がなる木が多く生えている場所やマブルカウと呼ばれる牛の魔物の生息地などに案内された。このマブルカウは縞模様の牛でムルギ草のパンと同様に村の主食らしい。そしてそのマブルカウの狩りにソリューとザーノが護衛として参加していた。
【ハイスキル「槍術B(1)」を獲得いたしました】
こうして俺は1.2時間ほどをかけてゴルドーとエリーの案内のもと村の中だけじゃなく村周辺も案内された。そうして再び俺は家に戻ってきた。
「これがこの村のすべてって感じだな。ほかに知りたいことはあるか?」
「う~ん……」
俺はとあることについて悩んでいた。
「どうしました?ユウジ様?」
「……エリーが前に言ってた眷属ってやつに興味があって……」
「眷属に?」
そして俺はゴルドーを見て提案する。
「なあゴルドー?俺の眷属にならないか?というか村人全員を眷属にしてもいいかもしれない」
俺がただの思い付きで発したその言葉を受けてその場にいたゴルドーとエリーが心底驚いたような表情をする。
「(やっぱり村人全員ってところにビックリしたかな?でも眷属って信頼の証てきなことをエリーが言ってたし。なら村人全員にやっちゃえば少しは信頼してもらえるんじゃないかな?)」
そんな安易な考えのもと俺は発したがのちに俺はこの提案を後悔することになる。"もっと魂の契約についてしればよかった"と。
「……俺は構わねえが……本当にそれでいいのか?」
「もちろん。村の長となったからには俺にはこの村を守る義務があるからな」
「そうか……本気なんだな?」
まるで最終確認かのように再度聞いてくるゴルドー。今思えばこの時にもう少し疑問を覚えればよかった。しかし俺はなにも疑問に思わず、なにも考えずに頷きで返す。
「ん?ああもちろん。本気だよ」
「……そうかわかった。それじゃあ村人56名全員を広場に呼ぶことにする……」
神妙な面持ちでゴルドーが出て行った。その際にエリーが俺の顔を悩みながら同じく出ていく。
「そんな変なこと言ったかな?」
そこで初めて疑問に思うもそこまで気にせずに流す。これで俺は引き返す最後の瞬間を逃した。
俺は眷属になる魂の契約がなにをもたらすかということを知るのは全てが終わった後のことだった。
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「ユウジ様。みんながお待ちです」
「わかった。すぐ行くよ」
エリーが俺を呼びにきた。その表情にはなにかを言いたげにしているが踏ん切りがつかないといった感じ。
「どうかした?」
「いえ!なんでもございません!〈さすがに知らないなんてことはないだろうし〉」
最後は小声すぎてなんて言ってたか聞こえなかったけどそんな話をしていると広場に到着。そこには多くのゴブリンが存在し正面にはいつの間に作ったのかステージが存在した。
「あそこへ。ゴルドーさんたちがお待ちです」
「わかった」
そうして俺はステージへと上がった。ステージの上にはゴルドーだけでなくソリューとザーノも存在した。
「わかってると思うが2人はすでに俺と契約を結んでる。だから新たにユウジの眷属になることは無理だ」
「了解」
そんな説明を受けて俺はみんなの方へと向き直る。そこには突然のことで困惑している様子の村のゴブリンたちがいた。すると代表してか老ゴブリンのホウシュが1歩前に出て俺に問いかける。
「ゴルドーから話は聞きました。まさかそのような豪胆な方であったとは……そもそもが進化もしていないただのゴブリンが何体もの進化済みの魔物を屠ってきたゴルドーに打ち勝った時点で常識を外れたお方であった……われら一同はあなた様の眷属となりましょう」
そう言うとホウシュは片膝をつき俺に首を垂れる。それを受けてほかのみんなやゴルドーたちも壇上で同様に。そして事ここに至り俺はようやく自身がとんでもない選択をしてしまっていると理解した。
「(……どうしよう……いまさらやっぱなしでなんて言えないぞこの空気は……)」
俺が呆然としていると契約の仕方を知らないと判断したゴルドーが話しかけてくれた。
「みんなを見ながら魔石に意識を集中させて俺の後に続いて言葉を発しろ。そうすりゃあ魂の契約は成功する」
「……わ、わかった……」
もうここまで来たら腹をくくるしかない。そう決意を固めて俺はゴルドーの言葉に続く。
「我ホブゴブリン≪ユウジ≫汝ラト魂ノ契約ヲ結ブ者。不服ナクバコレヲ受ケ入レヨ」
俺がそう言った瞬間にソリューとザーノを省いたゴルドーも加えたすべてのゴブリンたちと俺が魂で結ばれたのが自然と理解できた。しかしその場での変化はそれだけ。大きな変化がないことで安堵しているとすぐ後に理解することになる。魂の契約をすればするほどに今よりもさらに上の魔王種への進化が困難になるということに。
それは自らの手によって俺が求める最強への道を険しい茨の道へと変貌させたということ。
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