第6話
俺は当初の予定通りにゴブリン村最強のゴルドーと戦うことになったため村の中央広場にて対峙している。
「ですからこの戦いには何の意味もないんですよ!?私は見たんですから!?この男がエリーを殺そうとしていたのを!?ゴルドー様は私の言葉を信じてはいただけないのですか!?」
「信じてるに決まってんだろ。お前は俺の家族だ」
「でしたらこんな意味のない戦いはやめて今すぐにみんなであの男を殺しましょう!?そうしましょう!?」
セイシュは必死にゴルドーに対して決闘をやめるように説得。それは内心ではこの展開に焦りを感じているからだろう。
「(あのユウジとかいう男は色々と得体が知れない。ただの雑魚ゴブリンには本来ならあり得ないが、万が一ゴルドーのやつが認めるほどの強さを発揮したならば……このバカの直感がこちらを向く可能性も……)」
その思いからセイシュは必死にゴルドーを説得しようとしていたがもはやゴルドーの決定が覆ることはなかった。
「セイシュ。お前は自分が正しいと思うなら黙って見てりゃあいい。違うか?」
ギロ!
いい加減に煩わしく感じたのかセイシュを睨みつけるゴルドー。
「っ!?そ、そうですね……申し訳ありません。確かに私が真実を語っているのだから黙って見ているだけでいいんですね……ハハハ……」
そう言ってセイシュはゴルドーに睨まれた結果、下がっていった。
ちなみに周囲には非戦闘員も含めた全ての村のゴブリンたちが集結しておりエリーはソードゴブリンのソリューと共に俺を見守ってくれている。
「悪いな待たせちまって」
「問題ない。お陰でこっちも心を決めることができた」
「あん?」
相手はゴブリン村最強のパワーゴブリン。力が強く速さも兼ね備える脳筋タイプ。一撃でも攻撃を受ければもう一度俺が立ち上がれるかわからないほどの相手。出来れば防御にも使えるだろう剣で戦いたい。だが先ほどのソリューとザーノの奇襲を防いだのもある通り俺の本気は剣にはないらしい。
「エリー。この剣を持っていてくれ」
俺は愛用のボロボロの折れた剣をエリーに預ける。それでエリーも察したのか真剣な表情でその剣を受け取ってくれた。
「ご武運を」
「……ああ……」
そうして俺はゴルドーと対峙するために元の位置へと戻った。
「……俺を舐めてるわけじゃなさそうだな……」
「ああ……これが俺の本気だよ……かかってこい。無傷で勝ってやるよ」
手招きして挑発。それにゴルドーはニヤリと笑みを浮かべる。
「いいじゃねえかてめぇ。面白くなってきやがったぜ!」
睨み合う俺とゴルドー。一見すると自然体な立ち姿にまだ始まらないかのように感じるも知れないがどちらもこれが臨戦態勢。
するとランスゴブリンのザーノが小石を俺とゴルドーの間に投げた。そしてそれが落ちるのが決闘の開始の合図となった。
コツ
ダッ!!!
「てめえの言葉が真実かどうか俺に見せやがれ!!」
小石が落ちるのと同時に駆け出したのはゴルドー。武器として大きなハンマーを持っているとは思えないほどの速度で俺に急接近。そのまま俺に向かってハンマーを振り下ろす。
振り下ろされようとするそのハンマーの軌道をゴルドーの身体全体を俺は恐怖を押し殺しながら注視する。
「枝垂」
枝垂によって俺は左へと避ける。するとそれまで俺がいた地面にハンマーが振り下ろされた。
ドガン!!
俺としてはハンマーを避けて懐に侵入しそのまま崩心を打ち込もうと考えていたのだが、それは振り下ろされたハンマーによりクレーターから土や石などが周囲に飛散したことで一歩目を踏み出すことができなかった。
「チッ!?」
飛んでくる土や石などに咄嗟に顔をかばってしまった俺に対して連続してゴルドーのハンマーが襲い掛かる。しかもその速度は先ほどよりもなお速い。
「おいおい冗談だろ!口だけかてめえは!」
「くそっ!?」
目の前まで迫りくるハンマーに枝垂では間に合わないと判断した俺は増強のスキルを発動させてハンマーを殴りつける。
ドゴン!!!!
「ぐっ!?」
無傷で勝つとか言っておきながらハンマーを殴った影響で拳に痛みが走った。だがおかげでゴルドーのハンマーを受け止めることができた。
「へえ……俺を相手に力勝負を挑もうってか?おもしれえじゃねえか!受けて立ってやるぜ!」
グググッ!
「なっ!?さらに力が上がんのかよ!?どんだけだよ!?」
「おらおらどうした!このまま押しつぶされて終わるか!」
「くっ!?……そんなわけ……ないだろ!」
ドン!!
力勝負では不利と感じた俺はなんとかそのハンマーをいなすことに成功し一気にゴルドーの懐へ。
「これでも喰らっとけ!崩心!」
ドゴン!!
「ごはっ!?」
全力の崩心をゴルドーにお見舞いした。ほかの魔物であればここで終わるのかもしれないがしかしこの一撃で沈まないのがパワーゴブリンのゴルドー。
「へ、へへへ……やるじゃねえか……効いたぜ……てめえの本気……」
「……もしかしてお前……もうわかってんじゃ……」
「なんのことだ?まだ決闘は始まったばかりだぜ!続きと行こうや!」
こうして俺とゴルドーの決闘はもはや真実を理解し始めたゴルドーが止めるまで続けられた。
/////
その後はハンマーを置いたゴルドーからのラッシュ。ハンマーを置いた分その速度が上がり俺も回避に必死。ハンマーを置いたとしても一撃でも食らえば大ダメージなのは相変わらず。それでもゴルドーのラッシュをかわし続け時折り懐に飛び込んで全力の崩心を打ち込むを繰り返すこと十分以上。ゴルドーは俺が何度も打ち込んだ崩心によってボロボロに。かくいう俺も一撃ももらえないという緊張から精神・体力ともに限界気味。
「おい……ゴルドー……ハアハア……いい加減に……」
「へへ……まだまだ……余裕そうじゃ……ねえか!」
そういいながら繰り出される拳はなぜか今までで最速で繰り出された。もしかしたらこの間にゴルドーの格闘のスキルが上昇したのかもしれない。しかし格闘のレベルが上がっているのはゴルドーだけではない。
「いい加減に!」
俺は最速で繰り出されるゴルドーの一撃を紙一重で回避して腕を掴むとそのまま背負い投げの要領でゴルドーを持ち上げる。
「なっ!?」
しかしこの技は背負い投げではなく持ち上げて空中での逆立ち状態になったゴルドーを頭から地面に叩きつけて首の骨をへし折るという技。
「霞落!」
ドゴン!!!
「がっ!?」
バタン
「はあ……はあ……」
倒れたゴルドーは起き上がってくる気配がない。しかしどうやら首の骨は折れてはいないらしく生きてはいるようだ。
「どんだけ……タフなんだよ……」
まあ俺としてもゴルドーであれば大丈夫だろうという思いで繰り出した技ではあるが。
でもこうして俺は決闘にてゴルドーに勝利した。
「……あれ?でも……ゴルドーが判断するんなら……気絶されちゃ困るのは……俺か?」
いまだに俺のピンチは続いているようだ。
読んでくださりありがとうございます!
もし少しでも面白いと思ったら評価・ブックマーク・感想をしてくれるとそれが作者の描き続ける原動力となります!よろしくお願いします!




