父親の前時代的なオルゴール
僕が、小学校に上がる頃だったと思います。
押し入れの中から薄汚い箱を見付けたのです。
それを、父親に見せに行くと、驚きを禁じ得ませんでした。
それは、年代物の手巻きオルゴールだったのです。
早速、父親はオルゴールを鳴らそうとしましたが、全く動かなかったのです。
そこで、箱の中を開けてみたら、ギアや金属板が錆び付いているではありませんか。
父は、錆びた部分に油を差してみましたが、改善しませんでした。
次の日から、父親はオルゴールを修理しようと、心当たりのあるお店を片っ端から当たっていったのです。
しかし、ほとんどのお店で断られてしまったのです。
諦めきれなかった父親は、隣町まで行って修理をしてくれそうなお店に行ったのです。
すると、店主は言いました。
「この状態じゃ修理は出来ないが、どうしてもと言うのなら内緒でやり方だけは教えよう」
それからというもの、父親は暇さえあれば隣町まで出掛けて行きました。
そして、半年が経った時に、いよいよ分解してみる事になったのです。
父親は、細かい部品を一つ一つ並べました。
それを、時間を掛けて丁寧にメンテしていきました。
2ヶ月後、試行錯誤を重ねて、やっとオルゴールを鳴らす事が出来たのです。
翌日、父親は家族と一緒に、修理したオルゴールをお披露目する事にしたのです。
「これから、オルゴールの音を聞かせてあげるから」
オルゴールは問題なく作動したものの、家族ではこんな感想でした。
「えっ、これだけ?」
「短いから何の曲か分からないね」
曲はゆっくりで、長さはいいところ3~4秒でした。
それでも、父親は時々オルゴールを鳴らしていたのです。
あれから数年経って、僕は修学旅行で有名なオルゴール館に行ったのです。
滞在時間は30分でした。
お土産を買うには長いかなと思って、友達とオルゴールの試聴をしまくったのです。
その時、父親が苦労して修理したオルゴールの楽曲が鳴ったのです。
僕は、その音色に胸が響きました。
お小遣いで買えそうだったので、僕は迷わずそのオルゴールを購入しました。
家に帰って、僕は家族にオルゴールを聞かせてみました。
「これは、お父さんのオルゴールと同じ曲じゃないの!」
この時ばかりは、家族全員が色めき立ちました。
僕のオルゴールは15秒位でテンポが速く、父親の物とは音色が違っていました。
父親は、2つのオルゴールを同時に鳴らしました。
数秒間の二重奏ではありましたが、家族皆がほっこりしました。




