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TS転生した俺は魔法少女になれないらしい  作者: えとう えと


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もしかして:比果比五子


「おはよう!比果さん!」

「う、うん。おはよう」


 知性体討伐の際に遭遇した綾谷もみじと言う少女。

 魔法少女でありながらインベーダーを討伐したことがなくそれ故に自分を責めるような言動をしていた彼女であったが、週明けの様子はそんな事実など存在しなかったかのように元気だった。

 何があったか知らないが吹っ切れたのだろうか。

 そんなことを思いつつ挨拶を返しながら席に付けばカゲがテレパシーを送って来た。


 ──魔法少女朝桜、週末からインベーダー討伐が順調らしいぞ。

 ──朝桜?もみじさんのこと?

 ──認識阻害もあるから断言は出来んがな。インベーダーを一度も討伐できていない魔法少女なんて限られてるから多分本人だろう。


 カゲが言うにはネットでちょっとした話題になっているらしい。

 元々知名度があったわけではないが、戦績がゼロとあって魔法少女愛好家の中では不動の最下位としての認識があって、それがここ数日でランキングを上げているためにちょっとした話題の中心となっているようだ。

 まあ、なんにしても順調なら何よりだ。

 魔法少女の鑑みたいな言動の彼女が躓いているのは少し気になっていたしな。


 ──ああ、それと彼女がお前のことを褒め倒しているのも噂になってるようだぞ。

 ──どゆこと?


 意味が分からず疑問符を浮かべた。

 それにまたもカゲが答えようとした時、ガラッと勢いよく教室のドアが開いた。


「もみじ!これどういう事!?」


 反射的にそちらをむけば、仁王立ちしてスマホの画面を突き出すように向けた少女がいた。

 なんか気が強そうだ。

 何か既視感がある。


「ど、どうしたの?緑子ちゃん……?」

「どうしたもこうしたもないわよ。どうして貴方がこいつの事を……ッ!そこのアンタ何見てんのよ!」


 そりゃ見るだろうが。

 そう思いつつも頭を下げて目をそらした。

 でも凄いな制服を着ていない不良みたいな俺にあんなに強く出るとは。

 まあいいや。仁王立ち少女──緑子さんとやらが目立ちすぎているが後ろにいるもう一人の子がペコペコとこちらに頭を下げているので許してやろう。





 ◆


 髪を揺らして教室からもみじの手を引っ張る少女は人気のないところへ行くとその手を離した。

 後ろから「はやすぎぃ~」とよろよろともう一人の少女が付いてきた。


「もみじ、これってどういう事?」


 緑子は改めるように今度こそスマホを差し出して問うた。

 映るのは魔法少女コフィンの写真とインターネット上でもみじこと魔法少女朝桜が発信した内容についてだった。

 簡単に言えば今まで不動の最下位であった魔法少女朝桜がランキングを上げていることでちょっとした話題になった、その際に彼女がSNSで「魔法少女コフィンのおかげ」と言う旨の内容を投稿していたためにそれも付随して人目にさらされる事態となっていた。

 かねてよりコフィンについては突如と現れたA級魔法少女としての話題性はあったのだ。予想できる事態ではあった。


 しかし、緑子がこうしてもみじを問い詰めることの本質はそこではない。


「このコフィンっていう魔法少女の話、貴方にもしたわよね」


 それはつい先日の話だった。

 明らかに魔法少女登録前の存在でありながらインベーダーを狩り続けていた少女と遭遇した話だった。

 あの時は逃げられてしまったためにどうにかしてコンタクトを取ろうと考えていた緑子は事情を伝えていた。


「どうして遭遇した時教えてくれなかったのよ」


 緑子だってもみじがそこまで気を回せるほどに精神的余裕があったとは思っていない。

 しかし、SNSで発信してからその事実を知ったと言う事に対して思うところがあった。

 ただ、一方でもみじは首を傾げることになった。

 実際、緑子に対してコフィンについて話すのを失念しているのは事実だ。しかし、コフィンである比果比五子は教室に居て緑子も視界に入れていたはずだ。

 魔法少女関係の話をするとあって人目を気にして強い態度をとっていたように見えたが当の本人に声をかけておきながら今の言動は疑問が残るところだ。


(もしかして気付いてない?)


 比果比五子の認識阻害はあまり強力なものではない。

 魔法少女であれば破ることが出来なくはないはずだ。

 だから、魔法少女仲間である緑子は気付くことが出来てしかるべきで……。

 不意に後ろで息を切らすもう一人の少女、寧々華を見れば首を傾げられる。


(もしかして、私だけが?)


 魔法少女であれば誰もが認識阻害のレジストが出来ると思っていた。

 少なくとももみじは出来たし、恐らく他の魔法少女は出来るだろう。

 なら、なぜこの二人は出来ていないのか。


 疑問は尽きないが、比果比五子をコフィンとして認識していないのならここは黙っているべきかもしれない。

 緑子にしてみれば比五子と接触して言いたいことはあるだろうが、正直トラブルになる未来しか見えない。

 嘘をつくのは忍びないが、もみじは黙っておこうと決心した。


「あらあら。魔法少女同士で仲間割れ?」


 そんなことを思って何と返答しようかと考えていた時、一つの声がそれを邪魔する。

 御淑やかなんて言う言葉が似あうのだろう声の主を思わず見た。

 いつの間にかそこに現れていた人物は上品そうな雰囲気を身に包んでいた。そのたたずまいは本当にもみじたちと同じ制服を着用しているのか疑うほどだ。

 そして、もみじと同時に彼女に他の二人も目を向けていて、真っ先に緑子が口を開いた。


「何の用?」


 苛立ちが隠しきれない声に少女はくすっと笑ってゆっくりとした所作で言葉を返す。


「何の用も何も、魔法少女同士がいがみ合っていれば仲裁するのが魔法少女である私の義務でしょう。この学校に五人しかいない魔法少女同士仲良くしなくては。ね、緑子さん」

「アンタに言われなくたって仲良くするわよ」

「なら、頼みますよ。知性体は魔法少女の人間関係の隙をついての攻撃もしてくると言いますし。……なにより、最後の五人目に関しては完全な一匹狼と言わざるをえない状況ですしね」


 その言葉に緑子は「方波見黒墨(くすみ)。魔法少女夜空」とこの学校五人目の魔法少女の名前を呟いた。

 魔法少女同士でのなれ合いをせず、一人での行動が目立つ人物だった。


「でも、それを言うならあなたも大概よ。西園寺白亜」


 緑子がそう言い返してみるも、少女、白亜はうっすらと笑みを浮かべて去っていった。






 ◆


 エネルギーの吸収やらなんやらで運用できるようになったリソース分で出来るようになったことは多くあるが、その筆頭がカゲの人化と言えた。

 正確には安定した人化の継続とも言えるだろうか。


 以前、カゲと契約してすぐに俺は黒髪貧乳十四歳(くらいの見た目)の美少女にした。

 しかし、残念ながらエネルギーの不足が原因となり、すぐにチンチクリンなぬいぐるみ省エネモードにフォームチェンジせざるを得なかったのだ。ゲーセンでアーム負けしそうな大きさのぬいぐるみだが、それが手に入って嬉しいのはゲーセンだからだ。


 まあ、とにかくそんなこんなでカゲの美少女の道は一時進行停止したわけだが、今やその問題も解決済みであると言うわけだ。つまり、カゲは美少女化を恒常的に出来る。

 とは言え、美少女化して連れ歩こうかと今更思えないのは、魔法少女としての戦闘面におけるエネルギーの重要性を身に染みて理解してしまったからだろうか。

 正直な話、俺は正規の魔法少女ではないので出力を駆使しての攻撃がインベーダーに通用することはない。魔法少女はエネルギーを魔法として加工するが故にダメージを与えるに至っているが、俺がインベーダーへ持つ実質的な攻撃方法は吸収だけだ。

 だが、そうかといってエネルギーが必要ないとも言えないのだ。先の戦いでもそうだが、俺の吸収と言う能力は相手に触れなければ使えないが故に、足止めをする必要があるため、地面に縫い付けることや縛るためにエネルギーはどうしても必要になった。


 現状、エネルギーの貯蔵量自体は豊富にあるが、常にカゲの美少女化を保たせる必要性もそう多くないのだった。

 しかし、そんなことを考えながら今カゲは俺の後ろに控えるように美少女化して立っていた。

 そして俺とカゲが視線を向ける方に立っているのは一人の少女。


 学生服に白衣を羽織った幼気(いたいけ)な……否、イタイ少女。


「来てくれましたか。ヒーコさん。いえ、我が友よ!」


 そんな少女はバサリと白衣を翻してそう言った。

 彼女の正体は少し前、ついの村に関しての記述があった紙を解読するためにコンタクトを取った自称「魔法少女言語」の研究者だ。

 用が済んだので関わることはないと思っていたがまさかリアルで会うことになるとは思わなかった。


 いや、と言うか本当なら会いたくなかった。

 と言うのも、この顔合わせも半ば脅しのような形で実現したものだった。俺自身SNSをしていないがカゲのアカウントを特定しネットストーカーをした挙句に脅迫まがいのことをされて引きずり出されたのだった。初めて依頼した時に音声通話を強引に進めて来た時点で怪しいとは思っていたんだ。

 まさか、環境音で自宅を割り出されるとは思わねぇよ。


 きっと今までこの似非魔法少女言語学者狂人女はネットの海ですら相手をしてもらえなかったのだろう。そのせいで、せっかくの理解者(違う)を逃すまいとイカレた行動にでたのだ。

 まあ、そもそもカゲがSNS中毒になったことも原因の一端ではあるのだが。小中高でネットリテラシーの授業受けた上級現代人の俺と違ってそう言えばこいつは義務教育を受けていない下級使い魔だった。いや、俺の記憶から常識は得てんじゃないのか?

 そう思って、カゲの投稿を確認してみたが写真一つ上げていなかった。つまり、このイカレ白衣女郎は文章から読み取れる情報だけを頼りに俺の居場所を特定したらしい。こわい。


「ごめん。インターネットの人と友達になっちゃダメだってお母さんに言われているから……」

「あれ?ヒーコさんご両親いませんでしたよね!」


 こいつノンデリか?

 確かに、今世ではいないが……。

 そういや、設定的にはどうなってんだろうか?ビッグバンで生まれたわけじゃないだろうし。

 ヴィーナスよろしくクロノスのブツから……みたいな話か?……魂に珍棒が付いてるってそう言う……。


「で、なに?」

「なんだか冷たい反応ですね!ですが、私としてはヒーコさんと仲良くなりたいのです!」


 ネットストーカと特定犯まがいのことをした女の差し出す手を訝し気に見る事しかできなかった。

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