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TS転生した俺は魔法少女になれないらしい  作者: えとう えと


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マスコット登場!


 ついの村。

 そこが、紙に書かれていた場所らしい。

 新幹線に電車にバスと公共交通機関をフルに使ってそこへ出向く。


 余裕で数万かかったんだが、ストーリー上とは言えプレイヤーって初っ端からこんな大移動すんの?

 金はなぜか、口座にたくさん入っていたから困りはしなかったが、前世だったら泣いてたぞ。

 振込頻度を考えるとインベーダーとのエンカウント後だから、ゲーム的な報酬なのだろうか。

 倒してないが、エンカウント時点で金が入るのか?


 そんな疑問もそこそこに俺はついの村に到着した。

 案の定廃村であったそこに俺は足を踏み入れた。

 転生して現実味がないから何とかなっているけど、前世だったらここで帰ってるぞ。


 ガラスの破片で足を切らないようにして慎重に歩けば社のようなモノが見えた。


「ッ!?」


 瞬間、体に何かが重くのしかかる。

 何だ?とあたりを見渡しても何もない。

 だが、それでも重力が何倍にもなったかのような錯覚を受ける。


 しかし、それも一瞬。

 遅れてプレッシャーの正体を推測した。

 多分、目当ての使い魔だろう。

 どうせ、プレイヤーの先祖の超すごい人の伝説の従魔とかそんなんだろう。


 ビビるだけ 無駄と思いそのまま進んでいく。

 先ほどのようにのしかかる重圧を感じることなく、不自然に瓦礫の中に立つ社の前まで来た。

 何も起こらないぞ、なんて思っていると一枚の護符のような物がはられていることに気付いた。


 封印されてるっていってたっけ。

 多分これを剥がせばいいんだよな。


 ぺりと音を立ててそれを剥がす。

 これどうやってくっついてんだ?米粒?

 キャラクリの関係で前世よりも長い爪が剥がすのに便利だと実感しながら護符を剥がす。


 一歩下がって何も起きないなと首を傾げようとして一瞬空気が変わる。

 先ほどとは一線を画すほどの重圧の差。

 それと同じくして、俺の目の前には巨大な影が現れた。


 使い魔とか従魔とかそう言う次元じゃない。

 俺をここ一週間行列を作って襲って来たインベーダーなんか足元にも及ばない。

 そう実感してしまうほどのプレッシャーをその身に受けた。


「こりゃ、やばいな」


 プレイヤーと契約する使い魔と考えればそりゃ強力な奴が来るかとは予想していたが……。

 

「クククッガハハハッ!よくぞ我を解き放った!人間!」


 全然プリティじゃねぇ。

 魔王じゃんこれ。

 え、なに?魔法少女モノは奇をてらわないといけない決まりでもあんの?


「ふむ。だが、力が弱まっているな。もっと妖力を回復してからの手はずだったはずだが」


 ぶつぶつと独り言を言う使い魔に俺は考える。

 ここからどうやって契約を取り付けようか。

 まあ、取りあえずシンプルにまずは頼んでみるか。


「俺……いや、私と契約を結んでほしいんだけど」

「ん?小娘。我を見ても意識を保ち、なおも声をかけて来るとはなかなか見どころがある。内包する力も高いと見える。まずは貴様で力の回復を図ろう」

「いや、話聞けよ」


 いくらゲーム世界とは言え、お前はNPCか?

 俺の言葉を汲み取った会話をしてくれ。


「ほう。我に立てつくか」

「いいから、契約して」

「そうだな、その胆力に免じて少し考えてやろう。食う前に食材をよく知ると言うのも悪くない。よく知ってから食った方が上手いからなァ」


 なんだよ食べる前によく知るって。

 A〇のインタビューとか真面目に聞いてそう。


「では、お前が我の攻撃を避け、指一本でも我に触れることが出来たら今後千年言うことを何でも聞いてやろう」

「本当に?」

「ああ、本当だ。「誓約」における誓いは何人も侵せない」


 巨大な影がそう言うと、一瞬俺と影を結ぶように淡い光が生じた。

 使い魔式指切りげんまんだろうか。

 まあ、約束を守ってくれるならやる価値はある。

 正直怖いが、ゲームのいわばチュートリアル内のイベントなら、もしこの条件が不可能に近くともどうにか切り抜ける方法があるはずだ。

 食べる契約をしたけど、もっと強くなってからの方が上手いから後回しにしてやるとか言ってくる可能性はある。


「さあ、精々がんばれ」


 影が咆哮を上げると周囲の空が赤くなる。

 夕焼けなんて綺麗なモノではなく、闇と赤が螺旋を書いて混ざったおどろおどろしい見た目だ。ゴッホの絵かよ。

 それにやっぱりコイツラスボスとかだろ。


 そして影はその巨体を更に広げるように大きく広げた。

 両手を上げて威嚇して可愛いのはレッサーパンダくらいだ。

 巨大な影の化け物がそんなことをすれば俺の全身は警鐘を鳴らしまくり、嫌な汗がダラダラと服の中を伝った。


 そして、奴はたっぷりと巨体の前でどす黒いエネルギーのようなモノをためてこちらに放った。

 こいつはやばい。

 ゲームのシナリオの内だと楽観視していた俺はポケットの中のあるモノをたまらず取り出した。


 ───パチンッ


 眼前がエフェクトたっぷりなエネルギーの塊で埋まる中そんな音が鳴り、俺は先ほどいた場所より数歩後ろに立っていた。

 クラリとめまいがするが、今はそれを無視して地面を蹴った。


「キサマ、何をした!?」


 俺が攻撃を避けたのがよっぽど不思議だったのだろう。

 影は動揺の声を上げてこちらを見た。

 しかし、余裕はない。

 影の背後に回り込むように俺は動く。

 この身体の運動能力はそこそこ高い。

 だが、命をかけた戦闘ではスローモーションにも等しいほどに速度が足りない。


 影の背後に回り切った時、もうすでに巨大な影はこちらに正面を向けていた。


「死ねェ」


 再度影はこちらに攻撃を仕掛けて来る。

 いや、そう認識してからでは遅い。

 すでに俺はソレを取り出し。


 ───パチンッ


 影の背中に移動していた。

 すかさず、俺は手に持つ銀色のそれを押し当てた。

 攻撃を入れた。

 条件を満たした俺は緊張感から解放されて動きを止めようとして──奴はまだ動いていた。

 影は最早エネルギー弾での攻撃はせず、その身体をもってして熊のように腕を振り下ろした。


 やべ、死ぬ。


 死の直感、それを全身が感じた時、思わず目を瞑った。

 だが、いつまでたっても痛みも衝撃も来ないことに疑問を抱き、目を開いたところで奴はその動きを止めていた。

 てっきり口約束でしたってオチで騙されたかと思ったが、「誓約」とやらは効力を発揮しているようだ。

 しかし勝ったら生かすなんて約束ではない以上、誓約を守るために対象者を殺せないとかそんなとこだろう。死人に口はないしな。


「キサマ、何をした?」

「ご主人様ね。いや待って、女の子の姿になれる?」

「……出来なくはないが」

「じゃあ、ご主人様言って」

「ご主人様」

「いや、女の子の姿になれよ」


 と言う事で、一応条件を満たした俺は取りあえずこの化け物を女の子の姿にすることにした。

 っておい!なんでババアに化けた。

 前世のばあちゃんより歳行ってるだろ。

 ほら取りあえず、十四歳くらいの見た目にして。あ、そうそう。

 で、黒髪。大人しそうな顔立ちにそうそうオタク君の好きな感じに。え、オタクってお前の事じゃねぇよ。お宅じゃなくてオタク。

 だれがお前の好み見たいんだよ。いや待て、巨乳熟女か。いや、ダメだ。

 さっきのに戻して。そう、黒髪十四歳大人しい見た目、で制服。あー学生服わかんねぇの?

 俺の服みたいなの。あーそうそう。ネクタイじゃなくてリボンにして。

 おー、やればできんじゃん。


「で、ご主人様は何をした?」

「ちょっと特殊な体質でな」


 元々俺はキャラクリで誕生している。

 と言うか、それ以前にゲームにおけるプレイヤーのキャラだ。

 そこで考えてほしいんだが、ゲームのキャラはどこまで損傷が可能なのかと言う話だ。

 例えば、攻撃を受けた際に服が破れる。血を流す。これらは再現されている可能性はある。

 とすれば、再現されていないのはなにか。

 それは髪の毛の損傷だ。

 通常ゲームで攻撃を受けて魔法少女の頭がチリチリになるだろうか?答えはNOだ。


 だが、ゲームの世界と言っても散髪が出来ないと言うのも不思議な話だ。

 ゲームがおおもとにあると言っても現実となってこの世界はそこにある。

 NPCと表現できる一般民衆は決められた行動パターンなどなく、前世同様自身の意思で動く。

 服は、バリエーションが存在するし、特定の組み合わせで固定されているなんてこともない。


 ただ、プレイヤーのキャラとして実装された俺の身体は少し違った。

 無論髪は切れる。

 ゲームのキャラとは言ってもこの世界に住む以上髪は抜けるし切ることはできる。


 だが、切った後、その事実は世界によって消されることになるのだ。


 正確に言えばこの世界で俺の身体だけが、髪を切る前にまで逆行する。

 だから、先ほど俺は影の攻撃を受ける直前に髪をハサミで切り、少し前の位置まで逆行した。

 まるで、ゲームのラグによって数秒前の位置へと引き戻されるかのような事態がその身に起こるのだ。


 この世界に来て一週間、目立つ金髪をどうにかしようとしたことはあった。

 とりあえず染めてみようとして失敗し意識を飛ばした。

 少し大人しい髪型にしようとして意識を飛ばした。

 染めようとした時は、有害な気体でも吸い込んだかと思ったが、髪を切った時に流石に異常に気付いた。

 鏡の前で髪を切った俺の意識が回復した時、立っているのは数歩後ろ。

 まるでその行為を行うまでに強制的に戻されているようだった。

 時間が動いていることから、俺だけが世界を逆行していることまで推測を立てた。


 ちなみに、制服の自己修復機能と回復機能は恐らくゲーム内に怪我や服の損傷の概念があるが、時間経過で治るためであろうと結論付けた。


 と、そんなことを色々ぼかして説明したが黒髪十四歳美少女は首を傾げた。

 あ、変身解けた。


「何で元の姿に戻ったんだよ?」

「まだ力の回復が出来てないからな」

「マジかよ。あーでもアレだ。マスコットみたいな小さな姿にはなれるだろ。たしか、省エネも兼ねてるって聞いたけど」


 「マスコット」と「省エネ」と言う言葉に首を傾げながらもまたもや影は変身した。

 影は随分と小さくなり、浮遊する紫色のぬいぐるみのような見た目になった、

 和のテイストとジグザグと縫ったような見た目が印象的だ。

 小さな耳のような角のような尖った何かが頭についている。これの折れ方が完全にぬいぐるみだ。


「で、契約できるの?えーと……」

「好きに読んでくれて構わん」

「じゃあ、カゲで。で、どう?」


 影、改めカゲに問いかければ品定めをするように俺を見た。


「先も言ったがご主人様は高い素養がある。術者契約は容易い」

「おおっ。じゃあ、早速頼む。あと女の子じゃないならご主人様いらない」


 俺の予想はあっていた。

 やはりだ。プレイヤーとしての身体であれば当然最強になる余地があると言う事だ。

 俺とカゲの間に光で出来た糸のようなモノがつながる。

 納豆から伸びる鬱陶しい糸のように紫色に光るそれらは俺たちを結んだ。


 ついに、俺も魔法少女になるのだ。


「我、ここに契約を結ばん」


 カゲの言葉を合図とするように、契約はなされた。

 なんか力がみなぎって来た気がする。

 これで、登校中に襲って来たインベーダーをボコれるぜ。

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これホントにチュートリアル? 裏ボスでは?
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