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TS転生した俺は魔法少女になれないらしい  作者: えとう えと
二章

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28/82

仲良し!


「実際面識があるのは久篠と水戸守だけですけど、少なくともあと四人、私たちと同じだけの力を有する者がいます」


 ヒナリへの聴取を続けた結果、新たに判明したのはそんな事実だった。


「なんで分かる?」

「魔法少女になる前に、知性体が接触してきました。ずっと前の滿汐で偶然を装って」


 そんな彼女は、インベーダーに身体をいじられてから一年も経たないタイミングであったと言う。


「そこで、聞きました。お前の他にも自身に因子を取り込ませインベーダーへと堕とした個体を殺したものが七人いる。そしてそれを「死神の子」と呼称し、委員会内部へと入り込めと」


 指針となる命令がなければ、考えを誘導しても意味がない。

 そう言った考えの元の接触だったのだろう。


「その結果、私は魔法少女になり、そして情報を得たからこそ、他の二人を見つけ出して接触しました」


 インベーダー因子を取り込み、生きていると言う事は逆説的に魔法少女の才もあると言う事を指すらしい。

 故に、彼女らは魔法少女になったと言う。


「その知性体は?」

「助けに来た魔法少女に倒させました。それと再度の接触はないです」

「まあ、そうか。魔法少女になった以上知性体は例外なくA級指定、配信が自動で始まる以上、会話は出来ないか」

「そういうことです」


 ならやはり、死神の子とやらの他二人に接触するほかないか。

 そんなことを考えていると不意にヒナリが俺の後ろに隠れるように回る。

 何かあるのかと思いながら彼女の視線の先を見れば、見慣れた少女たちが居た。

 綾谷もみじとその友達の緑子と寧々華と言う少女。


「なんだ?知り合いか?」

「は、はい。少し顔を合わせたくない相手で」


 インベーダー、魔法少女と言っても、顔を合わせたくない相手くらいいるか。

 まあ、丁度ヒナリの学校との分かれ道だしな。


「ここまでだな。じゃあ、放課後は頼んだ」

「はい」


 彼女が何とか他二人との予定を取り付けたのは今日の放課後。それまでは学校に行かなければならないので、途中で別れた。


「ひ、ひひ、比果さんっ。あ、あの人誰?」


 と、ヒナリと別れてすぐにもみじがこちらに駆け寄って来た。

 指を指すのは後ろ姿のヒナリ。

 少なくとも彼女が顔を合わせたくないと言うのはもみじではなさそうだ。


「ああ、友達……いや、違うか。説明が難しいな」

「え?友達以上ってこと?」

「落ち着いて」


 どんな解釈をしたか知らないが真っ青になっていくもみじに声をかける。

 ただ、彼女とは友達と言える関係ではない。

 知り合いが精々だろう。


「……女の子を紹介してくれる人?」

「女の子を紹介してくれる人!?」


 なんか違うか。





 ◆


 「ごっめ~ん。遅くなっちゃった~」


 短いスカートを揺らしながら手を振ったヒナリは、「段々と暑くなってきたね」なんて言いながら席に着いた。

 彼女が座ったのはカフェにあるテラス席。テーブルにはすでに二人の少女の姿があった。


「おそいよぉ。もう私たちケーキ二個目だし」

「キイカちゃん食べ過ぎ」


 髪を二つ結びにして、フォークを持つ少女、久篠キイカにヒナリはそう言って笑う。


「ふふ。キイカさんはともかく私はまだ食べ終わってないですけどね」

「でも、頼んでんじゃん!」


 口を押えて上品に笑う少女は、水戸守ティナだ。

 彼女は長い髪を降ろしている。


「じゃあ、私も頼んじゃおっかな!二人は何食べたの?」


 メニューを見ながらヒナリは二人に声をかけて、それぞれに聞く。

 そして、最終的に選んだケーキを店員に頼んだ。


「うわ~おいしそう!」

「結局私たちが選んだのと違うじゃん!」


 そんな真っ先に写真を撮りながらツッコミをキイナにいれられながらも、一口食べて「おいしい~」と唸った。

 そして、すでにケーキを食べ終えていたキイナは「で」と声を洩らした。


「遅刻した挙句に、アホ面さらしながらケーキを頼んだヒナちゃんが、私たちを呼んだ理由ってなぁに?」

「ああ、そんな小さい事ずっと気にしてたんだね!ごめんね!キイナちゃんの歩幅だと凄く時間が掛かっちゃうと思って、少しゆっくり来たんだよね!」

「ふぅん。私より、数センチ身長が高いだけでそこまで移動速度に差が出ると思っちゃうだなんて。大きな脳みそが入っているからそんな……ぷっ、顔してると思ってたけど、やっぱり栄養は全部その無駄な脂肪に行っちゃったみたいだね」

「せっかく楽しい時間なんですから、そんな小さい二人の……失礼、二人の小さな差異なんかで競わないでください。私から見れば二人とも変わりませんよ」

「「あ?」」


 ヒナリとキイナはティナの言葉にハモる。


「そう言えば、此処から学校が近いですけど、同じ学校の人にこんな姿を見られても良いのかしら」

「「っ」」


 二人は、そろって息をのむ。

 自身と同じ制服を着た生徒がいないかと見渡した。

 だが、その様子にニヤリとティナは笑みを浮かべた。


「まあ、すでに音に対しての対策をしているから、お二人がその変顔をやめればバレることはありませんがね」

「「してない!」」


 二人は声を上げた。


「……で、ホントに何?」


 音に対しての対策をしていると言う話を聞いたからかキイナは口調を変えて、手入れされた長い爪でストローをはじきながらスマホを見ていた目をちらりと向ける。


「うん。実はさ、頭にくるインベーダーの命令。それを断ち切れる方法があるって言ったらどうする?」


 あくまでも、提案のような形で彼女は話し出した。


「それ、本気で言ってる?」


 疑い深そうな声音で、キイカはそう問うた。

 確かに、ヒナリ自身同じように、命令を解く方法があるかもしれないと言われてもそう簡単に信じることは出来なかっただろう。

 絶対に解けない呪縛であると思っていたし、比果比五子が特別なだけで普通はありえない出来事だろう。

 しかし、ヒナリは実際体験している。嘘ではないのだ。


「本気だよ。超本──」


 ドンッとテーブルが叩かれる。

 叩いたのはキイナだ。


「冗談でも言わないで。私帰る」


 そう言って、鞄を持ち上げた彼女はその場を離れた。





 ◆

 

「え?帰ったの?」

「はい。……なんか、はい」


 HRが終わるのが遅くなり、待たせて悪いなと思ったが俺がついた時にはヒナリともう一人の少女水戸守ティナしかいなかった。


「で、でも、任せといてください。必ず、連れて来ます」

「そう?」


 手伝うくらいしても良かったと思ったが、ヒナリは任せろと言うので任せることにした。

 まあ、面識のない俺が出来ることなどないしな。

 

「あの~。私はお願いしてもいいですか?」


 そして、ティナはオーケーと言う事らしい。

 と言う事で、彼女にはヒナリにしたのと同じように、命令の根幹を断つ。


「本当に聞こえなくなった……」


 信じられないとばかりの顔をした。

 

「でも、ヒナリの時みたいに泣いたりしないんだな」

「ちょっと、比五子ちゃん!」

「まあ、私は割と耐えれるタイプだったので」


 「無いに越したことはありませんけれど」とティナは言う。

 精神力強すぎかよ。

 一瞬でも、触れた俺からすれば、その発言には驚かざるを得ない。


「まあ、いいや。もう一人の方も頼むな」

「は、はい!もちろんです。……って、水戸守!なによその顔!」

「いえ」


 何があったか知らんが、キイナとかいう方も対処しときたいしな。

 




 ◆


「はぁ」


 テーブルに叩きつけた手をさすりながらキイナはため息を吐く。

 自宅の前で辛気臭い表情を振り払ってドアを開ける。


「ただいま~」


 明るく振舞い家へと入り、靴を揃える。

 家の中に背を向けていると声がかかった。

 

「キイナさん。定期考査の結果はどうでした?」


 母の声だ。

 振り向き目に映るのは、自分とは対照的なスラリと伸びた女性。

 キチリとした印象を抱かせる母は直近で行われた定期考査の結果を聞いてきた。


「えっと、数学は98点でした……。で、でも!他は100点で」

「そうですか。……まあ、いいでしょう。くれぐれも恥ずかしい点は取らないでくださいね」

「……わかりました」


 キイナは母の言葉にそう返答した。

 頭を下げたまま自室へと向かった。


 いつもこうだ。

 両親は、キイナに期待していない。

 いや、むしろ邪魔に思っている。


 昔から、父と母はキイナに恥をさらすなと言った。

 自身のメンツを気にするような発言をし、キイナの失敗を嫌った。

 外面ばかりを気にして、かくあれと教え込んだ。

 期待ではない。自身に泥を塗る存在でないか気が気でないのだ。


 だから、髪を染めた。

 構って欲しいからと子供の様な真似をした。

 怒られてもいい。それでも、両親が自分に目を向けてくれたらと思った。

 だが、母は何も言わなかった。

 ただ、心底残念そうな、出来損ないを見るような目をしてため息を吐いただけだった。


 ああ、ダメなんだ。そう思った。

 だから。


 自分を求めてくれる頭の奥の声にすがった。

 命令をくれる。必要とされていると分かる。

 満たされる気がした。


 インベーダーに因子を植え付けられた時、頭の中で響く命令に耐えきれなかった。

 苦痛で仕方なくて、自身をインベーダーへと変質させた個体を殺した。

 頭を振っても止まない声が幼いキイナの精神を蝕んだ。

 だがそれでもキイナを満たしてくれるこの声をいつしか求めるようになった。

 求められたくて求める。その繰り返し。


 だからこそ、先ほどの中滝ヒナリの言葉には我慢ならなかった。

 命令を断つ方法などあるわけがないが、もしあったとしても願い下げだ。


「今更、取り上げないでよ」


 キイナは一人呟いた。

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