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TS転生した俺は魔法少女になれないらしい  作者: えとう えと


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14/14

始まるよ!


 転生して、この世界は「魔法少女メーカー」のゲームの世界だろうと予測を立てた。

 タイトル画面の制服しかり、俺の転生先の身体がキャラクリエイトで俺が作ったものであることしかり。

 レベルアップとか、まあ、その他色々を鑑みれば「そうだ」としか言いようがない。


 しかし、最近不意に少し状況が違うのではないのかと思い到った。

 それは魔法少女朝桜こと綾谷もみじの存在を見た時の違和感からだ。


 まあ、結論から言えば、この世界は……と言うより、「魔法少女メーカー」と言うゲームそのものが原作在りきのソシャゲである可能性だ。

 前世ではSNSで流行っていたからまさかと疑うことはなかったが、一年も続かずにサ終の珍しくないタイプのゲーム群によくあるジャンルのソレだと疑ったわけだ。

 まず、綾谷もみじが魔法少女に変身した時に、ピンクを基調とした姿に変わるところからなんか主人公っぽくない?と思ったわけだ。

 それと、ずっと最下位にいてそこから脱した彼女の成長スピードは突出している。加えて、あの魔法少女の鑑と言える素晴らしい精神。

 うん。めっちゃ主人公っぽい。


 で、あの狂人似非言語学者の琴浦の存在だ。

 あいつがバランスブレイカー過ぎる。

 なんだよ魔眼コンタクトって。

 加えて、ゲームによくいるクエスト受注キャラ。多分原作にはいない。ゲームオリジナルなのだろう。魔眼コンタクトも含めて。

 

 で、なんでそんなことを考えているかと言うと、ここに来て原作付きゲーム説が補強されたからだ。


 何があったかと言えば、いつものようにエンカウントしたインベーダーを倒して、ガラにもなく散歩がてらフラフラとあたりを散策していた時、見知った人影を公園のベンチで見たのだ。

 それが、魔法少女朝桜であり、推定主人公の綾谷もみじだった。こんなに忙しく悩みを抱える存在は主人公くらいだろうと決めつけたのだ。

 そして、ふさぎ込んだ様子を見せる彼女につい声をかけた。


「比果……さん?」


 驚いたような顔を見せるもみじの隣に腰かけた。


「もみじさんも散歩?」

「う、うん。……そんなところ」


 適当にとぼけて見せれば、もみじは会話に乗って来た。

 

「比果さんは家から少し離れているよね?」

「うん。まあね。……あれ?何で知ってるの?」

「………………なんとなくだよ。学校には徒歩で通ってるみたいだからこの辺じゃないだろうと思って」


 なんか凄い間があった気がするが、まあいいか。

 今は、俺の事ではなくもみじのことだ。

 原作のストーリーであれば、彼女の悩みを聞く人物が居るだろうが、もし、ゲームオリジナルのイベントで悩みを彼女が抱えていれば、悩みを聞くのはプレイヤーだろう。下手に放置して、世界の危機にでもなったらたまらない。

 

「もみじさんは家、この辺なの?」

「ううん。でも、少し考え事をしてたら遠くまで来ちゃった」

「考え事?」


 俺が踏み込めば、もみじは押し黙る。

 だが、意を決したように息を吐いて声を出した。


「……実は、少し悩んでいることがあって。詳しくは言えないんだけど……私に力が足りなくて、皆と一緒に戦えないから一緒の任務につけなくて……」


 そうして話したのは、自身の力不足への嘆きだった。

 前と同じこと言ってね?とは言わなかった。きっと女の子にしか分からない心の機微があるのだろう。

 大体、話を聞いた限り力が足りないから魔法少女仲間の中でのけ者になってしまったとかそんな感じみたいだし。

 確かに、あの緑子とかいう子気が強そうだったし、弱いからと言う理由でハブられたのかもしれない。おのれ緑子。


 しかし、下手なことは言えない。

 女子の複雑な人間関係には疎いしなぁ。

 

 そんなことに頭を悩ませてみれば、不意に嫌な感覚が俺を襲った。

 空間に皹が入るようにして、亀裂が入るのおを見る。

 どうやら、持病のエンカウント病(呪い)が発動したようだった。






 ◆


 天坂エリア内で強力なインベーダー反応が出たのは、比果比五子と綾谷もみじの目の前に異変が訪れたのと同時だった。

 検知器が反応を示し、同時に待機していた天坂地区を管轄とした魔法少女翠冷、魔法少女竜星、魔法少女雪砂のA級上位に位置する三名が現場に急行した。

 魔法少女の移動速度、待機位置からの距離的問題的に異変検知からインベーダーの上陸までにその場に到着した。


「なに、この反応……」


 未だ空間に皹が入るだけにとどまっているのにも関わらず、尋常ではない気配を感じ取った魔法少女翠冷は言葉を洩らす。


「A級指定インベーダー換算で十体……と言ったところでしょうか?」


 緑子(翆玲)の呟きに白を基調とした衣装に身を包んだ白亜(雪砂)が予想を口にする。

 そんな二人の話を聞いた寧々華(竜星)は「ひぇえ」と驚いて見せた。ただ、「まあ、でも」と続けた。


「私たちなら、何とか出来るよねー」


 マイペースな少女の言葉に他の二人も頷いて見せた。

 だが、次の瞬間彼女らの認識と現実に相違があることを目の当たりにする。


 ひび割れた空間の穴は剥がれるように大きくなり、一つの影が姿を現した。

 知性体に多い、二足歩行型の二メートル近い巨体が現れた。

 

 そして、潜伏していたはずの翆玲に視線を動かした。


「S級と言う奴ではないな。勘が外れたか」


 感づかれた。

 その事実に翆玲は驚き、そして自身の実力に落胆の様子を取ったのを見て不満を覚える。

 そしてバレているのならこれ以上隠れていても仕方がないと、雑居ビルの上から飛び降りた。


「どういう意味かしら?」

「そのままの意味だ。ハズレだと言ったんだ。人間」


 対話をして感じることは、知性体の中でも言語能力に秀でていること。

 それと同時に、尋常でない力を秘めていること。何より、雪砂の言葉を考えればA級インベーダー十体分の気配を持っていることだ。

 ただ、そんな思考を遮るように戦闘の個体が口を開く。


「まあ、すぐに死ぬのだ。理解しろとは言わない」


 その言いように言い返しそうになった、翆玲は自身の口から漏れ出たのは言葉ではなく血であることに遅れて気付いた。


「かはっ」

「ただ、一応教えておいてやる。お前の敗因は、会話に興じて唯一の勝機へ繋がる可能性のあった一手目をみすみす放り出したことだ」


 死の宣告と同時に、インベーダーは説教を始めた。

 だが、そんなことは翆玲だって……。


「わかっているわよ……!」


 だからこそ、すでに一手目は討っていた。


「───!?」


 遅れて気付くのは、インベーダーの脚に霜がはっていく様子。

 翆玲は会話の前に、着地時点で足元に自身の魔法である「氷葉」で作り出した葉っぱを落としていた。

 そして、目にも留まらぬ一瞬の踏み込みをしたインベーダーと言えど、それに触れれば魔法の効果から逃れることはできない。

 翠冷の氷はわずかにインベーダーの動きを阻害する。

 その一瞬で、すでに背後には雪砂と竜星の攻撃が迫っていた。


「遅い」


 背後に注意を向けようとしたインベーダーに雪砂はそう吐き捨てて魔法を発動する。

 魔法「削花」。雪砂のステッキは先端をつぼみが模した造りになっており、まるで花開くように変形したステッキは回転を開始する。それが横向きに倒れてさながら巨大なピザカッターのような形状になる。

 そして、その攻撃はインベーダーの身体を削りとる。

 それと同時に攻撃を与えたのは竜星。

 魔力で象った竜の爪は確実に深く傷を入れた。


 だが、それを受けてなお、インベーダーは倒れることはない。


「話に聞いたS級には遠く及ばないが、少し見くびっていた」


 インベーダーは無機質な陶器のような質感のある身体から一本の剣を抜いた。


「こちらも武器を抜こう」


 それと同時に剣戟を放たれる。

 狙われたのは背後を取った二人。

 横凪の剣は弧を描き、何とか防御をするも二人は後方へ身体を吹っ飛ばされる。


 だが残る翠冷もそれを心配する隙はない、翻った剣に集中して防御を固めようとして、インベーダーの蹴りを喰らう。


「ぐぅ」


 声をこらえながら、すでに復帰した二人を視界に抑えた。

 当然、インベーダーもそれを察知するも、翠冷の魔法が霜を張る。

 だが。


「それは見ている」


 足止め程度にもならない。

 翠冷の魔法「氷葉」の生み出す霜はある程度の強度を誇り、時間経過で厚みを増して氷と言えるものへと変化していく。

 だが、通常のA級個体の非にならないこのインベーダーに対しては、僅かな時間で張れる霜では太刀打ちできない。

 

 しかし。


「止めるか」

「まあね!」


 なす術もないと思えた剣の一閃は、竜星の象った爪によってその動きを止める。

 すかさず、下段から振り上げるように雪砂のステッキが胴に攻撃を仕掛ける。

 だが、それは紙一重のところで躱された。

 しかし、体の仰け反った不安定な態勢で、後方から翠冷がステッキ振り上げる。


「お前はもういい」


 すでに、インベーダーには翠冷への脅威を感じることはない。

 彼女の唯一の対抗手段は魔法だろう。だが、初見殺しももうできなくては只の殴打。

 何の意味もない。

 意図もたやすく横凪は翠冷へと入り、握ったステッキは手を離れる。


 そして、そのまま旋回するように後方へ迫る竜星を剣でなぐ、武器を挟まれるもそう何度も受け止められないのだろう、体は後方へと飛んでいく。

 だが、同時にインベーダーの剣が粉々に砕ける。

 遅れて気付くのは、翠冷の魔法が発動したと言う事。

 先ほど横凪の攻撃を入れた際に彼女の体の間に「氷葉」を挟んでいたことは知っていた。

 だが一度もインベーダーは彼女の魔法の本領を目にしていなかったために気付けなかった。

 「氷葉」の真の能力は、対象を凍らせて彼女のステッキで叩くことで粉砕すると言う物。

 先ほど、切られた瞬間に手放されたステッキは竜星が受け取り、攻撃を凌ぐ特に使われた。その際、剣だけを対象に定めた「氷葉」が発動し、本来砕けるはずのない剣が砕けた。


 そして、これは最後のチャンスだ。

 翠冷はもう完全な戦闘不能、竜星も疲労が激しい。

 今この瞬間に動いているのが、雪砂の一人であり、相手が武器を手放し不意を突けるのはこの一回が最後だろう。

 ここは外せば次はない。

 だから、絶対に奴に刃を届かせようと考え、声を洩らした。


「な!?」


 ステッキが前方飛んできた何かによって、弾かれる。

 それは、インベーダーが投擲してきたものであり、攻撃が当たるまで気付くことが出来なかった。

 剣同様身体から抜き取られたそれを予想するすることは困難。

 だが、どんな言い訳をしても最後のチャンスは潰え、雪砂は絶望に染まりそうになり……「え?」と声を洩らした。


 その瞬間視界に収めたのは遥か上空からの黒い刃による一太刀。

 インベーダー自身も九死に一生を得て、気が緩んだのだろう。そんな隙をつくように金の髪を携えた少女がインベーダーの首を落とした。

 そして、それは紛れもなく魔法少女コフィンの姿であった。

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