ガンダムという名の革命 第4話:視聴率という名の敗北
作者のかつをです。
第十三章の第4話をお届けします。
一度は完全に「敗北」したガンダム。
しかしその物語がいかにしてファンの熱狂によって命を吹き込まれていったのか。
今回はその奇跡の復活劇の序章を描きました。
※この物語は史実を基にしたフィクションです。登場する人物、団体、事件などの描写は、物語を構成するための創作であり、事実と異なる場合があります。
『機動戦士ガンダム』は打ち切られた。
当初一年間の放送予定だった物語は短縮され、43話でその幕を閉じることになった。
富野喜幸たちの革命は、視聴率という絶対的な壁の前に無惨に敗れ去った。
商業主義への反逆は失敗に終わったのだ。
サンライズのスタジオは重い敗北の空気に包まれていた。
しかしその厚い厚い敗北の灰の下で。
一つの小さな、しかし確かに熱い火種が生まれようとしていた。
その火種に最初に気づいたのは、アニメ雑誌の若い編集者たちだった。
『アニメージュ』や『アニメック』。
当時創刊されたばかりのそれらの雑誌の編集部に、読者からの熱狂的なファンレターが殺到していたのだ。
そのほとんどが中学生や高校生といったティーンエイジャーからだった。
「ガンダムは今までのどんなアニメとも違う!」
「アムロの苦悩が自分のことのように胸に突き刺さる」
「シャアがカッコよすぎる! 彼は本当に悪役なのか?」
低年齢の子供たちには届かなかった富野の深いメッセージ。
それを感受性の強いティーンエイジャーたちが確かに受け止めていたのだ。
彼らはガンダムのリアルな人間ドラマと緻密なSF設定に、完全に心を奪われていた。
アニメ雑誌の編集者たちは気づいた。
これは事件だ。
視聴率という古い物差しでは決して測ることのできない新しい「熱」が今生まれようとしている。
彼らは我先にとガンダムの特集を組んだ。
富野喜幸へのロングインタビュー。
安彦良和が描く美麗なイラスト。
モビルスーツの詳細な設定資料。
その特集記事は爆発的な反響を呼んだ。
雑誌は完売し増刷に次ぐ増刷。
それまでアニメ雑誌の主役は『宇宙戦艦ヤマト』だった。
しかしガンダムはその絶対的な王者の座をあっという間に奪い去ってしまった。
水面下で熱は確実に高まっていた。
しかしそれはまだ一部の熱心なマニアだけの閉じた熱狂だった。
テレビ局もスポンサーもその新しい熱の本当の価値にまだ気づいてはいなかった。
打ち切りという烙印を押されたガンダム。
その死んだはずの物語がやがて不死鳥のように蘇ることになる奇跡の翼。
その翼はファンの熱い熱い「愛」によって少しずつ形作られていこうとしていた。
まだ誰もその奇跡を信じてはいなかった。
富野喜幸、本人でさえも。
最後までお読みいただき、ありがとうございます!
この時アニメ雑誌が果たした役割は非常に大きいものでした。視聴率というたった一つの指標だけでは作品の価値は測れない。そのことを彼らは証明してみせたのです。まさにファンのメディアによる革命でした。
さて、一部のマニアの間で熱狂的な人気を博したガンダム。
その熱はやがて社会を動かす巨大なうねりとなります。
次回、「再放送とプラモデル」。
ついにガンダムが本当の意味で国民的コンテンツとなるその瞬間が訪れます。
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