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漫画創世記~ペン先は世界を描いた~  作者: かつを
第3部:文化の変革編 ~ブラウン管と二次創作~
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鉄腕アトム、お茶の間へ 第6話:マーチャンダイジングの誕生

作者のかつをです。

第十二章の第6話をお届けします。

 

どんな偉大な発明も必ず光と影、両方の側面を持っています。

今回は『鉄腕アトム』が生み出した「キャラクタービジネス」という光の裏にあった知られざる「影」の物語に光を当てました。

 

※この物語は史実を基にしたフィクションです。登場する人物、団体、事件などの描写は、物語を構成するための創作であり、事実と異なる場合があります。

『鉄腕アトム』のキャラクタービジネスの大成功。

それは日本の産業界全体を揺るがすほどの巨大なインパクトを持っていた。

 

それまで子供向けの商品といえば野球盤やベーゴマといった伝統的なおもちゃが主流だった。

しかしアトムの登場はその牧歌的な市場を一変させた。

 

テレビという最強のメディアと連動したキャラクター。

その圧倒的な訴求力。

企業は喉から手が出るほどその魔法の力を欲しがった。

 

アトムのマーチャンダイジング(商品化)はあらゆる分野へと広がっていった。

お菓子、ジュース、文房具、衣服、自転車……

街にはアトムの顔が溢れかえった。

 

それは日本における「キャラクター」というものが「産業」として産声を上げた記念すべき瞬間だった。

 

しかしその華やかな成功の光の裏側には一つの濃い「影」もまた生まれていた。

 

アトムはあまりにも強すぎたのだ。

 

子供たちはアトムが描かれていない商品を見向きもしなくなった。

アトムのライセンスを手に入れられた大企業だけが市場を独占していく。

これまで地道に子供たちのためのおもちゃを作り続けてきた多くの中小企業が、その圧倒的な力の前になすすべもなく姿を消していった。

 

そしてその影はテレビの世界にも広がっていた。

 

『鉄腕アトム』の大成功を目にした他のテレビ局や広告代理店。

彼らはこぞって第二、第三のアトムを求め始めた。

 

「おもちゃが売れるアニメを作ってくれ」

 

アニメはもはや純粋な物語の表現の場ではなくなった。

それは「おもちゃを売るための30分間のコマーシャルフィルム」という側面を強く強く持つようになっていったのだ。

 

スポンサーである玩具メーカーの意向が物語の内容にまで口を出すようになる。

「もっとロボットが活躍するシーンを増やしてください」

「新しい合体メカを登場させてください。すぐに商品化しますから」

 

作り手の創造の自由は少しずつスポンサーの商業的な論理の前に蝕まれていった。

 

手塚治虫が自らパンドラの箱を開けてしまったのかもしれない。

彼が赤字地獄から抜け出すために編み出した苦肉の策。

そのマーチャンダイジングという錬金術が巡り巡って未来のアニメーターたちの首を絞める呪いにもなっていたのだ。

 

光と影。

『鉄腕アトム』が日本のポップカルチャーにもたらしたものは決して単純なサクセスストーリーだけではなかった。

それは商業主義と芸術性の狭間で永遠に揺れ動き続けることになる日本のアニメ文化の「宿命」そのものの始まりでもあった。

最後までお読みいただき、ありがとうございます!

 

この「おもちゃを売るためのアニメ」というビジネスモデルは後に『マジンガーZ』や『機動戦士ガンダム』といった巨大ロボットアニメの一大ブームへと繋がっていきます。しかしそのガンダムもまたこの商業主義との激しい戦いを繰り広げることになるのです。

 

さて、光と影両方を生み出した『鉄腕アトム』。

その日本初のテレビアニメは現代の私たちに何を遺したのでしょうか。

 

次回、「テレビの前の子どもたち(終)」。

第十二章、感動の最終話です。

 

物語は佳境です。ぜひ最後までお付き合いください。

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もし、この物語の「もっと深い話」に興味が湧いたら、ぜひnoteに遊びに来てください。IT、音楽、漫画、アニメ…全シリーズの創作秘話や、開発中の歴史散策アプリの話などを綴っています。


▼作者「かつを」の創作の舞台裏

https://note.com/katsuo_story

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