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漫画創世記~ペン先は世界を描いた~  作者: かつを
第3部:文化の変革編 ~ブラウン管と二次創作~
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鉄腕アトム、お茶の間へ 第1話:漫画が動く日

作者のかつをです。

 

本日より、第十二章「鉄腕アトム、お茶の間へ ~日本初のTVアニメシリーズ制作秘話~」の連載を開始します。

今回の主役は、今や世界に冠たる「ANIME」文化。

そのすべての原点となった、日本初の連続テレビアニメ『鉄腕アトム』の、知られざる誕生の物語です。

 

※この物語は史実を基にしたフィクションです。登場する人物、団体、事件などの描写は、物語を構成するための創作であり、事実と異なる場合があります。

2025年、東京。

 

深夜のリビングで一人の会社員が、動画配信サービスの新作アニメを観ている。

毎週更新されるお気に入りの作品。キャラクターたちは滑らかに動き、豪華な声優陣の声で命を吹き込まれ、壮大な音楽が物語を盛り上げる。

 

私たちはその「当たり前」の夜を享受している。

漫画のキャラクターがテレビ画面の中で動き、喋り、戦う。そのことに、もはや何の疑問も抱かない。

 

しかし、その「当たり前」がかつては存在しなかった。

「アニメは映画館で年に一度観る特別なもの」という常識を、たった一人の男が無謀な情熱で破壊した、知られざる戦いの物語である。

 

これは、漫画の神様・手塚治虫が挑んだ、もう一つの、そして最も過酷な創世記の物語だ。

 

 

物語の始まりは1961年。

漫画家として不動の地位を築いていた手塚治虫は、一つの新しい夢にその身を焦がしていた。

それは彼が幼い頃から何よりも愛してきた「アニメーション」の世界への再挑戦だった。

 

彼はすでに東映動画という巨大なスタジオで、劇場用長編アニメの制作に関わっていた。

しかしその現場で、彼は深い絶望を味わっていた。

 

東映動画が目指していたのは「東洋のディズニー」。

何百人ものアニメーターが何年もの歳月をかけて、一本の完璧なフルアニメーション映画を作り上げる。

その芸術性は高い。しかし、そこには作り手の個性が入り込む隙間はほとんどなかった。

巨大なシステムの一部として歯車になること。それが彼には耐えられなかったのだ。

 

「僕が本当に作りたいのはこれじゃない」

「もっと実験的で、もっと僕自身の作家性をダイレクトに反映させたアニメーションが作りたいんだ」

 

彼は東映動画を飛び出した。

そして自らの理想の城を、ゼロから築き上げることを決意する。

 

1961年、東京・練馬区に小さなプレハブのスタジオが産声を上げた。

その名は「手塚治虫プロダクション動画部」。

後の「虫プロダクション」である。

 

そこに集ったのは、手塚の熱意に惹かれたまだ何者でもない若きアニメーターたちだった。

彼らの武器は、ボロボロの中古の机と情熱だけ。

 

しかし手塚の頭の中には、すでに壮大な野望が明確に描かれていた。

映画ではない。

これからのメディアの王様は、間違いなく「テレビ」だ。

 

「毎週30分。僕の漫画のキャラクターたちが、お茶の間のブラウン管で動き出すんだ」

「日本で、いや世界で最初の連続テレビアニメシリーズを、僕たちの手で創り出すんだ!」

 

そのあまりにも壮大で無謀な宣言に、若いスタッフたちはただ息を呑むしかなかった。

週刊連載という地獄を知る彼らでさえ、毎週30分のアニメを作り続けることがどれほど狂気の沙汰であるか、想像もつかなかったのだ。

 

神様の新たな、そして最も無謀な挑戦が始まろうとしていた。

最後までお読みいただき、ありがとうございます!

第十二章、第一話いかがでしたでしょうか。

 

手塚治虫は漫画家であると同時に、生涯を通じてアニメーション作家であり続けたいという強い情熱を持っていました。彼にとって漫画は、アニメを作るための資金源であり実験場でもあったのです。

 

さて、あまりにも無謀な「週一放送」という目標。

神様は一体どんな魔法で、その不可能を可能にしようとしたのでしょうか。

 

次回、「週一放送という無謀」。

予算と時間の壁が、彼らの前に立ちはだかります。

 

ブックマークや評価で、新章のスタートを応援していただけると嬉しいです!

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もし、この物語の「もっと深い話」に興味が湧いたら、ぜひnoteに遊びに来てください。IT、音楽、漫画、アニメ…全シリーズの創作秘話や、開発中の歴史散策アプリの話などを綴っています。


▼作者「かつを」の創作の舞台裏

https://note.com/katsuo_story

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