『少年ジャンプ』が愛読者賞を始めた日 第7話:最強の作り方(終)
作者のかつをです。
第十章の最終話です。
一雑誌の成功の物語がいかにして日本のポップカルチャー全体の作り方を変えていったのか。
この物語全体のテーマに立ち返りながらジャンプの偉大な功績を締めくくりました。
※この物語は史実を基にしたフィクションです。登場する人物、団体、事件などの描写は、物語を構成するための創作であり、事実と異なる場合があります。
『週刊少年ジャンプ』がたった10年で王座へと上り詰めるために作り上げた最強のシステム。
その革命的なものづくりの思想は、後の日本のあらゆるエンターテイメント産業に計り知れない影響を与えていくことになる。
友情、努力、勝利。
その普遍的なヒットの法則。
読者の声を神の声として絶対視するアンケート至上主義。
新しい才能を読者と共に発掘し育てる新人賞のシステム。
そして育てた才能を他社には渡さない専属契約制度。
そのすべてがあまりにも合理的で、あまりにも強力だった。
テレビ局はジャンプのヒット漫画を次々とアニメ化した。
そこにはすでに読者アンケートという市場調査でヒットすることが約束された物語があったからだ。
ゲーム会社はジャンプのキャラクターをゲーム化した。
そこにはすでに日本中の子供たちが熱狂する魅力的なヒーローたちがいたからだ。
ジャンプはもはや単なる一雑誌ではなかった。
それは日本のポップカルチャーを生み出す巨大な「工場」そのものとなったのだ。
……2025年、東京。
動画配信サイトで世界的な大ヒットとなっている一本のアニメ。
その原作は『週刊少年ジャンプ』の最新の連載漫画だ。
国境を越え世代を超え、その物語は世界中の人々の心を熱くさせている。
そのアニメを夢中になって見ている一人の少年。
彼は知らない。
今自分の心を震わせているその熱い物語の作り方の「設計図」が。
半世紀以上も前に後発の三番手だった一握りの編集者たちが逆境の中で必死に作り上げたものだということを。
「読者の心を熱くする」。
そのたった一つの目的のために彼らが築き上げた最強のものづくりの哲学。
その魂が今もこの作品の中に脈々と受け継がれているということを。
歴史は遠い過去の成功譚ではない。
私たちの心を震わせるエンターテイメントのそのど真ん中に、確かに生き続けているのだ。
少年は画面に向かって叫んだ。
「頑張れ!」
その純粋な応援の声。
それこそがジャンプが半世紀以上にわたって探し続けてきた、たった一つの宝物だったのかもしれない。
(第十章:赤字覚悟の65万部 ~『少年ジャンプ』が愛読者賞を始めた日~ 了)
第十章「『少年ジャンプ』が愛読者賞を始めた日」を最後までお読みいただき、本当にありがとうございました!
ジャンプのこのあまりにも強力なシステムは時に作家の才能をすり潰してしまうという負の側面も持ち合わせていました。しかしこのシステムがなければあれほどの国民的ヒット作が次々と生まれることもなかったでしょう。まさに光と影ですね。
さて、第二部「産業の夜明け編」は、この章で一区切りとなります。
次なる物語は戦いの舞台を出版社の会議室からファンの「熱狂」そのものへと移します。
次回から、第三部が始まります。
**第十一章:壁の向こうの熱狂 ~コミックマーケット、たった32のサークルから~**
商業誌とは全く別の場所でファンが自らの手で物語を創り共有する。
あの「コミックマーケット」はいかにして世界最大のポップカルチャーの祭典へと成長したのか。
その知られざる創世記の物語が始まります。
引き続き、この壮大な漫画創世記の旅にお付き合いいただけると嬉しいです。
ブックマークや評価で応援していただけると第三部の執筆も頑張れます!
それでは、また新たな物語でお会いしましょう。
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