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漫画創世記~ペン先は世界を描いた~  作者: かつを
第1部:表現の創世編 ~ペン先から生まれた宇宙~
6/18

神様と呼ばれた男 第6話:ライバルたちの模倣と嫉妬

作者のかつをです。

第一章の第6話をお届けします。

 

どんな天才も、その登場は、旧来の価値観との衝突を生みます。

今回は、時代の寵児となった手塚治虫が抱えていた、栄光の裏の、知られざる苦悩と孤独に、光を当てました。

 

※この物語は史実を基にしたフィクションです。登場する人物、団体、事件などの描写は、物語を構成するための創作であり、事実と異なる場合があります。

『新宝島』の成功は、手塚治虫に、栄光と、そして、重い十字架を背負わせることになった。

 

彼の前に、原稿依頼が、殺到した。

子供たちは、彼の、新しいスタイルの漫画を、熱狂的に求めていた。

彼は、医学生との二足のわらじを履きながら、猛烈なペースで、次々と、傑作を生み出していく。

『ジャングル大帝』、『鉄腕アトム』、『リボンの騎士』……

 

しかし、その華やかな活躍の裏側で、彼は、常に、孤独だった。

 

彼の、あまりにも革新的な手法は、旧来の漫画界からは、なかなか、正当に評価されなかった。

ベテランの漫画家たちは、陰で、彼をこう揶揄した。

「あんなものは、漫画じゃない。ただの、落書きだ」と。

 

一方で、若手の漫画家たちは、我先にと、彼の手法を、模倣し始めた。

手塚風の、大きな瞳のキャラクター。

手塚風の、映画的なコマ割り。

 

しかし、彼らの多くは、その表面的なテクニックを真似るだけで、手塚が、その表現に込めた、深い思想までは、理解していなかった。

 

手塚は、苛立ち、そして、焦っていた。

自分の魔法が、安っぽく、陳腐なものとして、消費されていく。

誰も、本当の意味で、自分を理解してはくれない。

 

そんな彼の、唯一の心の支えは、読者である子供たちから、届くファンレターの束だった。

そこには、純粋な、感動と、興奮の言葉が、綴られていた。

 

「先生の漫画を読むと、胸がドキドキします」

「アトムみたいに、強くて、優しいロボットが、本当にいたらいいのに」

 

その言葉を読むたびに、彼は、救われた。

自分のやっていることは、間違ってはいない。

自分の魔法は、確かに、子供たちの心に、届いている。

 

彼は、決意を新たにした。

誰に、何を言われようと、構わない。

自分は、ただ、子供たちの夢のために、描き続ける。

 

漫画という、この素晴らしい表現の可能性を、もっと、もっと、切り拓いていくのだ、と。

 

批判と、嫉妬の嵐の中で、彼は、たった一人で、ペンを握りしめた。

そのペン先には、未来の漫画界、そのすべての重みが、かかっていた。

神様とは、かくも、孤独な存在だったのだ。

最後までお読みいただき、ありがとうございます!

 

手塚治虫は、非常に負けず嫌いな性格だったと言われています。他の漫画家の才能に嫉妬し、時には、大人げないほどの対抗心を燃やすこともあったそうです。そんな人間臭さもまた、彼の魅力の一つでした。

 

さて、孤独な戦いを続けた、漫画の神様。

彼が遺した、偉大な発明は、現代の私たちに、どう繋がっているのでしょうか。

 

次回、「あなたが読む、その一コマ(終)」。

第一章、感動の最終話です。

 

物語は佳境です。ぜひ最後までお付き合いください。

ーーーーーーーーーーーーーー

この物語の公式サイトを立ち上げました。


公式サイトでは、各話の更新と同時に、少しだけ大きな文字サイズで物語を掲載しています。

「なろうの文字は少し小さいな」と感じる方は、こちらが読みやすいかもしれません。


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