韓国から来た黒船、Webtoonの襲来 第3話:スマホファースト
作者のかつをです。
第十九章の第3話をお届けします。
スマートフォンの普及が変えたのは、通信手段だけではありませんでした。
「片手で操作できる」という物理的な制約が、コンテンツの形式そのものを変えてしまう。
デバイスの変化が文化を変える瞬間を描きました。
※この物語は史実を基にしたフィクションです。登場する人物、団体、事件などの描写は、物語を構成するための創作であり、事実と異なる場合があります。
2013年、LINEマンガがサービスを開始した。
メッセージアプリとして日本のインフラとなりつつあったLINEが、漫画事業に本格参入したのだ。
当初、そのラインナップの中心は日本の出版社の人気作品、つまり「横読み」の漫画だった。
しかし、彼らは水面下である実験を進めていた。
韓国で人気のWebtoon作品を翻訳し、「タテ読みマンガ」として配信し始めたのだ。
彼らがターゲットにしたのは、従来の熱心な漫画ファンではなかった。
通学中の電車で片手でつり革を持っている学生。
寝る前の布団の中でスマホをいじっている会社員。
家事の合間に一息ついている主婦。
彼らは「漫画を読みたい」のではなく、「スマホで暇つぶしをしたい」人々だった。
そんな彼らにとって、小さな画面でいちいち拡大しなければセリフが読めない横読み漫画は、実はストレスフルなものだった。
一方、親指一本でサクサクと読み進められる縦スクロール漫画は、驚くほど快適だった。
「スマホファースト」。
PCでも紙でもなく、スマートフォンで読むことだけを最適化したデザイン。
それが、これまで漫画をあまり読んでこなかった層、あるいは漫画から離れていた層を掘り起こしたのだ。
さらに、彼らは「無料連載」というモデルを持ち込んだ。
「待てば無料」。
毎日決まった時間にチケットが回復し、続きを無料で読むことができる。
続きが気になって待ちきれない人だけが、お金を払って先読みする。
このゲームアプリのような仕組みは、日本の出版業界にとっては禁じ手にも思えた。
「漫画は単行本を買って読むもの」というビジネスモデルを崩壊させかねないからだ。
しかし、ユーザーはこの仕組みを熱狂的に支持した。
毎日少しずつ読むという習慣が、生活の中に組み込まれていった。
LINEマンガ、そしてcomicoといったアプリが牽引する形で、縦スクロール漫画は日本の若者たちの間に少しずつ浸透していった。
「日本の漫画は面白い。でも、スマホで読むなら縦の方が楽だよね」
そんな声が聞こえ始めた頃、もう一つの黒船が日本に上陸する。
韓国のIT大手カカオが送り込んだ刺客、「ピッコマ」である。
彼らは、さらにアグレッシブな戦略で、日本の漫画市場のシェアを奪いにかかることになる。
最後までお読みいただき、ありがとうございます!
comicoがサービスを開始した当初、掲載作品はすべてオリジナルの縦スクロール漫画で、しかもすべて無料でした。この衝撃的なデビューは、日本の電子コミック市場に大きな波紋を広げました。
さて、LINEマンガに続いて現れた「ピッコマ」。
彼らはある画期的なヒット作を武器に、日本のランキングを駆け上がります。
次回、「ピッコマの逆襲」。
Webtoonのポテンシャルを証明した、ある作品の物語です。
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▼作者「かつを」の創作の舞台裏
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