『COM』、手塚治虫が若者に託した夢 第3話:火の鳥という生命
作者のかつをです。
第十七章の第3話をお届けします。
手塚治虫のライフワーク『火の鳥』。
その連載の舞台として『COM』が選ばれたことは、この雑誌の運命を決定づけました。
今回は、神様の本気が生み出した熱狂を描きました。
※この物語は史実を基にしたフィクションです。登場する人物、団体、事件などの描写は、物語を構成するための創作であり、事実と異なる場合があります。
『COM』の創刊と共に始まった連載。
それが『火の鳥』だった。
手塚治虫はそれまでも『漫画少年』や『少女クラブ』で火の鳥を題材にした作品を描いていたが、この『COM』版こそが、彼が本当に描きたかった「火の鳥」の真の姿だった。
過去と未来を行き来しながら、生と死、輪廻転生、そして人間の業を描き出す壮大な叙事詩。
アトムのような分かりやすいヒーローはいない。
そこにあるのは、歴史のうねりの中で翻弄され、苦しみ、それでも生きようとする人間たちの生々しいドラマだ。
手塚は、商業誌の制約から解き放たれた喜びを爆発させるように、実験的なコマ割りや大胆な演出を次々と投入していった。
ページ全体を使ったダイナミックな構図。
哲学的な問いを投げかける深いモノローグ。
それは漫画が、文学や映画に匹敵する、あるいはそれらを凌駕する芸術表現になり得ることを証明するような作品だった。
読者たちは衝撃を受けた。
「これが手塚治虫か」
「僕たちが知っていたアトムの手塚先生とは違う」
特に、漫画家を志す若者たちにとって、『火の鳥』はバイブルとなった。
漫画でここまで深いテーマを描けるのか。
ここまで自由に表現していいのか。
その衝撃は、石ノ森章太郎にも伝播した。
彼は『COM』誌上で『ジュン』という作品を発表する。
セリフがほとんどなく、詩的なイメージと絵だけで構成されたその作品は、読者の想像力を極限まで刺激する前衛的な試みだった。
永島慎二は『フーテン』で、社会に馴染めない若者たちの彷徨を描き、当時の若者の心情を代弁した。
『COM』は、天才たちがその才能を惜しげもなく披露し、競い合うコロシアムとなった。
手塚治虫が灯した「火の鳥」という炎。
その炎は、雑誌全体に燃え広がり、読み手の心をも焼き尽くすほどの熱量を生み出していた。
しかし、『COM』の本当の革新性は、プロの作家たちの競演だけにはとどまらなかった。
手塚は、もっと先の未来を見据えていたのだ。
最後までお読みいただき、ありがとうございます!
石ノ森章太郎の『ジュン』は、そのあまりの前衛さに、手塚治虫が「これは漫画じゃない」と批判し、石ノ森がショックを受けたという逸話も残っています。天才同士のぶつかり合いですね。
さて、プロたちの競演の裏で、『COM』はもう一つの重要な役割を果たしていました。
それは、未来の漫画家を育てるためのシステムでした。
次回、「ぐら・こんという名の広場」。
数々のスターを輩出した伝説の投稿コーナーの物語です。
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