第9話
母と子、雌と雄、悪魔と人間。
2つが1つに還るように愛を確かめ合う。
阿久戸一家の初めての夜は、
甘く、切なく、湿っぽく、熱く、そして、
涙があふれるほどうれしかった。
あと激しかった。
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「やぁっ、もう出ないのぉ……」
「まだまだ頑張って~おっきおっき♡」
「今日はもうダメ、疲れちゃったから……」
「えぇっ?! ママを愛してくれないの? グスッ」
「明日にしよ、続きはお楽しみってコトで」
「も〜そんな親不孝な子にはお仕置きよ、えいっ」
「うひぃっ?!」
「つけ根のとこがキクんだもんね〜? ぐりぐり〜ぐりぐり〜」
「ぎゅっ、あぅっ、ぎっいぃぃぃーーーっ?!」
「ほ〜ら元気いっぱい大復活♡ さぁもう1回、上から下まで……」
「も、もう勘弁してぇーーー!」
うなされて飛び起きる。もう朝になっていた。
「ハッ?! ゆ、夢か……よかったぁ」
(ママは……いないや。もう起きてるのかな)
(わ、カラダじゅうキスマークと歯型だらけ。お洋服着て隠さなきゃ)
(シーツがビショビショ。僕の体液と……ママの匂いもする。お互いいっぱい汗かいちゃったし)
(喉カラカラだ、何か飲みにいこ)
(最上階だから眺めがいいなぁ。ビルがあんなに小さい、車が走るのも人が歩くのもゆっくりに見える)
(僕1人じゃこんな景色見れなかった。全部ママのおかげ、悪魔の力の……)
「もう起きたの?」
「あ、ママ」
「まだ寝てていいのよ? 昨日は色々あって疲れてるでしょう」
(1番疲れたのママの相手したからだよ、とは言えないや)
「目が冴えちゃったんだ。ママも?」
「元から早起きなの。お茶でも飲む?」
「うん」
ダイニングへ。季人がポットでお湯を沸かした。
「ママ〜その辺の引き出しにティーパックとか入ってない?」
「あったわよ〜紅茶とコーヒー、どっちがいい?」
「紅茶かな」
「ならママもお紅茶〜……お砂糖はどれくらい入れる?」
「たくさん! 僕への愛情くらい」
「あら大変、世界中からお砂糖を集めてこなきゃ」
「大げさなんだから〜……うん、甘いとおいし〜い! ゴクゴク飲めちゃう!」
「ねぇ、ママにも甘いの入れてくれる?」
「お砂糖ならそこにあるじゃない」
「違うわ、《《季人ちゃんの甘いの》》が欲しいの」
「え?」
「体液、注いで♡ ママのカップに」
「ママのカップに? でも……」
「お口ぐじゅぐじゅ〜ってして唾液をブチュっと吐き出しちゃえばいいから、ほらほら♡」
「分かったよ。んっ、んっ……んべぇ」
「もっともっとも〜っと♡ ほっぺの内側を噛み噛みして、喉の奥から絞るみたいにするのよ」
「んぎっ、んぎゅうっ……ぷぇっ、ぶぇぇっ」
「必死になっちゃってカワユイ♡ 紅茶が泡立つくらい出ちゃってるんだから」
(恥ずかしいよぅ……でも昨日の夜はもっと恥ずかしいことされたんだ。それに比べれば……)
(やっぱり恥ずかしいなぁ)
「んんっ、もう出ないや」
「ありがと、いただきま〜す♡ ゴックゴックゴクン……」
「わざとらしく喉鳴らさなくてもいいのに……」
「プハ〜ごちそうさま、と〜ってもおいしかったわ♡」
「どういたしまして〜」
「クセになっちゃう味ね。ママもう一杯飲みたいわ、いい?」
「え……うん」
「ありがと♡」
やがて部屋のドア前が騒がしくなってきた。
『ロイヤルスイートに客はいなかったはずだぞ?!』
『中からカギがかかってる、絶対に誰かいるんだ!』
『警察に通報したぞ! もう逃げられないからな!』
「元気な従業員さんたちだこと。邪魔しちゃ悪いし、そろそろお暇しましょうか」
「そだね。昨日壊したこの窓から出る?」
「えぇ、飛ぶわよ。準備はいい?」
「いいよ。しっかりママにつかまってるから」
「それじゃあチェックアウトよ、それッ!」
「うぅーーーわぁーーーっ! 朝のお空飛ぶのキモチイイ〜!」
「すっかり慣れちゃって。最初は『こわ〜い』『下ろして〜』って言ってたのに」
「3回目だもん、楽しむ余裕くらいあるよ」
「すごいわ〜子どもの成長って早いのね」
「そうだよ。だから1日1日をめいっぱい楽しもうね」
「モチのロン♡ 今日はどんな楽しいことする?」