第3話
魔法を目の当たりにした季人、
ショックのあまり涙を流す。
それを見たスプリングス、
我慢できずに季人の目に口をつけて涙を拭い取る。
両目の涙が枯れたころには、
季人は腰砕け、スプリングスは満足気。
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「ふむふむ、味見は大変結構、代償に申し分ございませんね。これなら契約もスムーズに進むでしょう」
「だいしょう? けいやく? さっきから何の話?」
「順を追って説明いたしましょう。まず季人様におかれましては、ワタクシを召喚したご主人様でございます」
「うん」
「ご主人様は悪魔との間で契約を結ぶことになります。このとき必要になるのが代償です」
「ほうほう」
「古来より人間が悪魔を使役するときには捧げ物が必要でした。国が傾くほどの金銀財宝、森を狩り尽くして集めた動物の贄、愛する人たちの命……悪魔が望むものを差し出さなければなりません」
「それが代償?」
「その通りです。当然、ワタクシと契約する季人様にも代償を払っていただくことになりますが……」
「が?」
「失礼ですが季人様は……孤児も乞食の素寒貧でいらっしゃるようで。貴重品なんてありませんよね?」
「ムキー! 僕だって貴重品あるもん! ほら、 ポッケに入れてた全財産69円! 駄菓子が買えるんだよ、ごちそうだよ!」
「……」
「黙らないでよ〜!」
「まぁまぁそれも貴重品ではありますが、ワタクシの求める代償には及びません。その金額で町1つ消したりできないでしょう?」
「そりゃそうだけど……」
「そんな哀れな季人様が払える代償……それが魔力です。幸運なことに季人様のカラダにはた〜〜〜っくさんの魔力が巡っておいでです。ワタクシを上回るほどの」
「僕に魔力?! じゃあ僕も魔法使えるの?! やった〜!」
「いえ、使えません」
「ありゃ?」
「人間のカラダには魔法に換えて出力する器官がございませんので。いくら魔力があろうとも宝の持ち腐れ、言うなれば燃料がたくさんあるのにそれを利用する機械を持たない資源原産国でしょうか」
「よく分からないけど使えないんだね、ガッカリ……」
「ですかご安心を、その分ワタクシがいただきますので。悪魔の実力は魔力総量と魔法技術の2つで決まります。特に魔力が多いほど強く美しく生きられる……ですから悪魔にとって|自身で魔力を消費しない人間《魔力ドリンクサーバー》は喉から手が出るほどほしい存在なんです」
「つまり?」
「契約期間中ず〜〜〜っと季人様の体液を吸わせてくださいな♡ それなら十分な代償となるでしょう」
「え、体液?! 魔力じゃないの?!」
「カラダを巡るといったら体液ですよね〜魔力は体液に溶け込んでいるんですよ〜」
「ということは、ひょっとして……」
「季人様の血、汗、涙、その他もろもろカラダから出るもの……毎日い〜〜〜っぱいペロペロさせてもらいますからね、お覚悟♡」
「えぇぇぇーーーッ?!」