第27話 孕んで産み出て
デート終わりの深夜、代償部屋。
2人ベッドの上に正座して向かい合う。
千春の目つきは真剣そのもの。
いつもと違う雰囲気に季人も背筋を正す。
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「というわけで季人ちゃんを産むわね。じゃあ早速」
「言葉足らずにもほどがあるよぉ?! 僕の理解置いてけぼり! どゆことどゆこと説明して?!」
「言葉通りだけど? 季人ちゃんをワタクシの子宮に入れて大きく育てて出産する……こういう流れなのよ?」
「『なのよ?』じゃないよ? どうしてそんなことシたいの?」
「ワタクシはね、身も心も季人ちゃんのママになりたいの。出産の苦痛なくしてどうしてそう名乗れましょうか。だから魔法で妊娠から出産まで疑似体験するの。分かってくれる?」
「う〜ん……? こんな大きな赤ちゃん(自分)をどうやって産むつもり? 産まれて15年経ってるんだけど?」
「転移魔法を使いましょう。目の前の対象を任意の空間に飛ばす……それの応用よ。季人ちゃんを小さくしてワタクシの子宮に転移させ、胎児くらいの大きさに戻してから産道を通す……原理的には可能よ」
「自分のカラダの中に転移させるなんて危なくない?」
「安心して、季人ちゃんには魔法障壁を何重にもかけるから。ワタクシのカラダに入っても何の害も受けないよう、『雷光』にも耐えられるくらい堅くするわ」
「僕もそうだけど千春さんだよ。人1人お腹に入れるんだよ? つらいなんてもんじゃない、カラダが裂けるくらい痛いよ? いいの?」
「モチのロン。痛みと引き換えに真実の愛が手に入るなら望むところよ」
「もう決めたんだね?」
「えぇ」
「分かった、僕も千春さんから産まれたい。でも1つだけ約束。ぜ~ったいに無茶しないで。いいね?」
「うん、ありがとう」
季人がボール状の障壁に漏れなく包まれる。
「必ず元気に産まれてくるからね……いってきます」
「必ず元気に産んであげるからね……いってらっしゃい」
ボールがみるみる縮んで千春のカラダに飛び込む。
「集中しないと……転移魔法を絶えず発動して慎重にボールを運ぶのよ……」
ちゅぴっ
「あっ……着いたのね」