表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
26/36

第25話 2人最後の日

 2人最後の日、デートに行く。

 今日だけは互いを下の名前で喚ぶ約束。

 別々に家を出て外で待ち合わせ。


#####


「時間ピッタリ、場所は駅前広場……OKだね」


(僕のお洋服は黒のジャケットに白Tシャツ、ジーンズ、紺のスニーカー)


(いつもはママ……千春さんが選んで着せてくれるけど、今日だけは自分で選んだんだ)


(千春さんはどんなのを着てくるかな?)


「ごめんなさい季人ちゃん、待った?」


「ううん、僕も今来たとこ。千春さんのお洋服とっても似合ってるね」


「ありがと♡ 季人ちゃんも地球上で1番カッコいいわ♡」


(千春さんはオフショルダーのトップスにロングスカート、ハイヒール。いつもより身長が縦に長く見える。190cmはあるかな)


(イヤリング、濃い口紅、ピンクのネイル……いつもよりさらに色っぽい。真紅の瞳がいつもより輝いてて吸い込まれそう)


(こんな美人さんがママだなんて、いまだに信じられないや)


「早速エスコートよろしくね♡ むぎゅ♡」


「んおっ?! お胸が腕に当たってるよ?!」


「当ててるのよ♡ もっと密着しちゃうんだから、ぎゅ〜♡」


「あぁぁ〜あぁ〜あぁ、そうだぁ、僕がちゃんとプランを考えてきたからぁ! だから行こう! 今すぐ!」


「ウフフ♡ いきましょ〜」


 親子デートの始まり。まずは水族館。


「お魚さんがいっぱ〜い! 神秘的〜!」


「普段生きて泳いでるとこ見られないものね。いい体験施設だわ」


「ペンギンショーやってるんだって! 見に行こう!」


「あらら、すごい人だかり。手前まで全然近づけないわ」


「え〜?! ペンギンさん見えないよ! 千春さんなんとかして!」 


「まっかせなさい♡ 前の人間どもをみんなどかしちゃうわ」


「え? 肩車とかしてくれればいいんだけど」


「ひとかたまりになってるから楽でいいわ。はい電気ショック」


『ぎゃあっ?!』

『ひげぇっ?!』

『だびぃっ?!』

『なばぁっ?!』


 雷はどんどん隣の人に伝って広がっていく。


「ほら邪魔者が全滅。これで1番前にいけるわ」


「やりすぎだよぉ?! ペンギンさんもびっくりして固まってるし!」


「固まってんじゃないわよ畜生風情が。芸の1つでもしてワタクシたちを楽しませなさいな。あなたたちも感電したい?」


「魔法使うのやめてよ〜!」


 ゲームセンター。けたたましい音楽と眩しい電飾。


「クレーンゲームがたくさん、どれかやってみたいな〜……あ、くまさんのぬいぐるみ! カワイイ〜!」


「カワイイものはカワイイものに惹かれ合う……この世の真理なのかしら?」


「千春さん、くまさんとって〜」


「まっかせなさい♡ こんなのちょちょいのちょいよ」


 20分経過。クレーンのアームは空をつかみ続ける。


「っざっけんなぁーーーっ! このワタクシが機械ごときに負けるですってぇ?! クソッ、こんな苦戦は天魔大戦、あるいは妹との喧嘩以来か……次こそ、次こそ必ず!」


「もういいよ〜1万円使ってムリなんだから諦めようよ」


「ダメ! ここで退いたら今まで積み上げてきたものがムダになる! 諦めグセは負けグセなの、季人ちゃんにそんな大人になってほしくないわ!」


「ギャンブラーみたいなこと言ってるよ〜」


「これで決める! デァァァーーーッ!」


 アームがくまさんの頭頂部で開き、首をつかむ。


「よっし! そのまま持ち上げなさぁい!」


 アームは……するりと首を抜けて空をつかむ。


「なんでよぉぉぉーーーっ?! 取らせる気ないでしょこのゲーム! 消費者を舐めんじゃねぇーーっ!」


「ちょ、人が見てるから抑えて抑えて……」


「台パンやむなし! ちぇりゃあぁぁぁーーーっ!」


 バチチッ、ボッカァン


「ぎゃあっ?! 筐体に雷落ちたってぇ!」


「おかげでケースが割れて転がり落ちてきたわ。ちょっと焦げたけど、はい♡」


「『はい♡』じゃないって! 逃げるよ千春さん、走って!」


 バッティングセンター。バッター季人。


「キャ〜♡ プロ選手みたいでカッコいい〜♡」


「打ってやるぞ〜! え〜い!」


「キャ〜♡ 空振りも一生懸命でカワイすぎ〜♡」


「タイミング合わないよ〜! なんでぇ〜?!」


「ボールが通過してから5秒後にスイングする運動神経のなさも愛おしいわ〜♡」


「はぁ、もうバット振れない、疲れた……交代〜」


「うぅん、スカートなんだけど打てるかしら?」


 バッター千春。胸元めがけて初球が放たれる。


「せぇいっ!」


 ッパァァァン


「あらら? ボールが粉々、バットがぽっきり折れちゃったわ」


「すご〜い人間業じゃな〜い」


「貧弱な素材だこと。もっと手加減しないといけないのかしら?」

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ