第23話 家族は2人じゃいられない
季人と千春は仲よく暮らしていた。
日中は町を散策し、
夕方はいっしょに料理を勉強し、
夜は代償でひっつき虫になる。
胸いっぱい幸せいっぱいの家族。
ただ季人は物足りなさを感じていた。
『家族ならもうちょっと人数ほしくない?』と
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「ねぇママ! 僕新しい家族がほしい!」
「えぇっ?! ダ、ダメよ! ママたちは家族なの、そんなことしちゃいけないの!」
「ダメなの? 僕ど〜してもママの子どもがほしいんだけど」
「ヒ゛ャ゛ア゛ァ゛ァ゛ァ゛ッ゛♡ そ、そんなストレートに言われるなんて……♡ 絶対にイケないことなのに、それなのにぃ、まんざらでもない自分がいるぅーーーっ♡ 愛する人とそうなることを望んでいる本心が露わになっちゃうぅーーーっ♡ 季人ちゃんがど〜〜〜してもっていうんならぁ、ママは意外と、意外とぉーーーっ♡」
「何言ってんの? 他に悪魔さんを召喚してママの子ども、僕のお姉ちゃんになってほしいってことなんだけど」
「………………………………………………………………………………は?」
「『お姉ちゃん』って存在に憧れてたんだよね〜モチのロン、ママは最高なんだけどさ。僕と近い目線で遊んでくれる姉弟ってよくない? いっしょに学校に行ったりしてさ」
「は? は? は?」
「だからママ、悪魔さん召喚の儀式手伝って〜前は僕1人でうまくいったけどさ、次は分かんないじゃない? カワイイお姉ちゃんを喚べるように協力して……って聞いてる?」
「……」
「ママ? おめめ怖いよ? え、なんで僕の腕つかむの?」
「……」
「どうして何も言わないの? 僕を押し倒してどうするの? ねぇ?!」
【超雷電按摩】
町に少年の甲高い悲鳴が2分ほど響き渡ったあと。
「季人ちゃんひどいわ! ママだけじゃ飽き足らず、他の女をお家に連れこみたいだなんて! 愛を誓い合った幾千の夜はウソだったの?!」
「ァゥァゥ……僕の大事なところの感覚がないよぅ……恥骨が溶けてなくなっちゃったぁ……」
「そりゃあ季人ちゃんくらいの魔力があれば召喚なんていくらでもできるでしょうね! 満月の夜に魔界との天門が開くから、その日に儀式すればいいもの! ちょうど1週間後かな?!」
「ふぅ、恥骨が落ち着いてきた……」
「でもママの気持ちはどうなるの?! 季人ちゃんからの愛を奪うお姉ちゃんを喚んではいそうですかって、納得できると思って?!」
「そんなヒステリック言わないで協力してよ。家族が増えるんだよ? きっともっと楽しい生活になるって」
「やだやだやだぁ! 季人ちゃんにはママ1人でいいの、ママだけのものなのぉーーーっ!」
「手伝ってくれないなら1人で召喚しちゃうもんね〜お姉ちゃん楽しみだな〜今度は物分かりがよくてお料理も上手な悪魔さんが来てくれるといいな〜」
「あ〜あ〜あ〜?! そんなこと言っちゃうんだぁ! これまで頑張ってきたママをイジメるんだぁ! 最っ低最っ悪! この人でなしっ、悪魔たらしぃーーーっ! もう知らない! うぇ〜ん(泣)」
「あ、部屋にこもっちゃった……まぁ3分もすれば『季人ちゃんちゅきちゅき♡』って出てくるでしょ」
千春が部屋から出ないで4日が経過。
「まだ出てこないの? いい加減機嫌直してよ」
「……」
「今日はママの好きなカレー作ったんだよ。いっしょに食べようよ」
「……」
「そんなに新しい家族、お姉ちゃん喚ぶのイヤなの?」
「ゥン」
「そっか……」
「……」
「でも喚ぶもんねぇーーーっ! ママの代わりにい〜〜〜っぱいお姉ちゃんとチュッチュラブラブして幸せ家族になるからぁーーーっ!」
「カ゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ーーーッ゛?!」
さらに翌日。まだ千春は出てこない。
「ご飯、ドア前に置いておくからね」
「……」
「そろそろここ開けて出てきてよぅ……ってあれ、ドアに鍵かかってないや。入るよ?」