第2話
スプリングスの魔法、『雷光』。
暗雲に雷がわななき、光の柱が落ちてきた。
空中にいても伝わる衝撃、轟音。
季人はスプリングスに抱かれたまま気を失った。
スプリングスは季人を安全な場所に降ろす。
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「う〜ん、雷が、う〜ん……」
「季人様〜おねんねのお顔もかわいいですがそろそろ起きてくださ〜い」
「ハッ?! どどど、どうなったの、町は?!」
「町? そんなものどこにあるんです?」
「え……そ、そんなぁ?!」
「あらら、いきなり走り出してどこへ行かれるのです?」
「だってだって……うわっ?! ここから先、道が無いよ?! えぐれてる!」
「ちょうどそこから先がさっきの町です。『雷光』の射程範囲ですね」
空間丸ごと削除されたかのように跡形もなかった。
「ホントに町がなくなっちゃってる……ここだけお絵かきソフトで消しゴムかけたみたいに、最初から何も無かったみたいに真っ暗で……」
「これがワタクシの力の一端です。ご満足いただけました?」
「ここにいた人たちは……?」
「ん? ごらんの通りですが」
「シんじゃったの……?」
「まぁそうですね」
「何人くらいシんじゃったんだろう……」
「飛んだときに感知した限りでは、ざっと1万人といったところでしょうか。この国の人口は1億人、わずか0.01%にすぎません。誤差ですよ誤差」
「誤差……これだけヤッておいて……? グスッ、グスン」
「あらら、泣いてらして? いかがなされました?」
「ちょっと腰が抜けて、力が入らない……」
「いきなり全力魔法は刺激が強すぎましたかね? いいですよ、ワタクシの胸で存分に泣いてくださいまし」
「うぅっ……スプリングスさん、僕、僕ぅ……」
「あぁいけませんわ……♡ そんなに熱い視線を向けられては、ワタクシ辛抱たまりません……♡ もう我慢できない……お涙ちょうだいしてよろしいでしょうか?」
「涙? 好きにして……」
「わ〜い言質とった〜♡ それでは右目から味見といきましょう、あ〜むっ♡」
「え? 右のおめめが生温かい……」
「んちゅ〜〜〜♡」
「ひぇっ?! 何してんの?!」
「季人様の涙を味わっております♡ まだあふれるほどございますね、じっとしてくださいな♡ ンベロンベロン♡」
「いやっ、おめめにぬるぬるしないでぇ! ヘンになっちゃうからぁ!」
「《《眼球》》というだけありますね、球を舌で転がすように味わいませんと♡ ちゅるるる〜♡」
「ひゃあっ?! あぁっ……うっ……」
「ん〜〜〜大変美味でございます♡ わずかな体液でこれほどの魔力とは、やはりワタクシの目に狂いはありませんでしたわ」
「なにぃ……? まりょくぅ……?」
「その話をする前に……左目も残ってございますね♡ こちらもいただきませんと♡」
「ひゃ〜!」