第11話
5億円を稼ぐために辺りで1番大きい銀行支店へ。
手続きの客で混雑している。
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「警備員さんもちらほらいるね。ここで『強盗だ! 金を出せ!』なんてやったら大騒ぎになっちゃうよ?」
「今の時代、強盗もスマートにしないとね。すぐ済ませるから、そこで座って待ってて」
「分かった、気をつけてね」
「は〜い♡」
季人を置いて千春単身、受付窓口に歩み寄る。
「ちょっと、そこのあなた」
「へ?」
「あなたよあなた、ここの従業員でしょう? 返事なさいな」
「は、はい? 何でしょう?」
「トロトロしてんじゃないわよ小娘が。ここのボスはいるかしら?」
「ボス……支店長のことですか?」
「1番偉い?」
「この支店ではそうです」
「だったら呼んできてちょうだい。ここで待ってるから」
「支店長への面会ですか? こちらは預貯金窓口ですからそういったお取次ぎはできません。あちらに見えます総合案内にご相談してみてください」
「いいから呼べってんのよ。さっさとしてくれない? 阿久戸一家の1秒はあなたの一生より重いのよ? 責任取れる?」
「そ、そんなこと言われましても……」
「三度も同じこと言わせる気……? ねぇ……? ねぇ……?!」
「ひぃっ?! だ、誰か助けて……」
奥からスーツを着た小ぎれいなおじさんが現れた。
「君は下がって、私が対応するから。私が支店長です。どうなさいました?」
「遅いのよ。ちょっと頼みがあるんだけど」
「何でしょう?」
「ワタクシたち家族の銀行口座を作ってちょうだい。超特急でね」
「口座ですか。でしたら順番にお手続きしますから受付番号札を取ってお待ちください」
「あ〜違う違う。普通の口座じゃなくてさぁ、あなたが作ってちょうだい。お金も入れておいてね」
「はぁ?」
「今の人間界、お金なんて電子データの数字でしかないんでしょ? だったら数字を書き換えるだけでいくらでも湧いて出るじゃない」
「おっしゃる意味が分かりません……」
「だからぁ、ボスのあなたの権限で不正でも何でもして『最初から大金入ってる口座』をこっそり作りなさいよ。5億円でいいから」
「な、なんだコイツ……正気か?」
「正気に決まってるでしょ。そんなのも分からない? おバカさんなの?」
「おい警備員、コイツをつまみ出せ! クソ忙しいのに頭がおかしい客の相手までしてられるか!」
「失礼ね、あなたのハゲ頭の方がよっぽどおかしいわよ。握りつぶしてあげましょうか? こんな感じで」
「いでぇっ?! 爪が刺さって、ち、血が出てる?! 助けてくれぇ!」
「シ〜……大声出さないで。ワタクシの言葉をよく聞きなさい」
【電脳洗脳】